表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode-07 砂に埋もれた自由への鍵
157/234

Scene:08 自らを賭けたカードゲーム(3)

 ドブルダが五枚のカードをテーブルにさらした。

三枚二枚揃フルハウスだ」

 ドブルダの顔は既に勝利を確信していた。

 しかし、シャミルは微笑みを絶やすことなく、手持ちのカードをさらした。

連続同図柄ストレートフラッシュです」

「な、何! そんな馬鹿な?」

「勝負は時の運です。『馬鹿』なことはないと思いますが?」

「ぐっ!」

「それとも、ドブルダさんが負けないような細工でもされていたのでしょうか?」

「貴様!」

 その言葉が合図だったかのように、ドブルダの後ろにひかえていた男達が一斉に剣を抜いた。

 もちろん、その時には、キャミルとマサムネ、そしてカーラも既に剣を抜いていた。

博打ばくちに負けて逆恨さかうらみか? 先に剣を抜いたのは貴様達の方だ! 正当防衛で切ることもできるぞ!」

 キャミルやマサムネから発せられる剣の達人としての威圧感が感じられたのか、男達は斬り掛かってくることはなかった。

「ドブルダさん。私の勝ちです。約束は果たしていただけますよね?」

 シャミルは席についたまま、いつもの穏やかな声でドブルダに迫った。

「……どんなことだ?」

「私達の邪魔をしないでください。それだけです」

「……邪魔とは?」

「砂漠での捜索作業を妨害することです」

「……」

「あなた方は誰かから指示を受けて行動しているのですか?」

「……」

「だったら、あなたの上司の方に正直に話されたらいかがですか? かけポルカをやって負けたと」

「ふっ、ふははははは! 本当に面白いお嬢ちゃんだ。分かった。俺もアングルボーザのドブルダだ! 一度()わした約束をたがえることはしねえ! だが」

「だが?」

「あんたらの邪魔はしないが、捜し物は続けさせてもらうぜ」

「捜し物? ひょっとして、私達と同じ物を捜していると?」

「ああ、そうだ」

「連邦の商人であるヒルデタント商会の落とし物ですよ。あなた方には関係は無いと思いますけど?」

「中身なんて知らねえ。俺達は上から命令されたことをやるだけだ。俺達もその落とし物を捜せと命じられているだけで、あんたらに先に捜し出されないように、ちょっかいを出していたが、あんたと約束したから、これからは俺達が先に捜し出すことに専念するぜ」

「約束を守っていただいて、ありがとうございます。あっ、それで、もう一つお願いがあるのですけど?」

「何だ?」

「私達は、これからオムリのソテーを食べることにしてますので、その間、少し静かにしておいていただければうれしいです」

「残念ながら、こいつらは静かに飲むことができない連中なんだ。だから、別の店で飲むよ」

「すみません。追い出したみたいで」

「追い出したんだろうが!」

 ドブルダもシャミルの不思議な魅力に怒る気力も失ったようで、思わず苦笑しながら文句を言った。

「まあ、ゆっくり味わいな」

 ドブルダ達がぞろぞろと店を出て行くと、BGMが流れる静かな店となった。

 シャミル達は最初に座ったテーブルにつくと、早速、キャミルが訊いてきた。

「シャミル! 最初から勝算があったのか?」

「そうでなければ勝負を挑んだりしませんよ」

「しかし、どうやって?」

 シャミルは、ベルトポーチを開くと、ポルカのカードのたばを取り出した。

「これは?」

「このテーブルに座った時、私の椅子の前に置いてあったんです。おそらく、私達が来る前に誰かが遊んでいたのでしょう。気づきませんでしたか?」

「いや、奥で騒いでいたドブルダ達に注目していたからな」

「何かに使えるかもと思って、すぐにこのポーチの中に隠したんです」

「そ、それじゃあ、今のは、いかさま?」

「まあ、向こうもしてましたから、化かし合いでしたね」

「ドブルダもいかさまをしていたのか?」

「ええ、最初の練習の時に分かりました」

「まったく分からなかったのだが」

 キャミルを始め、シャミル以外の者はみんな分からなかったようだ。

「上着のポケットに予備の札をワンセット入れていて、配られた手札を見て、ポケットからペアになる札を取り出していたんです」

「シャミルも同じように?」

「はい。配られた手札を見て、ポーチから素早くカードを抜いて、カードの山から取ったと見せ掛けて、そのカードと交換してたのです」

「いつの間にそんな技を身に付けたんだ?」

「見よう見まねです」

「どれだけ器用なんだ」

 キャミルもあきれてしまっていた。

「でも、キャミル。アングルボーザって?」

「ああ、……まあ、別に秘密にするまでのこともないだろう。このグローイ共和国の中枢ちゅうすうにまで影響を及ぼしている犯罪組織のことだ」

「その犯罪組織が、どうして、ヒルデタント商会の落とし物を捜しているのでしょう?」

「私がこの惑星にいることと関係があって、詳しくは教えてあげられないが、その中身はグローイ共和国の反アングルボーザ派勢力に関連があるということだ」

「よく分かりませんが、少なくともアングルボーザが機密文書格納用保護箱シークレットドキュメントボックスを先に手に入れて、その内容を知りたいと言う理由はあるということですね?」

「まあ、そういうことだ」

「分かりました。ドブルダさんも約束を守ってくれると良いのですが」

「今の様子だと、少なくともシャミル達の邪魔はしないのではないかな」

「そうですね。私は、依頼どおり、その機密文書格納用保護箱シークレットドキュメントボックスを淡々(たんたん)と探すだけです。それより、キャミル、お腹空きましたね」

「そうだな、……て、まだ注文してなかったな」

「あっ! そうでした」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ