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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episodeー06 時空を超えた再会
136/234

Scene:05 バルハラ遺跡再び(3)

「どれ、それでは飯を作るかの」

「えっ、デリングさんが作られるのですか?」

「他に作ってくれる人もおらんでな」

「デリングさん。今日は私達が作ります。寝場所を提供していただくのですから、それくらいはさせてください」

 シャミルとキャミルはそろって立ち上がり、デリング博士に言った。

「そうか。それでは、お願いしようかの」

「はい。デリングさんはどうぞ居間でくつろいでいてください」

「アリシアもお手伝いする!」

 アリシアは相当、シャミル達を気に入ったようで、一緒に台所について来た。

 キャミルが具材ぐざいを切り分け、シャミルが味付けを担当して、一時間後には、具材ぐざいたっぷりのクリームシチューが出来上がった。

 四人掛けのテーブルにクリームシチュー、パン、ミルクが並んだ。

「ほ~う、思ったより良いにおいがしておるな。では、いただきます」

「いただきます!」

 アリシアの元気な挨拶にシャミル達も一緒に挨拶をした。

「う~ん、美味うまい! おぬし達、若いのになかなかやるの!」

 シチューを一口すすったデリング博士がうなった。

「ありがとうございます」

「おじいちゃんのご飯よりずっと美味おいしいよ、お姉ちゃん!」

「ありゃりゃ、これは参ったわい」

「いっぱい食べてね」

「うん!」

 食後。

 アリシアは満足したようで、テレビの前のソファに一人座り、子供向け番組に見入っていた。その後ろ姿を見ながら、シャミル達はデリング博士がれてくれたコーヒーの良い香りを楽しんでいた。

「デリングさん。アリシアちゃんのご両親は?」

「アリシアはわしの娘の子なんじゃが、娘は婿むこと離婚をしてな」

「そうですか」

婿むこは今、どこで何をしておるか分からん。娘は今、アスガルドにおる」

「アスガルドですか?」

「娘もわしと同じテラ大学で考古学を教えておったのじゃが、連邦アカデミーに長期の研究出張しておるんじゃ。一人娘のアリシアを連れて行っても、なかなか世話もできんだろうで。わしが孫娘の世話をしてやっているんじゃ」

 と言いつつも、デリング博士はうれしそうにテレビに夢中になっているアリシアを見つめた。

「娘さんは、どう言う研究をされているのですか?」

わしと同じ超古代種族の研究じゃ。このテラには、テラ族と同等以上の文明を持った先住種族がいたことはほぼ確実視されておる。さっきのバルハラ遺跡が動かぬ証拠じゃ」

「テラの古代種族の研究を連邦アカデミーで?」

「実は、テラ以外の惑星にも、現在の種族以前の古代種族の存在が疑われる遺跡が数多くある。それぞれの惑星でその古代種族の研究をしている研究者達が連邦アカデミーに集って、その超古代種族がなぜ滅亡したのかについて研究をしておるのじゃ。その研究結果は、現在の連邦のヒューマノイド種族に警告を与えてくれるかもしれんからの」

「高度な発展をげた種族であっても、跡形あとかたもなく滅亡してしまうことがあって、その原因が何かを解明させることで、今、栄えているヒューマノイド種族が滅亡する危険から回避かいひさせることができるかもしれないということですね」

 シャミルの的確てきかくな返答にデリング博士も舌を巻いたようだ。

「お前さん、まだ若いようだが、もう大学に行っておるのか?」

「あ、あの、連邦アカデミーに」

「そうか! では、マーガレット・デリングという助教授を知らんか? それがわしの娘なのじゃが」

「私は法学部なので」

「そうなのか? それでは将来は弁護士とかかな?」

「は、はい」

「キャミルさんも連邦アカデミーに?」

「私は第一士官学校に」

「ほ~う! 士官の卵か! なかなか優秀な姉妹のようじゃな。……って、どっちが姉なんじゃ?」

「あっ、私が」

 異母姉妹いぼしまいであって誕生日が同じなどという説明を一からするのが面倒めんどうだと思ったキャミルが手を上げた。

「そうかそうか。そう言えば少し落ち着いているような気がするの」

 あえて反論しない二人であった。

「でも、デリングさん。今日もバルハラ遺跡で熱心に観察をされていましたけど、超古代種族に関するヒントがまだ出て来そうなのですか?」

「まあ、闇雲やみくもに調査をしておって、何かが出て来ればもうけ物という程度なのじゃが」

「超古代種族の存在を決定づける何かが見つかると?」

「そうじゃの。それもあるが……」

 デリング博士は持っていたコーヒーカップをテーブルに置くと、眼鏡めがねの奥の鋭い目で、シャミルの顔をまじまじと見つめた。

「さっき、お前さんが口走くちばしった言葉、……ヒューマノイド共通起源説とか言ったの」

「あっ、……」

 どうやらデリング博士はシャミルの言葉をしっかり聞いていたようだ。

「共通起源か。……面白い考え方じゃの」

 デリング博士は、両手で頬杖ほおづえをついた。

わし常々(つねづね)疑問に思っておってな。絶海の孤島と言っても良い惑星に生まれ、そこで別々に進化してきた連邦内のヒューマノイドが、同じ遺伝子情報を持ち、子孫を残すことができることが不思議でならないのじゃ」

「そ、そうですね」

「共通起源説とは、この銀河のヒューマノイドには共通の祖先がいるという説じゃろう? しかし、そんな説は聞いたことがないの。どこの先生がとなえられているのじゃ?」

「……さっき、ふと思いついたのです。もし、そういう事実があれば、簡単に説明できるかなって」

「確かにそうだ。しかし、一方で、反証はんしょうできない事実も多すぎる。たとえば、共通の遺伝子情報を持ったヒューマノイドのたねというべきDNAが、大宇宙にまんべんなく拡散するには、かなりの幸運と偶然が必要じゃ」

「そうですね」

「それとも超古代に星間飛行を可能にした種族がいて、銀河系内に、その遺伝子情報を自律的に拡散したというのか? 超古代にそんな科学力や勢力をもった種族がいたとすれば、今頃、全銀河を征服していてもおかしくはないが、そんな種族はいない。また、ある惑星に居住していた種族が全滅するということは起こり得るかもしれんが、宇宙に移住していった種族がすべて滅亡するなどということは、およそ考えられない」

「さすがは、的確てきかくなご判断です。今のは、本当に私のただの思いつきなので忘れてください」

 このままでは、ヒューマノイド共通起源説は、シャミルが言い出しっぺになると思ったシャミルが必死に言い訳をした。

「うむ。……しかし、面白い考えじゃ。最初から除外する必要もないじゃろう。その説を前提として、色々と検討をすることも必要かもしれんな」

「……そうですね」

「今度、娘が帰って来たら、娘にもこの考えを教えてやろう」

「ぜ、ぜひ」


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