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感情を知らぬ王女と、彼女を愛しすぎた魔導師  作者: ゆにみ
王女の場合

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11/15

外よりも大切なもの

 今日は、ルークのお仕事の日。私は静かに家で過ごしていた。

 窓の外ではしとしとと雨が降り、今日はブランも来ない日。



 (今日は……退屈だなぁ)



 そう思った瞬間、胸の奥がぽっと温かくなった。

 ――“退屈”なんて、今まで考えたことがなかったから。


 ルークが帰ってくるのが、楽しみだな。

 彼と過ごす時間の中で、私はいろんなことを知っていく。

 もっと、知りたいとさえ思う。



 (今日はどんなお話を、聞かせてくれるのかな)



 日が傾き、外が闇に沈みかけた頃。



 ――ガチャッ。


 ドアの開く音。



 (あ、ルークだ!)



 私は駆け寄って、彼に抱きついた。

 ルークはいつも通り優しく頭を撫でてくれる。



 「ただいま、リシェル」


 「ルークおかえり!」



 それだけで、胸がふわりと満たされる。



 「ねえルーク、今日はどうだったの?お仕事大変だった?」


 「そうだな......いつも通りだよ。今日は、魔物退治をした」


 「うわぁ......図鑑で見たよ! 怖い生き物たちだよね」


 「リシェルには近づけさせないから、大丈夫だ」


 「えへへ、ルークってすごいね!」



 “外”で働くルークはいつも大変そうなのに、平然とこなしてしまう。

 ――本当に、かっこいい人だと思う。



 「あ、そうだルーク! 外ってどんな感じなの? 本で読んだんだけど、海とか、いろんな生き物がいるんでしょ?」




 その瞬間、ルークの笑顔が少しだけ固まった。



 (ルーク……?)



 沈黙。

 なぜ答えてくれないのか、わからないまま、彼はようやく口を開いた。




 「リシェル……外に出てみたいか?」



 外――その言葉を、ゆっくりと頭の中で転がす。

 考えたこともなかった。

 王宮にいた時も、ずっと部屋に篭っていてあの場所から出たことなんてなかったから。


 

 もし、出てもいいのだとしたら?



 (出てみたい……かも)



 世界を見てみたい。ルークと同じ空の下に立ってみたい。

 そう思って、顔を上げかけた――けれど。


 ルークの表情を見て、言葉が詰まった。

 ……苦しそう。



 もしかして、ルークは私がここから出るのが嫌なのかな。

 前にも他の人について行かないか心配だなんて言っていたし。



 理由はわからない。でもこれだけは確か。

 ルークの嫌がることは絶対にしたくない。



 だって私の一番の願いは、外へ出ることじゃない。

 ――ルークのそばにいることだから。


 だから、はっきりと答えた。



 「ううん、行かない」


 「え……?」


 「だって、ルーク……行ってほしくないって顔してる」


 「……!」



 驚いたように目を見開くルーク。その様子を見て、自然と微笑んで答えていた。



 「わたしにとっては外よりも、ルークが全部だから。興味なんてないよ。ね?」


 「……リシェル」



 彼は一歩近づいて、そっと私を抱きしめる。

 その腕の中の温もりに、胸の奥がじんわりと溶けていく。



 「えへへ……あったかいね」


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