秘密の任務スタート!?王子レンの秘密の作戦
【王子レンのひみつメモ】
ミッション:豚ゴブリンノアを王にさせない!
方法:カイ兄と革命?でも死刑?わお☆
現在地:わりと本気。
*
「だっからぁ、また税金が上がるんだってよ」
「本当かい!?もう、王様は何を考えてるんだか…」
春の柔らかい風ととともに、ぼくの耳にこんな声がはいってきた。
え?ぼくがだれかって??
ぼくの名前は、レン。オルフェオ王国の第三王子だよ!
……だけどね、最近、ぼくの王国は、大変なことになってるんだ。
父上と母上がお金を使いまくって、金庫のお金がスッカラカン、なんだって!!
そのうえ、もうすぐぼくのお兄ちゃんが、国王になっちゃうんだ。兄上ことオルフェオ王国第一王子
ノアは、豚とゴブリンを、足して割ったような体(をしてるように、ぼくには見えてる!)をしてて、
ほんっとにいじわるなんだよ。その最低な王子ノアは、18歳。あと2年で国王になっちゃうんだ!
ぼくは、このままじゃダメだとおもう。ぼくの執事のジェームズも、召使いのアリアも、みーんな
困ってるんだ。
家族が、心配なんだって。ぼくは王子だから、それを助けてあげなきゃいけない。
そこで、思いついたんだ。
ーーノアじゃなくって、カイが王様になればいいんだって!
カイは、ぼくのもう一人のお兄ちゃんで16歳。天才バイオリニストで、すっごいバイオリンが上手なんだ!
カイの音色には優しさがつまってるから、みーんなだいすきなんだよ!カイはいつも演奏をしに
色々なところにいってるけど、今は大きなコンサートの準備で王国に戻ってきてる。
だからぼくは思い切って、この計画をカイに話すことにした。
*
「だからね、カイが王様になったらいいと思うんだけど…。ぼくはまだ10歳だから、幼すぎるんだ。」
カイに計画を話したけど、顔がちょっとこわい。おこってる、のかな?
「カイが、王様になったら、みんな喜ぶ、よ?」
カイはゆっくりと息をはいて、それからぼくの肩に手をのせた。
「レン、僕が国王になるってことは…ノア兄さんを、殺さなきゃいけないかもしれないんだよ…」
そう言って、それから少し悲しそうな顔をした。
「それに、僕はもう、誰かを守る資格なんて……」
でも、ぼくはあきらめるわけにはいかなかった。
「でも、このままじゃ、ノアが王になっちゃうよ!そしたら、どうなるかわかってるでしょ?あの時みたいに…」
カイはまた一段と暗い顔になって、かぶりをふった。
「……わかったよ、レン。少し考えてみる。たしかに、このままじゃダメだと、僕もわかってる
から、さ。」
「ほんと!?ありがとう、カイ!!」
うれしくて笑ったぼく、カイはちょっとだけ笑って、こういった。
「でも、これは僕たちだけの秘密だ。こんなこと、父上や母上に知られたら、最悪…死刑だ。」
「し、死けい?」
思わず、ゴクリとつばをのみこんだ。
「もちろん、ノア兄さんにもバレちゃいけない。わかったね、レン」
「う、うん、わかったよ」
たしかに、これはシークレットミッション、バレたら終わりなんだ…!
「じゃあ、しっかり考えといてね、カイ!」
そういって、ぼくはカイの部屋をあとにした。春の風にのって、後ろからバイオリンの音色が聞こえてきた。
いつもよりもちょっとだけ、切なかった。
*
それから数日後、オルフェオ王国で隣国セルラルドとの交流会が開かれた。
その間にも、ぼくは着々とミッションを進めてた。
ジェームズによると、今のオルフェオ王国は──
ものすごーーーーーーく、やばい!
「あと数年で暴動が起こり、王国は滅びるでしょう」っていってたくらい。
だから交流会を開くお金なんてないはずなんだ!ぼくは交流会中ずっと、会場の金ピカな装飾を
みて、「このお金、どこから出てるんだろう…」って考えてた。
ムムムと眉間にしわを寄せて考えてたから、ノアがドスドス歩いてこっちにきているの、全然気づかなかった。
「おい、レン!レンってば!」
顔を上げた瞬間、そこには豚とゴブリンのハーフがいて、思わず声を上げちゃった。
「うわああぁぁ!!!」
おもいっきりのぞけって、引きっつった顔をすると、ゴブリン──ノアは、
「なんだよ、そんなに驚いて。それよりお前も喋ってこいよ。」
って言ってきた。ノアの接近に気づかなかった自分を責めたい…。
「だれとだよ、ノア?」
苦々しく返したけど、ノアは気づかずニヤニヤ笑って
「決まってんだろ、女だよ。おめぇもそろそろ楽しむべきだと思うんだがなぁ」
なーんて気持ち悪いこと言うから、
「ええ?ノアが?女と?」
とちょっと皮肉混ぜて言い返してやったら、
「ブヒい!おれにはエミリィちゃんもアリウェちゃんもいるんだぞ!」
とブタのように返してた。
向こうで、クスクスと笑う令嬢たち。
どうみても、権力目当てにしかみえないんだけどね。
「ノア、ちょっとシャンパン取ってくるよ」
とにかく逃げたくて言い訳を口にしたら、
「わかったぞ、お前!女がいるオレが羨ましいんだろォ」
なーんて、的外れなことばっかいってる。……そろそろ、このブタにもムカついてきた。
「ブタがなんか言ってるー!」
って言おうか本気で迷っていたそのとき──
パッと、会場の明かりが落ちた。
視線を向けると、スポットライトに照らされて、きらめいている金色の髪が見えた。
カイだ。
軽やかにお辞儀をして、澄んだ声で語りかける。
「皆さま、お集まりいただきありがとうございます。
本日はささやかな余興として、バイオリンを演奏いたします。
どうぞ、ごゆっくりお楽しみください」
その瞬間、あちこちから黄色い悲鳴が飛び交った。
「きゃあっ! カイ様ってば最高ですわ!」
「憂いある瞳に、輝く黄金の髪……まさに、理想の王子様ですわ!」
あれ、さっきノアと一緒に笑ってたご令嬢たちだ。
ノア……。
カイの演奏がはじまり、透き通るようなメロディが、会場を包み込んでいく。
ふと、カイがこちらを見て──ウインクした、ような気がした。
…もしかして、さっきノアに絡まれてたの見てて、助けてくれたのかな?
やっぱりカイは、優しい。
やっぱりノアじゃなくて……カイが王様になるべきなんだよ。
そうを思いながら、ぼくはノアに見つからないように、そっと会場を抜け出した──。
レン: ノア兄さんを主役にした外伝出したいなぁ…タイトルは『ブヒィ!〜孤独の王子飯〜』