5話:理由
蒼空視点。
着いてこないでと言われた次の日。
邪魔ものが居なくなったと考えることもあったけど、やっぱり気になってる自分も居て。酷いときは、人間の女の子に声を掛けられて気付かないこともあった。激しく後悔したけど。
とにかく気になるくらいなら、と捜索を始めた。
山、街、ホテル……。
こっちに来てから一緒に行ったところを一通り回る。しかし、いない。
おかしいな。と思いつつも、
「……まだ探してないところなんてあったっけ?」
再び記憶を辿る。
--その時だった。目の前に同族が現れたのは。
「あれ? お前は確か親父の配下の--」
それは親父の配下で、俺も顔見知りの黒い翼を生やした一般的な悪魔だった。
急になんだ? それもなにやら神妙な面持ちで。まぁ親父の配下に探知系の能力者も居るから、いつかバレるとは思ってたけど。
「魔王様からの伝言です。今まで動きのなかった隣国の悪魔共が攻めてきたから、至急戦列に加われ。と」
なるほど、あの豚がね。前から嫌がらせがウザかったやつだ。絡んでくる悪魔って五割ぐらいはあいつの部下だし。思い出してイラっとする。まぁ俺がルナと仲良くしてんのが気に食わないんだろうけど。
「そんなの親父だけで十分だろ? やだって言っといて」
今はそれよりルナを探さないとな。でないとなんかモヤモヤする。鬱陶しい。
「そうは参りません。最近、奴らは急激に勢力を伸ばしています。恐らく強力な用心棒を得て--」
あぁ、最後まで聞いてられん。一応、親父には借りもあるし手伝ってやりたいけど。今はルナを探してやらないとな。
「今は忙しいんだ。他を当たってくれ」
あれ、なんで俺はルナに固執してんだ?
「今やあなたの性格はみなが知り得ること。ですが、今は国が一大事なのです。どうか御協力のほどを」
「そうは言われてもな--」
--と、突然俺の隣でなにかが割れるような音がする。
「なんだよ? 今日はよく絡まれる日だな」
次いで空間に穴が開いて、中から悪魔が出てくる。これも一般的なやつ。
「雑魚かよ……」
最初は何時もの金目当ての追っかけかと思った。でも、中から現れたのは一人だけで大した強さも感じない、どうやら俺を殺しに来たわけでは無さそうだ。
「ふん……お前がソラか?」
「あぁ、多分な」
「なんだ、国中が殺気立ってるからどんな豪傑かと思えば……ただの小僧じゃないか」
雑魚が笑う。なにがおかしいのやら。構ってる時間はないからとりあえず死刑。
錬金術使用、鉄の棒が刀を形成する。有り余る魔力を漲らせて肉体強化。並みの悪魔なら視認出来ない速度で跳ぶ。
それとほぼ同時に手と足を切り裂いた。
「ムカつくお前に大サービス。最後に一言どうぞ?」
「は?」
ご丁寧に動く前の位置に戻ってやると、雑魚は斬られたことすら気付いていないようだ。
遅れて手足が飛ぶ。特有の汚い血が舞い、悪魔が苦痛に叫ぶ。
「騒ぐな。まだ生きてるだろ? 俺を馬鹿にしたお前が悪い」
「ぐォォォ!! ……くく、グハッ! こ、これが伝説の力か……恐ろしい」
「雑魚が俺なんかに絡むからだ。で、言いたいのはそれで全部か?」
最後の一閃。俺は刀を振り上げる。
「ま、待て! 魔王様からの伝言を預かってる!」
--え、なに? お前も?
違うところと言えば、よりウザい奴からってとこか。
「はぁ……なんだよ?」
「お前の幼馴染みを賭けて我が城で勝負だ。だとよ」
チッ、道理で居ないわけだよ。あー、無駄に探した時間返せよあの豚がっ!
「……はいはい。じゃあな」
きっちりトドメを刺して元の棒に戻す。直しながら、親父の配下に声を掛ける。
「相変わらず素晴らしい手際の良さ。どうやら、腕は微塵も衰えてないようで」
「あぁ、面倒くさいからさっさと済ましてるだけだって。それより親父に言っとけ」
「……はっ!」
悪魔が膝を付く。それを横目に見ながら、俺は空間を叩き割った。
「先に行く、って」
再度、刀を形成。右手に構えて、俺は穴に飛び込む。
親父の頼みもあるし、個人的な恨みもある。
なにより、居ないとイライラする幼馴染みの為に--
気に入らないところがあればご指摘下さい。
可能な範囲で直します。