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感情を知らぬ王女と、彼女を愛しすぎた魔導師  作者: ゆにみ
王女の場合

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15/15

“ブラン”の正体(sideルーク)

ルーク視点です。

 あの日、窓辺に落ちていた白い毛に触れた瞬間、身体中に電気が走るような衝撃が駆け抜けた。

 ――あれは確かに魔力だった。それも、俺が知り尽くしたものだ。



 (......アイツ、なんのためにリシェルに近づいた?)



 抑えきれない怒りが胸を満たし、手のひらが震える。自分でも驚くほどの感情の奔流に、理性がぎりぎりで踏みとどまっていた。




 翌日、俺は魔法塔に向かった。日々、依頼は山のように積まれ、俺たち魔導師はそれをこなす。しかし今日は、依頼を受ける前に、とある場所へ行く必要があった。



 静かな廊下を抜け、目的の部屋の前で息を整える。ドアを開けると――奴がいた。



 「――おい」


 自分でも驚くくらい、低い声が出た。声だけで怒りを伝わりそうなほどの。

 白髪に金眼の男がゆっくりと振り返る。



 「あれ、ルーク、こんな早くにどうしたんだ?」


 「......わかっているだろ、()()()



 自分でも驚くほど低く、鋭い声が出た。

 あの時の魔力――間違いなく奴のものだった。俺の同期であり、同じ魔導師として期待される男、シリル。その笑顔の奥に隠された軽さが、余計に苛立たせる。

 



 「あはは、あれかな......ルークのお姫様のこと?」


 「――お前......っ!」


 俺の手が自然にシリルの胸ぐらに伸びていた。

 心臓が張り裂けそうで、頭の中の血が沸騰するようだ。



 「ははっ、すごいな、ルーク」


 「なんのために、リシェルに近づいた? 理由によってはいくらお前でも――殺す」



 俺の言葉が部屋に響く中、奴は飄々と笑う。


 

 (……むかつく)



 「まあまあ、落ち着けよ。別にお前のお姫様に手を出すつもりはないんだ」



 怒りの熱を胸に押さえ込みながら、俺は問い詰める。



 「じゃあ、なんだ。理由を言え」


 「俺は、ただお前が心配だったんだよ。誰も気がついていないけど、任務中もそわそわしてるし、仕事が終わればさっさと帰るし......気になるだろ?」


 「だから、俺の家に勝手に言ったと?」


 「黙って行ったのは悪かった。ただすぐに理由はわかったよ。ああ、この子のためだったんだなって」


 「理由がわかったなら、なぜ今も行くんだ」


 「いや――お姫様がかわいくて?」


 

  言葉を聞いた瞬間、再び手が動きかけたが、奴は軽々と避ける。余裕たっぷりの姿に、怒りと苛立ちは増すばかりだ。




 「冗談だよ。でもさ、あの子がずっと家に一人で過ごしているのがかわいそうで......俺が行くと楽しそうにするんだよ。可愛がりたくなるだろ?」



 言葉が詰まる。なぜなら、リシェルを家に閉じ込めているのは俺だから。



 「なぁ、ルーク......これでいいのか?」

 

 「......お前には関係ない」



 俺は息を荒くして、胸の奥がぎゅっと締めつけられるのを感じながら、部屋を後にした。



 俺はこれ以上、この男と一緒にいたくなかった。

 自分の中の汚い感情が暴かれるような、そんな気がしたから。




 廊下の静寂が、心の混乱を余計に際立たせていた。

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