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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode-07 砂に埋もれた自由への鍵
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Scene:07 「新たな計画」

 グローイ共和国の首都惑星グローイに到着した銀河連邦国防長官は、同行してきた要人ようじん警護の専門集団である惑星軍第一師団所属特別警備隊の護衛のもと、グローイ共和国大統領府に入った。

 そこで会談が行われている間、アルスヴィッドで待機を命じられたキャミルは、艦橋かんきょうの艦長席に座り、退屈な時間を過ごしていた。

「会談が終わる夕刻まで、じっと、こうしていろと言うのですかな?」

 ビクトーレが副官席にひじを着けて、頬杖ほおづえをつきながら愚痴ぐちを言った。

「コスモス級戦艦勤務になると、こんなことも再々あるのかと思うと、ぞっとしますな」

 相変わらず、姿勢良く副官席に座っているマサムネも本音を漏らした。

「そうだな。私は、ずっとこのアルスヴィッドで戦いの中にいたいのだが」

 キャミルの発言に二人の副官はうれしそうに振り向いた。

「艦長がアルスヴィッドの艦長をつとめられるのなら、私もずっと副艦長をいたします」

 ビクトーレの言葉にマサムネもうなづいた。

「そうだと良いな」

 もちろん、そんなことは無理なことで、昇進レースを断トツのトップで走っているキャミルには、いずれは司令部()めと言った地上勤務が待っており、士官学校を卒業しているマサムネもビクトーレも、いつかはアルスヴィッドから卒業して、戦闘艦の艦長を任されるはずであった。

「艦長! 惑星軍レンドル大佐殿から通信が入っております!」

 通信士の報告で、それまでのゆるんだ空気が一変して、艦橋かんきょうに緊張感が走った。

「すぐにつなげろ!」

 メインモニターにレンドル大佐の顔が大きく映し出された。予定にない連絡であったが、レンドル大佐の表情は慌てているようではなかった。

 レンドル大佐の背後には、今回の国防長官護衛の総指揮官である惑星軍第一師団長の顔もあった。

「キャミル少佐。第一師団長に代わり、私の方から命令をお伝えします」

「はっ!」

 キャミルは艦長席から立ち上がり、その場で敬礼をした。

「宇宙軍第四師団の戦艦ジェミニが予定どおり到着できそうなので、国防長官は、ジェミニに乗船の上、帰国なさる。ついては、アルスヴィッドはグローイ領内の惑星ブラギンに向かわれたい」

 おそらく、レンドル大佐が言っていた「新たな計画」について、グローイ共和国政府の承諾が得られたのであろう。

「惑星ブラギンで何を?」

遂行すいこうすべき内容は、私がアルスヴィッドに出向き、直接、伝えます」

「分かりました。では、お待ちしております」


 約三十分後。

 キャミルは、一人でアルスヴィッドにやって来たレンドル大佐と、艦長室の応接セットで向き合っていた。

「私も何隻かの戦艦で艦長室にお邪魔したことがありますが、これほど華やいだ艦長室は初めてですな」

 キャミルも軍務を離れると普通の女の子で、艦長室にも、長い航海でも美しさが変わらないドライフラワーが飾られていたり、可愛くて趣味の良い小物類があちこちに置かれていた。

「いやあ、まるで初めて異性の部屋に入ったようなワクワク感がありますな」

「大佐殿! それよりも私に下された指令をお伝えください!」

「はははは、まあ慌てることはありません。とりあえずは惑星ブラギンの宇宙港で待機ですな」

「はあ?」

「アルスヴィッドが惑星ブラギンにいるということだけで、今回の計画を成功させるための、ある目的は達成できるのですよ」

「ある目的とは?」

「今回の計画がアングルボーザにばれていることはないと思いますが、連邦から、わざわざ国防長官が来たということで、何らかの計画が実行されているということまでは隠しようがありません。アングルボーザは色々な手を使って、その計画について調べたり、または邪魔をしようとするでしょう。しかし、アルスヴィッドが、でーんと控えているだけで、アングルボーザも連邦市民に直接、手を下すようなことはできないでしょう」

 惑星ブラギンでは、ヒルデタント商会が探検家達を動員して、機密文書格納用保護箱シークレットドキュメントボックスを捜索していること、そして、シャミルもそれに参加していることを、キャミルはシャミルからのメールで知っていた。

 もしかすると、そのことも今回の計画に関係しており、連邦の探検家達の安全を図るために、アルスヴィッドの巨体を見せつけることで、威嚇いかくの効果を狙っているのではないかと思われたが、「ある目的」としか言わなかったレンドル大佐がその目的を詳しく話す訳もなかった。

「では、キャミル少佐! ただちに惑星ブラギンに向けて出航してください」

「分かりました」

 キャミルは、ひょっとしたら、シャミルに会えるかもという、根拠もない期待を抱いたのであった。


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