1話:邪魔
よし、書こうと思ったはいいけど、また見切り発車。
先は考えてるようで全然思いつかない(汗
俺達は今、人間達の住む世界。人間界に来ています。
やっと来たぜ。さぁ観光でもしようか。
……と言うのに、
「死ねクソ野郎が!!」
何度やっても懲りずに俺を殺そうと向かってくる悪魔共。
……思わず溜め息が出る。
「……またか」
なんで向かってくるのか。
理由は単純、俺が賞金首だからだ。
なんでっ?
望んでないよ?
とまぁ冗談はさておき、望んでないのは本当で、ちゃんと理由がある。
俺には人間の母がいた。
だから名前も黒鵺衣 蒼空【くろぬい ソラ】と凡そ悪魔に似つかわしくない感じだけど、それは別の話か。
--50年前、俺は子供の頃、目の前でその母を殺された。
魔王の相手が人間だってのが気にいらなかったらしい。その時は当然、ブチ切れたよ。
で、俺は魔王の息子だからってその頃から既に強かった為に僅か二秒で復讐を果たした。
不憫に思った神様が、悪魔の俺に加護を与えたのがその時だ。「そのままでは可哀想だからな」だそうで。俺はガキだったから普通にありがとう!って返してたけど……本当なら殺されてるんだろうな。
イメージと違って金髪美少女な神様にビックリしたのを覚えてる。
その力も使って、俺は気が済むまで暴れた。
……まぁ、大陸の形がちょっと変わってしまうぐらいには。 それがきっかけで、親父と敵対してた他国の魔王が怒ったらしくて……、晴れて賞金首に!
やったねっ! ……はぁ。
ちなみに額は知らない。
一度見たけど0が多くて覚えてないから。聞いた話だと、悪魔の永い一生を遊んで暮らせるほどだそうな……。
それに輪を掛けて、一人で行こうと思ってた人間界に何故か着いてきた桃色の髪をした女の子がいる。
その子、【ルナ・ティターニア】がまさかの売れっ子(古いか)アイドルだったりしたのだ。
これで、前からうざかった追っかけが更にしつこくなった。
それを俺が殺して、額が上がって、追っかけが増えて……、最近は悪循環に頭を抱える日々だよ。
と、考えてる間にその追っかけが俺に襲いかかってきた。
「お前を殺せばッ!!」
「お前らなんかに殺られるかよ」
……やれやれ。
ここは神の加護の一つ、錬金術でも使おう。
通常、錬金術は代価を必要とする。
さすがに無から作り出すのは俺の力じゃ無理だけど、たまたま拾った鉄の棒さえあれば、後は足りない代価を膨大な魔力で補える。
前に見た人間界の刀を頭に浮かべると、鉄の棒が俺の脳内イメージを精巧に模したものに変わっていく。
「消えろ」
刃には風の魔力を込めて、俺はそれを無造作に振った。
「ゲァ……ッ!!」
一切の無駄がない、刃の面積分の斬撃が飛ぶ。
それが通り過ぎれば大体のカタがついている。
悪魔共が恐怖におののいたのが見えた。
後は残ったやつを狩れば終わるか……。
「…………ふッ!!」
踏み出した足に力を込め、前に跳躍する。
ベコッ。
と、踏み込んだ地面が少しめり込んだ。
その勢いをのせて、刃はなんの抵抗もなしに対象を切り裂く。
それを三度も繰り返すと、襲ってきた奴らは全員倒れていた。
「終わったかな……全く、何時もナンパの邪魔される身にもなれよ」
特に意味もなく刀を揺らし、辺りを見回してみる。
「ん……?」
と、見回す俺の足元から影が伸びた。 振り向けば、視界が一瞬にして真っ赤に染まった。
「……生き残りがいたのか」
恐らくは、敵の炎系統の魔法だろうと推測する。
視界を埋める程の火力を見れば弱くはないようだが……、
「ま、無駄だな」
神の加護、第二弾発動。
俺の体を中心に半径ニメートル、害となる一切の魔力を遮断する不可視の膜が拡がる。
喰らったことはないが、これをぶち破れるような力と言えば、親父の業火か龍の息吹きぐらいのものだ。
この程度の魔法なら避ける必要すらない。
それを証明するかのように、膜に触れた炎の塊がいとも簡単に四散した。
「なっ、一体なにが……?」
炎を放った悪魔の一人が言葉にならない表情をする。
「言ったろ。お前らじゃ無理だ」
ザンッ、と一瞬だけ小気味良い音が響く。
もう一度辺りを見て終わりを確認すると刀を元に戻した。
(錬金は、一回やってしまえばそれ以上の消費がない分やっぱ省エネだな)
「ルナ? 終わった」
「ほんとに?」
「あぁ、大丈夫」
安堵を浮かべて隠れていたルナが出てきた。
強力な神の加護、万能に見える力だが思い付くだけで欠点が2つある。
一つは、加護の字にあるように、攻撃に向かない。
まぁ、これは魔王級の魔力があれば充分だが。
もう一つは、ルナを隠れるように言った理由。
他人に分けられない、または与えられない。
自分にしか作用しないのだ。
よって、誰かを護ろうとすれば直接原因を駆除するしかない。
それも今のところは特に困っていないから、特に欠点とは言えないかも。
生まれつき頂点に君臨する種族である上に、神の力という相反する両者の中でも最上級の力を振るえる為、相手がいないからだ。
俺には良識もないけど際立った悪意もないから、その時の気分だけどルナは一応庇うようにしてる。
「それにしても、勇気あるよな。コイツら」
「まぁ、無理矢理ぶち破って出て来れるのってあんたくらいだしね」
人間界と魔界には二つを隔てる空間の壁みたいのがある。
多分、二つとも同じ世界にあるんだと思うんだけど、どういう仕組みかはわからない。
普通は稀に生まれる能力者でしか開けられない筈だが、今は世界の変動とかなんとかであちこちに穴が開いているらしい。それでも場所はランダム、開く時間もまばらで運が悪いと元の世界に帰れなくなる。
だから思った。
「だろ? 自分で出て来れないってことは二度と帰れないかも知れないのにな」
「ま、わたしの魅力に惹かれたんじゃない?」
ルナが笑顔でこっちを見る。
あからさまになんか言えって雰囲気をだして……。
んん、確かに可愛い顔はしてると思うけど……、
「へぇー……」
やっぱ俺には悪魔の好みはわからない。
「なっ、なんか突っ込みなさいよ!」
「えー……? じゃあ、ポーズが古いわっ」
「元気ないし、ポーズなんてとってない! ただの笑顔! それに、じゃあってなによ!」
「あー、わかったわかった。あんまりギャーギャー言うと置いてくぞ?」
「そっ、それは困るのっ!」
「……全く」
俺は人間の彼女が欲しかっただけなのに……、これじゃ魔界とおんなじだ。
まぁルナはいいとして、追っかけ共が邪魔ばっかするし。
……なんで俺なんかに着いてくるんだか。
なんか早くも王道から外れてる気が……。
まぁ作者自身なんかずれてるんでご容赦のほどを。
今のところ、ほのぼの惨劇ファンタジーですかね。
主人公に良識ないんで、はい。