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怪しいけど惹かれる…謎の少女セイラ登場!

開け放たれた窓から、春の夜風がすうっと吹き抜ける。


王国の闇なんて関係ないって顔で、さわやかに、自由に。


「はぁ〜…なんでこんなことになっちゃったんだろ」


昔は、もっと平和だった。


父上も母上も優しくて、ノアだって、あんなゴブリンみたいじゃなくて。


カイなんて、逆にやんちゃすぎて手に負えなかったくらいでさ。


「それが今は…」


そんなことを考えながら角を曲がった瞬間――


「わっ!」


誰かと正面衝突して、思いっきりころんじゃった!


「イタタ…ごめんなさい! 怪我はありませんか?」


あわてて手を差し伸べると、相手の子は「イテテ」といいながらぼくの手を取り、ふわりと


立ち上がった。


月の光が、長い藍色の髪を照らしてゆらめく。

きらきらした星みたいな瞳――


……えっ、なにこの子、超かわいい。


レンの頭の中が、一気に「かわいい」で埋め尽くされる。


「きみ、だれ?」


その子は驚いたように瞳をパチクリさせて、それからこう言った。


「オッ、わたし? わたしは、レオンハート家長女、セイラ・レオンハート」


レオンハート家って……セルラルドの王族に近い、あの!


「セルラルド王国直属の公爵家なんだ」


セイラはふわりと花が微笑むように笑って、そう言った。


可愛すぎて、頭がついていかない。どうしてこんな時間に、こんな子が王宮をーー


「おい、まだ見つからんのか!」


「どこ行ってしまわれたんだ!」


「見つからなかったら、チトセ様に殺されるぞ!! 探せ!」


どたどたと、足音と怒鳴り声が近づいてくる。


「え、なに? 誰か探してるの?」


不思議に思って、レンが声をかけようとした、その時。


「こっち!」


「えっ、ちょっ、わっ!?」


セイラにぐいっと手を引っ張られ、近くの部屋に押しこまれた。


「ごめん、大丈夫? ついあせっちゃって…」


差し伸べてくれた手をとりながら、レンはふと気づいた。


この部屋ってたしか、父上の側近の部屋なんじゃ…。


本棚に囲まれた机の上に、一冊の本がぽつんと置かれていた。


「もしかして、これ…帳簿かも!」


レンの胸が高鳴る。


一数日かけて探しても、手がかりになる帳簿はどこにもなかったのに!


あわてて本を手に取り、ページをめくる。


ー01年7月7日

今日は国王が即位された。とても喜ばしいことで、お妃様もたいそうお喜びのご様子じゃ。


「日記…?」


どうやら、これは父上の近くにいた誰かが書いたものらしい。


勝手に読んじゃって、ごめんなさい…。


けど、レンはページをめくる手を止められなかった。


ー05年3月24日

元気な王子が誕生された。「ノア」と名付けるみたいだのう。立派な王子になられるように、願って

おりますぞ。


ー11年5月13日

今日はカイお坊ちゃまが、初めてご友人をつくられたとかで、メイドが大騒ぎしておった。まったく、モテるのも困ったものじゃな。


「あれ? ここで終わってる…」


ー20年4月8日

最近、王様とお妃様のご様子がおかしい。

周囲は気づいていないようだが、だんだんと、力を失われているように見える。

この件、ノア様に話すべきか……。


日記は、そこまでで終わっていた。

最後の記述は、ちょうど3年前。


「やっぱり、誰かも気づいてたんだ……。カイに知らせなくちゃ。もしかしたら、味方になってくれるかも!」


レンは急いで回れ右して、部屋を出ようと――


「ふ〜ん。」


セイラが、ニヤリと笑ってそこに立っていた。

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