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感情を知らぬ王女と、彼女を愛しすぎた魔導師  作者: ゆにみ
王女の場合

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9/15

”嫉妬”という感情

 先ほどのやり取りのあと、夕食の時間になった。

 けれど、食卓にはいつものような穏やかな空気は流れていなかった。


 私もルークも、無言のまま食べ進める。

 いつもなら、私が「今日はどんなことがあったの?」と尋ねて、ルークが柔らかく微笑みながら話してくれる――そんな心安らぐ時間なのに。

 なんだか、目の奥が熱くなってきた。



 (……ルーク、やっぱり怒ってる)



 そう思った瞬間、堪えていた涙が一気にあふれ出した。

 ハッと気づいたルークが、椅子を引いて慌てた様子で私のもとへ駆け寄ってくる。



 「リ、リシェル!? どうしたんだ!?」



 ちらりと見上げたルークの顔は、さっきまでの無表情とは違っていた。

 いつものように優しく、そして少しだけ困ったように眉を下げている。

 その姿に、胸の奥がふっと緩む。



 「だって……ルーク、怒ってるから……。嫌われちゃったのかなって」



 私の言葉に、ルークの瞳が大きく揺れた。

 次の瞬間、そっと抱きしめられる。



 「ごめん、リシェル……悲しい思いをさせるつもりなんてなかったんだ」



 その声は少し震えていて、胸の奥まで優しく染み込んでくる。

 しばらく沈黙が流れたあと、ルークは視線を逸らしながら小さく呟いた。

 


 「さっきは……情けなくて言えなかったけど……嫉妬したんだ」


 「……しっと?」



 私が首を傾げると、ルークはさらにしどろもどろになる。



 「リシェルが知らない誰かと会って、仲良くなって……そのまま、俺のもとを離れてしまうんじゃないかって……」


 「え!? リシェル、どこにも行かないよ!?」


 「……ありがとう。そう言ってもらえると嬉しい。でも、そう思ったら胸が苦しくて……どうにかなりそうだった」


 「大丈夫だよ! そうだ! ルークもブランに会ってみよう!」


 「そ、それは……なんというか……複雑だな……いや、でも牽制できるのか......?」



 ぼそぼそと小声で何かを呟くルークの声がよく聞こえない。



 「え、今なんて言ったの?」


 「いや、なんでもないよ。それより……その、ブランってやつに会わせてくれるのか?」


 「うん! えへへ、ブランすごくかわいいんだよ!」


 「……女の子なのか?」


 「男の子だよ?」



 ルークは一瞬、息を止めたように見えた。



 「......へぇ」


 「ルークも気にいると思うよ! 私も大好きなんだ」


 「......そうか」




 ――そのときの私は、まだ気づいていなかった。

 ルークが、致命的な勘違いをしているということに。

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