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レンたちが、見つけたもの……!

ツーン、とした空気が鼻を突いた。カビ臭くて、重たいにおい。


中にはぽつんと、一つだけ机があるだけ。思ってたより、簡素な部屋だった。


でも――それよりも、ずっと気になるのは。


「なにこれ、血……?」


セイラが眉をしかめてつぶやく。


「なんだか、気味が悪い」


壁に赤黒く、にじんだ文字が書かれていた。


“まさか、他にもいたとは……”


“偽りの顔、満月の光が打ち砕く……?”


「……」


横目でセイラを見ると、その顔が一瞬だけ曇ったように見えた。


「とりあえず、何か手がかりがないか、探してみよう」


ぼくが声をかけると、セイラは小さくうなずいて、いつもの調子を取り戻した。


部屋を探していると、セイラが何かを見つけて声を上げた。


「ねえ、これ……」


「何かあった!?」


黄ばんだ封筒を差し出してくるセイラ。


「う、うん。でも、文字がちょっとかすれてて……」


封筒を受け取ると、セイラの手が少し冷たいのに気づいた。


でも、それ以上に気になったのは、封筒の宛名だった。


“ノア・オルフェオ様へ”


「ノア……?」


これはどうやら、ノアに宛てた手紙のようだった。


「ノアって……第一王子の?」


セイラが首を傾げた。


なんの手紙だろう?


不思議に思いながらも中を開けると、こんな内容の手紙が入っていた。


“誠に聡明な見解でございます、ノア様。そして、もしその仮説が正しければ、“あの事”にも説明が


つきます。ですが、もしかしたら次はあなた様を狙ってくるのかもしれません。わたくしは証拠を


求めてルミナスへ向かいます。くれぐれも、お気をつけて。』


――署名は、すでに滲んで読めなかった。


「ノアが……なにかに気づいてた……?」


なんだか信じられなかった。今の兄様からは想像できない。


でも、あの“あの事”ってなんだ?


「ともかく、今日はこの手紙が一番の収穫かな」


セイラの声がぼくの耳を抜けていった。



帰り道、セイラがふと思い出したようにつぶやいた。


「……そういえば、ルミナスに行くって書いてあったね」


「たしか、北の……」


何かの仮説が、ぼくの中で形になりかけたそのとき。


「ねえ、止まって」


セイラがぼくの手を引いて、ぼそっと言った。


「ど、どうしたの? おばけ……!?」


「違うよ。あそこ、灯りがついてる。誰か喋ってるみたい」


指さす先には、今は使われていないはずの古い物置。


「……ほんとだ」


「ちょっと、聞いてみよう?」


ぼくたちは口パクで合図しながら、そっと物置の前へ近づいた。


中からは、小さな声の会話が聞こえてきた。どうやら、男の人がふたり。


「……王様とノア様はやはり……」

「……ああ、満月の夜には……」

「あの娘は……」

「……計画を……」

「しっ、声を抑えろ!」


「……すまん……」


――それきり、会話は途切れた。


ぼくとセイラはそっと顔を見合わせ、静かにその場を離れていった。



その夜、ベッドに横たわりながら、ぼくは考えていた。


王様は――父上は――厳格で…無茶苦茶な政治をするような人には見えない。


ノアは……手紙の内容と、さっきの会話を思い出すと、何かが引っかかる。


セイラも、なにかを隠してる気がする。


そして……カイにも、あれから会っていない。


コンサートの準備で忙しいって言ってたけど――


あれから、ずっと、なにかが噛み合っていない気がする。


秘密が多すぎて、なにが本当なのか、もうわからないよ……。

レン:わかっているのは、ノアの体型くらいで……。ホントに、この国でなにが起きてるの!?

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