Scene:05 謎の巨大戦艦(2)
敵戦艦の周りをぶんぶんと飛び回っていた艦載機が次々にアルスヴィッドに帰還して来て、最後の艦載機の収容が終了すると、キャミルはアルスヴィッドを惑星ハーナルに向けて発進させた。
五隻の敵戦艦を回り込むようにして通り過ぎると、敵戦艦は一斉にアルスヴィッドの後を追って来ながら、レーザー砲を撃ち込んできた。
「ビクトーレ! こちらも応戦しろ! ただし、一隻は残しておけ!」
「了解!」
キャミルが意図しているところをすぐに理解したビクトーレは、砲撃手達に指示をして目標となる敵戦艦を指定して集中砲撃させて、惑星ハーナルの大気圏に入る前に二隻、入ってから二隻の敵戦艦を撃沈させた。
撃沈された四隻の敵戦艦は、惑星ハーナルの重力に引っ張られ墜落していった。残る一隻は船体のあちこちから煙を出しながら、アルスヴィッドの後を追って来ていた。
アルスヴィッドは、惑星ハーナルの北半球にある大陸上空でどんどんと高度を下げて行った。高い山々が連なる山脈や広大な草原が目視できるほどの高度に達した時、索敵係が新たな敵の来襲を告げた。
「七十七−四十五−〇九に飛行物体を感知!」
「モニターに惑星座標で映し出せ!」
正面の艦橋モニターの端に一つウィンドウが開いて、惑星ハーナルの地図が映し出され、アルスヴィッドの現在飛行している位置が青い光点で、新たに探知した飛行物体の位置が赤い光点で示された。
「南半球にある大陸から飛び立った模様!」
「そこに向かう! 敵艦と正面からぶつかるぞ!」
ちょうど赤道付近の洋上で、艦橋モニター上の青い光点と赤い光点が次第に近づいていった。間もなく、艦橋モニター上に敵船が映し出された。今、後ろから追って来ている敵戦艦が最初に現れた時と同じく、敵戦艦が五隻つながった状態で飛んで来ていた。
一定距離まで近づくと、新たな敵戦艦は五つに別れて、アルスヴィッドを囲い込むようなフォーメーションを取った。後ろから追って来ている一隻の敵戦艦と併せると完全に包囲されてしまう状況だ。
「また艦載機を発進させますか?」
マサムネが訊いてきた。
「いや、敵戦艦の戦闘能力は分かった。また、大気圏内では球形の我がアルスヴィッドの方が断然有利だ。ブレーキブーストレベル一! まずは用済みの後ろの敵から撃破しろ!」
アルスヴィッドは少し減速をして、追って来ていた一隻の敵戦艦を十分近づけてから、レーザー砲を一斉に浴びせかけた。既に損傷が激しかったその戦艦はあっと言う間に撃沈されてしまった。
「〇一−四十五−八十七に上昇! 一隻ずつ撃破する!」
アルスヴィッドが右斜め上に上昇すると、敵戦艦の包囲態勢はあっけなく崩れ、順次、アルスヴィッドに襲って来る状態になった。大気圏内では空気抵抗の多い立方体の敵戦艦は圧倒的に不利であった。
一旦、上昇したアルスヴィッドは今度は迫って来る敵戦艦の正面からぶつかるように飛んで行き、そのレーザー砲撃で、敵戦艦を一隻ずつ撃沈していった。
「よし! 敵が襲来してきた南の大陸に向かう!」
最後の一隻を撃沈した後、キャミルが指示をした。
とりあえず戦闘が終わって、ほっとしたキャミルは、何気なく見た左腕にはめている情報端末の画面が点滅していることに気がついた。どうやら戦闘の最中に、シャミルからメール着信があったようだ。
キャミルは急いでそのメールを開封した。同時送信されている相手がいたが、キャミルの知らないアドレスであった。
『ロボット来襲。また、戦闘機。エアカー捨てる。警戒』
シャミルの無事が確認できて、ほっとした反面、簡単な単語を繋げただけの内容から、緊迫した場面の中でメールを発信したことがうかがわれ、それが改めて、キャミルの心配を増幅させた。
そのメールには発信した時のGPS情報が添付されていた。キャミルはその情報をアルスヴィッドのメインコンピュータに転送して、艦橋モニター上で位置を特定させた。
それは、先ほど敵戦艦が飛び立った場所の近くであった。
「速度を上げろ!」
アルスヴィッドは速度を上げ、南半球の大陸に向かった。そして、キャミルはシャミルに『すぐに向かう』と返信をした。




