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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episodeー05 機械人形の国のアリス
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Scene:04 未探査惑星の住民(2)

「ええ、良いわよ」

 そう言うと、シャミルはひざまづいている態勢のまま、上半身を前のめりにさせながら、アリスの顔に自分を顔を近づけた。

「アリスちゃんは私の顔が見えているの?」

「見えてるよ。シャミルちゃん、可愛い顔してる」

「ありがとう。アリスちゃんも可愛いよ」

「本当? ありがとう」

 目のまばたきやしゃべる時のくちびるの動きは、ヒューマノイドと見分けが付かなかったが、微妙な表情の変化までは表現できていないようであった。しかし、シャミルに「可愛い」と言われた時の些細ささい仕草しぐさから、アリスが本当に喜んでいるように感じられた。

 しかし、アンチ・ロボット・ルネサンス以降、このヒト型ロボット、すなわちアンドロイドのように、ヒューマノイドに似せたロボットも製造が禁止されているはずだ。誰が何の目的のためにアリスを造ったのか? そして、なぜ、この誰も居ない惑星に一人いるのか?

「アリスちゃん。ひとりぼっちって言ったけど、さっき飛行機が空を飛んでなかった?」

「飛んでた」

「あの飛行機はお友達じゃないの?」

「違う」

 とぼしい表情は、アリスの言葉が嘘なのか本当なのかを判断させることはできなかった。

「ねえ、シャミルちゃん。後ろにいる二人のお姉さんはシャミルちゃんの友達?」

 アリスは少し顔を上げて、シャミルしにカーラとサーニャを見た。

「そうだよ。背の高い方がカーラと言って、もう一人はサーニャって言うの」

「カーラちゃんとサーニャちゃんね」

「そうだよ。私と同じように仲良くしてくれる?」

 アリスは元気にうなづいた。

「アリスちゃんのお家を見てみたいな」

「うん、良いよ。ついて来て」

 そう言うと、アリスは振り向いて、森の中に向かって歩き出した。

「あっ、アリスちゃん、待って。……歩いて行ける所?」

 アリスは顔だけを後ろに向けて答えた。

「そうだよ。すぐそこ」

「そう。分かった。じゃあ、アリスちゃんについて行く」

「うん」

 再び、アリスは前を向いて歩き出した。その歩く動作も、ヒューマノイドが歩いているのと、まったく区別が付かない綺麗きれいなモーションで、普通に子供が歩く速度で、アリスは歩いて行った。

「船長」

 シャミルのすぐ後ろを歩いていたカーラがつぶやくように話し掛けた。

「あいつは一体、何なんだ?」

人型機械人形アンドロイドのようですね」

「どうして、この惑星に?」

「分かりません。でも、彼女を造った人がいるはずですよね。彼女の家に行けば、会えるかもしれません」

「でも、あの戦闘機といい、人型機械人形アンドロイドといい、何がどうなってるんだにゃあ、この惑星は?」

「そうですね。色々出てきましたけど、まだ、ヒューマノイドに会っていませんね」

「確かに。あの戦闘機も無人ぽかったしな」

 突然、アリスが立ち止まって振り向いた。

「シャミルちゃん。アリスのお家はあそこだよ」

 そう言ってアリスが指差した先には、小高い丘のふもとに、幅約十メートル、一番高いところで高さが約三メートルの、地面が横にけたような亀裂きれつがあった。

 その亀裂きれつの中は、電灯が灯っているのだろうか、ほのかに明るくなっていた。

「あの中なの?」

「そうだよ」

「私達も入って良い?」

「その前に遊ぼう」

「えっ?」

「お家に帰る前に遊ぼうよ」

「遊ぶって、どうして?」

「面白いから。鬼ごっこしよう」

「鬼ごっこ?」

「うん。アリス、鬼ごっこ大好き!」

「そ、そうなの」

「シャミルちゃん、鬼から逃げてね」

 アリスがそう言うと、アリスの左右の木の陰から、身長二メートルほどのロボット達が二体ずつ出て来た。一つ目に見える丸いカメラセンサーと小さなアンテナのような突起とっきしか付いていない小さな頭部に、騎士鎧きしよろいのような金属装甲のボディで、右手には剣を握っていた。

「何だい、お前達は?」

 カーラが素早すばや太刀たちに手をやって、シャミルの前に進み出た。

「アリスちゃん。このロボットは、あなたの知り合いなの?」

「私の家来で、鬼なの」

「家来? 家来ってどういう意味?」

 シャミルが無表情のアリスに訊いたが、アリスは返事もせずに、ただ突っ立ているだけであった。

 そうしているうちにも、兵士のような四体のロボット達は、シャミル達を取り囲むようにしながら、ゆっくりと迫って来ていた。

「アリスちゃん、答えて! この鬼達は、私達を殺そうとしているのかしら?」

「遊びたいだけ」

「それじゃあ、なぜ、剣を持っているの?」

「面白いから」

「アリスちゃんの家来なら命令してくれないかな。向こうに行ってくれって」

「駄目。面白いから遊ぶの」

 その言葉が合図だったかのように、四体のロボット兵士が一斉に襲い掛かって来た。

一旦いったん、下がりましょう!」

 そう言うと、シャミルと副官は、元来た方向に振り返り走り出した。

 しかし、ロボット兵士は思いも寄らぬ速さで駆けて来た。

「くそっ! このままじゃ追いつかれちまう!」

 カーラは太刀たち一旦いったん、左手に持ち替えて、ベルトからレーザー銃を抜いて、追って来ているロボット兵士に向けて撃った。しかし、レーザービームはロボット兵士のボディに届く前にね返されていた。

「くそ! ロボットのくせにパーソナルシールドを展開してやがる!」

 カーラはレーザーガンをベルトに収めて、太刀たちを右手に持ち替えた。

「船長、ここはアタイがくい止めるから、先に逃げててくれ!」

 そう言って、カーラは立ち止まり、ロボット兵士達の方に向き直った。

「カーラ!」

 シャミルとサーニャも思わず立ち止まった。

「心配いらねえよ。ロボット相手に戦ったことは無いが、所詮しょせんは機械だ。さあ、てめえら、アタイが相手してやる! 掛かってきやがれ!」

 ロボット兵士達も足を止めて、ゆっくりとそれぞれの間隔を広げて、シャミル達を包囲するようにしながら、次第に距離を詰めてきた。

「船長、行かせてもらうぜ」

「分かりました! 私もフォローします。逃げるときは一緒ですよ!」

「へっ、相変あいかわらずだな、船長は!」

 四体のロボット兵士が一斉にカーラに襲い掛かって来た。

 シャミルは咄嗟とっさにコト・クレールを抜いて、向かって左側から迫って来ていた二体のロボット兵士に向けて投げつけた。

 ロボット達は、青い光の軌跡を残しながら飛んで行たコト・クレールを自分達の剣で防御することで精一杯だったようで、その二体のロボット兵士の足が止まった。

 カーラは、右手から迫って来たロボット兵士二体と剣を交えた。百キログラムを超えるカーラの太刀たちの直撃を喰らい、頭部を跳ね飛ばされたロボット兵士一体が立ったまま動きを停止した。

 その間にカーラの背後に回り込んだ、もう一体のロボット兵士の剣がカーラの背中に向けて振り上げられたが、シャミルの投げたコト・クレールがその剣を弾き飛ばした。

 そうしているうちに、左側から迫っていた二体のロボット兵士が体勢を立て直して、再び、カーラに迫って来た。

「カーラ! まともに向かって行っては危険です! 退却です!」

「おおう!」

 もう一度、シャミル達は元来た方向に向かって走り出した。追って来るロボット兵士は、まだ三体!

 ヒューマノイド以上の走行性能を持っているらしいロボット兵士達が、また後ろに迫って来た。

「カーラ! 二手に分かれましょう! 私とサーニャがひたすら逃げますから、カーラは自分を追って来たロボットを討ち取ってください!」

「分かった!」

「サーニャ! 私について来てください!」

「はいにゃ!」


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