表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode-08 仮想現実の国盗り物語
180/234

Scene:06 仮想現実の夕餉

 紗魅琉シャミル伽魅琉キャミルは、小梅達と別れて、地図を頼りに、伽魅琉キャミルの自宅に向かった。

「私の自宅は、……お城の近くにあるみたいだな。行ってみよう」

「はい」

紗魅琉シャミルの自宅は、どこにあるんだ?」

「私の家は、山の方にあるらしいんです。遠いから、伽魅琉キャミルの家に行きます」

「遠くなくても来るんじゃないのか?」

「へへへ、もちろんです」

「やっぱりな。しかし、ちょっと、おなかも減ってきたな。食事は、さっきの酒場で済ませた方が良いのかな?」

「私は、料理スキルがなぜかコンプリートされていたので、材料さえあれば、料理はできますよ」

「そうなのか」

 紗魅琉シャミル伽魅琉キャミルは、途中の八百屋と魚屋で買い物をしてから、伽魅琉キャミルの自宅に帰った。

 下級武士の家ということで、棟割むねわ長屋ながや一角いっかくであった。

 板一枚の引き戸を開けると、すぐに狭い土間どまの台所があって、一段高い板のに続いていた。その中央には囲炉裏いろりがあった。

「あっ、伽魅琉キャミル!」

「何だ?」

 そのまま部屋に上がろうとした伽魅琉キャミル紗魅琉シャミルが呼び止めた。

「秀吉様のお屋敷みたいに、靴を脱いで、部屋に上がるんですよ」

「そうだったな。……しかし、この草でできたサンダルは、履いたり脱いだりが面倒なんだよ」

草履ぞうりと言うらしいですよ」

「そう言えば、紗魅琉シャミルは、なぜ、裸足なんだ?」

「小梅ちゃんが言うには、『くのいち』という職業は、セクシー路線だって言ってましたから、裸足なのでしょうか?」

「セクシー路線ねえ」

 伽魅琉キャミル草履ぞうりを脱ぐのに悪戦苦闘しているうちに、腰にぶら下げていた手拭てぬぐいを水で濡らし、足をいた紗魅琉シャミルが、伽魅琉キャミルの家だと言うのに、先に、板のに上がって、その奥にあるふすまを開けると、そこはたたみが敷かれた狭い部屋だった。

「これがたたみですかぁ」

「どれどれ」

 やっと草履ぞうりを脱いだ伽魅琉キャミルが、紗魅琉シャミルの後ろからのぞき込んだ。

「これは狭いな。人が一人寝られるのがやっとじゃないか」

「実際には、ここに親子四人は寝てたらしいですよ」

「どうやって?」

「重なり合って寝てたんじゃないですか?」

「いくら家族でも、重なり合ってたら、ぐっすり眠れない気がするな」

「じゃあ、試してみましょう! 今日は、私もここで寝ますからね」

「えっ、食事だけじゃなくて、泊まるのか?」

「異常事態中ですよ。いつも二人一緒にいた方が良いです」

「それはそうだが」

「私は、伽魅琉キャミルとなら、抱き合ってでも寝られますよ」

「……そっちが本来の目的か?」

「てへっ」

「とりあえず、ご飯を作ろう」

「あっ、そうですね」

 土間どまの台所にかまどがあって、紗魅琉シャミルが、「火打ち石」を使うとすぐに火が着き、火の調節には「火吹き」と呼ばれる竹をくり抜いた筒を使った。

紗魅琉シャミルは、何をやっても器用にできるんだな」

「火の起こし方は、未開種族にほぼ共通していますからね」

 これまでの惑星探査で、未開種族と一緒に生活した経験もある紗魅琉シャミルならではの慣れた手つきであった。

「主食のお米は、ここですね」

 かまどの横に大きなかめがあって、その中に米が入っていた。

「この時代のお給料は、お米の現物支給だったそうですよ」

「そうなのか。では、お金はどうするんだ?」

「支給されたお米を売って、お金に換えてたみたいです」

「へえ~」

「じゃあ、伽魅琉キャミルはお米をいてください。私は、おかずを作りますね」

 紗魅琉シャミルの料理スキルを使って、あっという間に、魚の煮物、お味噌汁の料理ができた。

 ご飯もすぐに炊きあがり、板のに、質素なぜんを並べて、二人は食事をした。

「これが味噌汁という飲み物か。紗魅琉シャミルは飲んだことあるのか?」

「いいえ、レシピどおりに作ってみたんですけど」

「……うん! 初めて味わう味だがイケるぞ!」

「本当ですか? ……美味おいしい! これ、ご飯と一緒に食べた方が良いかも」

 紗魅琉シャミルは、味噌汁をそのままお茶碗に入れて、リゾットのようにして食べた。

「ご飯とベストマッチですね。何だか、サーニャが好きな味のような気がします」

「どうして?」

「何となく」

 紗魅琉シャミル伽魅琉キャミルは、はしを器用に使って、食事を終えた。

「しかし、本当に食べている感覚しかしないですね。おなかふくれてきたし」

「しかし、我々の実際の体は空腹のままなんだな?」

くまで満腹中枢に刺激を与えているだけで、実際には食事をしていない訳ですから、絶食ダイエットをしている状態になりますね」

「うん。そう考えると、本当に時間は無いぞ。ログアウトできないと、現実の体は、ずっとそう言う状態に置かれる訳なんだからな」

「私達は、私達しかいない部屋でソファに並んで座ったままですね。三連休が終わって、伽魅琉キャミルが出勤して来ないと分かるまでは、誰も助けに来てくれないでしょうね」

「もちろん、私達だけではない。多くのプレイヤーが同じ危機的状況にある。みんな、それほど危機意識をまだ持っていないが、いつ解決されるか分からないんだからな」

「でも、大丈夫です。私の計画が上手うまくいけば、明日にでも、織田の殿様が征夷大将軍に任命されるはずです」

「よほど自信があるんだな。紗魅琉シャミルのことだから確信だろうけど」

「はい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ