表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode-08 仮想現実の国盗り物語
183/234

Scene:09 人たらし

 紗魅琉シャミルと小梅達は、堺の街にいた。

 紗魅琉シャミル達が相馬屋そうまやの玄関を入ると、罵声ばせいが飛んで来た。

「あんたら! よくも、わての前に顔を出せたもんですな!」

「こんにちは、相馬屋そうまやさん」

 不機嫌そうな相馬屋そうまやの表情を無視して、明るく紗魅琉シャミルが返事をした。

「あんたらのせいで大損おおぞんをこいてしもうたわ!」

「私達のせいで? 私達が何か、しましたっけ?」

「『しましたっけ』じゃないがな! 鉄砲一丁二十(かん)なんて、めちゃくちゃな値段で買うたくせに!」

「確かに鉄砲一丁二十(かん)で買いましたけど、相馬屋そうまやさんが、その値段で売ってくれたのですよ」

「そりゃそうや! 新しい鉄砲が出るというデマが飛び交ってたからな! でも、よくよく聞くと、そのデマを言いふらしていたのは、そこの二人でっしゃろ!」

 相馬屋は、小梅と小夏の二人を指差した。

「言いふらしたなんて言いがかりです! 私達、二人で話していただけですから。ちょっと声は大きかったかもしれないけど」

「こうなることをねらって、大声で話していたんやろ?」

「知らないですよ。南蛮商人さんと話して、実際、私達もそう思ったんですもの」

「うぬぬ」

 口をへの時に結んで小梅達をにらんだ相馬屋そうまやに、紗魅琉シャミルおだやかな表情で話し掛けた。

「それより、相馬屋そうまやさん。今、ログアウトできなくなっていることは、ご存じですよね?」

「もちろんだす。でも、どうせ何かのバグで、そのうち解消されますやろ」

「でも、ゲーム内時間で、一日ほど経過しましたけど、運営から何のアナウンスも無いですよ」

「まあ、そやな。でも、そのうち直るって」

「楽観的なんですね。実時間だと、おそらく六時間ほど経過していることになるでしょうか? きっと、現実リアルの私達の体は、お腹の虫が鳴っているでしょうね」

「ああ、それもそうなあ」

「このまま、実時間で何日もログアウトできなければ、そのまま衰弱死してしまうかもしれませんよ? 相馬屋そうまやさんは助けてくれる家族の方と一緒に暮らしているのですか?」

「い、いや、わては一人暮らしだす」

「ログインして、もうどれくらいですか?」

「ゲーム内時間で四日ほどや。実時間だと、……丸一日は過ぎてるなあ」

「ええ、ゲームの中で飲み食いすれば、満腹感が満たされますから、そう言った危機感が湧かないと思いますけど、相馬屋そうまやさんの現実リアルの体は、もう息も絶え絶えになっているかもしれませんよ。中の人が死んでしまえば、当然、ゲームを続けることもできませんよね」

「あ、あんた! 何が言いたいんや?」

「今は、それだけ、切迫した状況だと言うことです。相馬屋そうまやさんのように、危機感を覚えていないプレイヤーのかたが多いですけど、この異常事態が解消される保証はどこにも無いんですよ」

「……それはそうやが。……って、その話をしに、わての所まで、わざわざ来たんかい?」

「はい。そして、この事態を打開するために、私達はある計画を実行中なのです。そして、そのためには、相馬屋そうまやさんにご協力いただけると、すごく助かるのです」

「どんなことだす?」

「協力してくれますか?」

「そ、それは内容によるわ! また、大損おおぞんさせられたらかなわんからな!」

「こんな時にも、まだ、もうけのことを考えているんですか!」

 小梅が怒った。

「そりゃ、そうや! そりゃあ、ログアウトできないことは、少し不安ではあるが、逆に、絶対にこのままということも考えられんやろ! そう言う状況になっていることが、運営会社から警察とかに連絡が行ってて、運営だけやのうて、色んな組織が解決に当たってくれているはずや。今の科学力をもってして、ログアウトできないままってあり得ないやろ?」

「運営が、すぐに警察とかに連絡するでしょうか?」

「えっ?」

「ゲームに不具合があったことは、できるだけ公表を控えたいって思うんじゃないですか? 可能な限り、自分達だけで解決しようとして、いよいよ、プレイヤーの命にかかわってくると言うほどになってから連絡することが考えられますね。そうすると、実時間で、後二・三日は無理かもしれませんよ」

「……で、あんたが、わてに協力を求めたいこととは何や?」

「簡単なことです。織田家に、と言うより私達の武士団ギルドである竜之目党に投資をしてほしいのです」

武士団ギルドに投資? 投資と言うからには、何かしらの利益リターンがあるということでっしゃろな?」

「ええ、もちろんです。今度の日本統一イベントで、織田家は日本を統一します」

「何、夢物語をほざいてるんでっか? まだ開始もされていないイベントで、日本統一を果たすやなんて!」

「イベントが終わった後、織田家の勢力は増大しているはずです。その織田家に恩を売っておいて損は無いと思いますけど?」

「あんさん。わての話が聞こえなかったんかいな? 織田家が日本を統一するって、決まってるんでっか?」

「ええ、決まってますよ。相馬屋そうまやさんが投資していただければ、より確実になります」

「わてが投資すれば、日本統一が達成されるんでっか?」

「ええ! そして、織田家に投資していた相馬屋そうまやさんは、莫大ばくだいな利益を手に入れることができますよ」

「そりゃそうでっしゃろ。でも、それも織田家が天下を取った場合でっしゃろ? あんさんが確実に天下を取れるなんて言う根拠がまったく分からないんやけど?」

「ログアウトはできずに、いくさをすると、実際の痛みを伴うという今の状況からすると、確実です」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ