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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode-07 砂に埋もれた自由への鍵
152/234

Scene:06 惑星ブラギン(1)

 グローイ共和国領惑星ブラギン。

 居住可能ではあるが、熱帯地域の最高気温が五十度を超え、温帯地域でも年平均気温が三十度以上という灼熱しゃくねつと砂漠の惑星であり、グローイ族の入植者にゅうしょくしゃ達も、温帯地域に点在するオアシス周辺にできた都市に細々(ほそぼそ)と暮らしているだけであった。

 ヒルデタント商会の依頼を受けた三十八隻の探検船は、グローイ共和国の戦艦一隻が見守る横を一団となって、グローイ共和国領空に入り、その戦艦の先導せんどうで惑星ブラギンまでやって来た。

 惑星ブラギンで一番大きな街であるドーマルディの宇宙港に探検船を停泊させて、探検家達は、今回の捜索活動ミッションの本部が置かれた、ドーマルディ市内のホテルの会議室に集まっていた。

 会議室の前方のスクリーンには、半径一万キロメートルの円の内部を、一辺が百キロで区切られ、番号が付されたマス目が表示されている探索地域の地図が映し出されていた。

「効率的な探索をするため、各参加者の皆さんは、このマス目ごとに区切られた区域に別れて、それぞれ探索していただきます。これは同じ日に探索区域が重ならないようにするためであって、前日に別の方が探索した区域を探索されることは差しつかえありません」

 会議室の司会席には、今日も、マインシスが座っていた。

「これからランダムにお名前をお呼びしますので、その順に希望する区域を決めていただきます」

 名前を呼ばれた探検家が希望する区域を指定すると、スクリーン上のマス目が赤く色付けされていき、シャミルが最後に呼ばれた時には、円内の中心部付近は真っ赤になっていた。予想範囲の中心部分に落ちている可能性が高いと考えるのは誰しも同じなのだ。

 シャミルは、あえて他の探検家達と離れた、オアシス上にあるメグスラという街を含む区域を選んだ。

「それでは、早速さっそく、担当区域におもむき、探索を開始してください。本日の探索を終了した時には、この本部に御連絡をお願いします。何か質問はございますか?」

 誰も挙手しなかった。

「ああ、一つ、お伝えし忘れたことがございます。今回の捜索範囲内の砂漠には、モルグズ族という先住種族が暮らしています。いまだ動力源も持たない未開人ですので、ご注意ください」

「グローイは、未開の先住種族がいた惑星を開拓しているのかい?」

 カーラが小声で隣に座っているシャミルに訊いた。

「そのようですね。でも、グローイ共和国は銀河協約に加盟していませんからね」

「ああ、そうか。連邦としては何ともできない訳か?」

「ええ、好ましくないとは思いますけど」

「それでは、解散いたします。吉報きっぽうがもたらされることを期待しております」

 マインシスが降壇こうだんすると、それを待っていたかのように、何人かの探検家がシャミルのそばにやって来た。探検家業界で今や話題のシャミルを近くで見ようというやからだった。

 中には夕食を一緒に食べないかと、あからさまにナンパをしてくる者もいたが、シャミルがいつもの丁寧ていねい物言ものいいで、やんわりと断ると、みんな、残念な顔をして、会議室を出て行った。

「やれやれ、最近は、船長の人気もアイドル並みだな」

「探検家を辞めても芸能界で食べていけるにゃあ」

「二人とも何を言っているんですか?」

 照れるシャミルを更にいじめたくなるカーラとサーニャだった。

「シャミル・パレ・クルス・ファンクラブを立ち上げるか?」

「おお、良いにゃあ! 会費を取ると大儲おおもうけだにゃあ!」

「会員には、船長の水着生写真を特別奉仕価格でご提供ってな」

「実は、ウチらへの奉仕価格だったりしてだにゃあ」

「こらー! 勝手に人のファンクラブなんて立ち上げないでください!」

 本気で怒ると怖いシャミルだったが、照れて怒るシャミルは逆に可愛さが増していた。

「あの~、そろそろ、この会場は閉めるんですけど?」

 ヒルデタント商会の事務員らしき男性が申し訳なさそうに言ってきた。

 まるで緊迫感のない三人組が気がつくと、まわりにはもう誰もいなかった。

「あっ、すみません。すぐに出ていきます」

 シャミル達も慌てて会議室を出て、ホテルの入口まで並んで歩いた。

「それはそうと、船長! 何だって、あんな場所を選ぶんだよ?」

「そうだにゃあ。あんな端っこに落ちている可能性は低いにゃあ」

 思い出したかのように、副官達がシャミルに問いただしてきた。

「まあまあ、あんな小さな落とし物が、最初からすぐに見つかったりしませんよ。今日は最後に呼ばれてしまうほど運が悪かったのですからあきらめましょう」

「船長の魂胆こんたんは見えてるぜ。どうせ、メグスラの街に行きたいと思ったんだろう?」

「な、何のことでしょう?」

 急に自分の髪を手ででだしたシャミルは、もう白状したも同然だった。

「分かりやすいにゃあ」

「まったくだぜ」

「ごほんっ! ま、まあ、落下予想なんてはずれるかもしれないんですから、私達の担当区域で見つかるかもしれませんよ」

「まあ、そういうあわい期待を抱きながらでも行くか」

「そうだにゃあ」

「着く頃には、ちょうど、お昼になりますねぇ」

「……ここの名物料理も調査済みのようだな」

「……い、急ぎましょう!」

 カーラとサーニャのジト目を無視して、シャミルは宇宙港に向けて走り出した。


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