Scene:04 未探査惑星の住民(3)
シャミルとサーニャが右に曲がると、真っ直ぐ進んだカーラの後に一体、シャミルとサーニャに二体のロボット兵士が別れて追いかけて来た。
カーラはすぐに立ち止まって振り返り、追って来たロボット兵士に太刀を振り上げながら向かって行った。
カーラの太刀を自分の剣ではねのけたロボット兵士は、すかさず剣をなぎ払ったが、カーラは後ろに身をそらして何とかかわした。
数回、打ち込み合った後、カーラは一旦、退却すると見せ掛けてすぐに身を回すと、不用意に近づいて来ていたロボット兵士の右足を太刀で払った。ロボット兵士の右足は膝から先が折れて吹っ飛んでしまい、ロボット兵士はその場で倒れ込み、歩行不能になった。
息つく暇もなく、カーラがシャミル達の方を見ると、シャミルの投げたコト・クレールがロボット兵士のうち、一体の胸を貫通して、再び、シャミルの手元に戻って来るところだった。そのロボット兵士は穴が開いた胸部から火花を出しながら、行動不能に陥ったようだった。
残るロボット兵士は一体。カーラがシャミルを追っていたそのロボット兵士に突進をすると、ロボット兵士はすぐに気がついて、カーラに立ち向かってきた。しかし、余裕のできたカーラの敵ではなく、カーラは一撃でロボット兵士の頭部を跳ね飛ばしてしまった。
シャミルとサーニャは、太刀を鞘に収めているカーラに近寄った。
「カーラ、怪我は?」
「かすり傷すら無いぜ」
「良かったです」
シャミルはほっとして大きく息を吐いた。
「船長! 安心するのはまだ早いみたいだにゃあ!」
サーニャが見つめている方を見ると、森の木々の間から、同じ型のロボット兵士が十体ほど走って来ているのが見えた。
「早くエアカーに戻りましょう!」
シャミルと副官達は、エアカーに向かって全速力で走った。
時折、後ろを振り返ってみると、次第に距離は詰められてきていたが、まだ、ロボット兵士達の姿は小さかった。
エアカーを停めた場所まで戻ったシャミル達は、急いでエアカーに乗り込んだ。
「急ぎましょう!」
カーラがエアカーを急発進させると、ちょうど追いついたロボット兵士達が走って追いかけて来たが、さすがにエアカーの速度には敵わないようだった。
「へっ、ざまあみやがれ!」
バックモニターを見ながら、運転席のカーラは叫んだ。
「また戦闘機が来てるにゃあ!」
テラ族の十倍の聴力を持つサーニャがエアカーの窓から後方上空を見上げながら叫んだ。
シャミルも振り返って見ると、あの戦闘機五機が背後から近づいて来ていた。
「カーラ! 真っ直ぐ走ると危険です!」
「了解!」
カーラがすぐに右にハンドルを切ると、まっすぐ進んでいた場合のコース上に上空からレーザービームが撃ち込まれた。
左側からの衝撃波でエアカーは大きく揺れた。
すぐさま、カーラが車体を水平の姿勢に戻して、ジグザグ走行を始めると、ほんの少しの時間差で、エアカーの通って来た軌跡上に正確にビーム砲が撃ち込まれてきた。
エアカーは、若干、森が開けた場所に出た。上空から丸見え状態で、反撃すべき武器もなく、またスピードでも空飛ぶ戦闘機に敵う訳がないシャミル達は、ただ、不規則な蛇行運転で、ビーム砲の直撃を避けることしかできなかった。
カーラの野性的な勘をたよりに、エアカーは蛇行運転を続けて、時折、急ブレーキを踏んで、スピンターンを見せて、逆方向にダッシュしたりしていた。しかし、戦闘機達も、前回、襲われた時と同じ運動性能をもって、驚異的な半径距離で旋回をして、振り切られることなく追って来た。
「くそっ! 駄目だ! とても逃げ切れねえ!」
「カーラ! 右手に見える森に向かってください!」
カーラは思いっきりハンドルを右に切ると、目の前に見えてきた、周りよりも鬱蒼と木が生い茂っている森に、アクセルを踏み込んだまま、真っ直ぐ突っ込んで行った。
その間も、エアカーの通ったすぐ後にビームが打ち込まれていたが、その直撃を受けることなく、エアカーは森の中に突っ込んだ。
森の中では、生い茂った樹木で戦闘機からの視線が遮られたが、戦闘機のビームは正確に撃ち込まれていた。
エアカーは、森を横断して、まばらに樹木が生えている草原に出ても、猛スピードで直進して行った。
しばらく走ると、目の前に大木が現れたが、エアカーはハンドルを切ることもスピードを落とすこともなく、その大木に向かって爆走して行き、そのまま正面衝突をすると、前部を大破して停まり、その上から戦闘機のレーザービームが車体を貫き、エアカーは爆発して粉々になってしまった。
戦闘機達は、その場所で旋回するようにして、しばらく、エアカーを上空から観察していたが、生存者はいないと判断したのか、そのまま飛び去ってしまった。
一方、こんもりとした森の中にシャミル達は並んで腹這いになって、戦闘機達が去っていくのを見送っていた。生い茂った樹木の葉で戦闘機達からの視界が遮られた隙に、エアカーを自動運転モードにしてから、ドアを開けて地面にダイブしていたのだ。
「どうやら見つからなかったようだな」
「そうですね」
「でも、ここからアルヴァック号の所までどうやって帰るんだにゃあ?」
「メルザさんに迎えに来てもらいましょう」
「でも、あっちにはアタイ達のいる場所が分からないんじゃないのかい?」
「ちゃんと連絡しましたから大丈夫です」
「えっ、いつの間に?」
「エアカーで逃げ回っていた時にメールを送りました。あの時、自分達の位置は敵に知れ渡っていた訳ですから、通信波を出してもまったく問題はなかったですからね」
「ああ、なるほど。しかし、あんな状況の中でも、そんなことをすぐに思いつくなんて、さすが船長だ」
「ついでにキャミルにも同時送信しましたので、キャミルもここに来てくれるとは思うのですが」
「マジか! キャミルがアルスヴィッドで乗り込んで来てくれたら、一気に形勢逆転だぜ!」
「GPS波を出し続ける訳にはいかないので、とりあえず、ここで待機していましょう。メルザさんとキャミルなら、あれだけの連絡内容と発信源情報とで、この場所は特定してくれるはずです」




