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6話 剣戟

 

 俺が『ブロファン』の世界に転生して、早6年が経ち、俺は12歳になった。

 最愛の義妹であるクロエを闇堕ちから防ぎ、バッドエンドから救うために、今日も日課である剣の訓練をしている。



「半歩遅いですよ。もっと足捌きを滑らかに」

「そっ、んなこと……言われて……も!!」


「ほら、隙だらけですよ」


 俺の鳩尾に木剣が突き刺さる。


「ぐっ……!? がはっ!」


 痛みで呼吸が止まってしまい、俺は思わずその場に座り込んでしまう。


「……3分丁度ですか。昨日よりはもちましたね。今日はここまでにしておきましょう」


「お……まえ、もうちょっと、こう……手心は加えられないのかね? 一応、俺、ユーリの主人だよ?」


「手心? もう十分に加えてますよ。私が本気で打ち込んでたら、リオン様は今頃真っ二つです」


「木剣なのに!?」


「むしろ、なんでリオン様はそれくらいのことができないのですか?」


「なんで木剣で胴体を切断するのができて突然だと思っているのですかね、この人は!?」


「……無能が」


「俺、あなたの、主人!! 雇い主!! 暴言が酷すぎてびっくりするわ!!」


「ちっ……すいませんでした、リオン様」

「舌打ちされて謝られてもなぁー……」


 さっきからの傍若無人ぶりを発揮しているのは、俺の専属メイドのユーリという女性だ。

 三年前から雇っていて、年齢は確か俺の5つ上の18歳だったはず。


 主人であり、三大貴族の後継者である俺に対してこの態度……普通だったらクビどころか投獄すらもありえる。

 だけど、ユーリに対してはそれが当てはまらない。


 なぜなら、この女は……強いからだ。


 本業であるメイド業は優秀だが、それ以上に剣術、体術、槍術、弓術……武芸百班を極めている。


 そして、ユーリは俺の護衛兼武術の師匠でもある。


 そのため、俺は多少の無礼は許しているんだけど……いくらなんでも無礼が過ぎませんかね!?


「安心してください。こんな態度、リオン様と二人きりの時しかしませんよ」


 そーなんだよ、こいつ。

 要領がいい上,俺にだけ当たりが強すぎるんだよ!


 くそっ……いつか絶対超えてやる!


「それはそうと、来週は城でハルジオン王国の第一王女のお披露目会兼誕生パーティーですが、リオン様とクロエ様も参加されますよね?」


 ハルジオン王国には二人の王女と王子がいる。


『レイティルシア•ハルジオン』と『ライジーク•ハルジオン』


 そして、この国には昔からのしきたりがある。

 それは、十二歳になるまで公の場に姿を現さないといったものだ。


 だから、三大貴族の後継者である俺も、二人の王族の姿を直接は見たことはない。

 ただ、レイティルシアとライジークは美男美女の兄弟でとても仲がよく、互いに優秀……くらいの噂は流れている。


 ……まあ、ライジークは確かにイケメンで優秀なやつだけどな。


 なぜ姿を見たことがない俺がライジークのことを知っているのかというと……実はこのライジークは『ブロファン』の攻略キャラの一人だからだ!


 見た目よし、性格よし、家柄よし、性能よしの四拍子そろった、人気キャラだった。


 ちなみに、俺はこいつが嫌いだ。

 ……なぜなら、ゲーム内でクロエがライジークに惚れていたからな!


 万が一、今のクロエがライジークと出会って恋人関係にでもなった時には……自分で自分が何をするかわからない。


 まあ、今回のパーティーはライジークの姉であるレイティルシアのためのものだから遭遇することはないだろうけど……できれば連れて行きたくはない。


 それに俺自身、パーティーみたいな堅苦しい場所は好きじゃないから、こういうパーティーは極力参加しないできた。


 ……だけど


「父上から、俺とクロエも参加するようきつく言われたから、今回は参加するよ」


 見栄を何より気にする人だからな。

 家族総出で王族を祝うといった姿勢を貫きたいんだろう。


「かしこまりました。それではお二人の準備を進めておきますね」

「ああ、頼むよ」



 ちなみにレイティルシアの方は『ブロファン』のゲームには名前しか登場していない。

 確か、他国に留学しているって設定だったかな?


 まあ、イケメンのライジークの姉だし、噂どおり綺麗な人なんだろうなー。

 クロエより可愛くて綺麗で素晴らしい女の子は存在しないだろうけどね!


 それに、レイティルシアはゲームの舞台である『ハルジオン学園』には入学しないし、俺とはそこまで関わることもないだろう。


 俺にとって、そんな王族のパーティーより、今夜のとある用事の方が重要だ!


 ユーリや屋敷の使用人にバレないように、うまく屋敷を抜け出さないとな!!


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


(レイティルシアside)



「王女様ー!? レイティルシア王女様ー!! どこにいらっしゃいますか!?」

「くそっ、最近は大人しかったから油断した!」

「姫様ー! どこですかーっ!」


 ……ちっ、もうバレたか。

 家臣たちがアタシが部屋を抜け出したのに気づき騒ぎ始める。


 だけど、ここまでくればもう大丈夫。


 家臣に見つかることなく、城の外に出ることに成功する。


 来週でアタシは十二歳になり、社交界の場でもアタシの顔が広まってしまう。

 そうなったら、流石にこうして自由に城を抜け出すこともできなくなってしまう。


 だから、今日くらいは許してくれ、家臣たち!!



「さぁ、今日はどこへでかけようか!!」


 城下街にはこの前行ったし、貴族街はいけすかない。


 それに今日はこんなに綺麗な満月の夜だ。

 もっと月明かりが差すところに行ってみたい。


「そうだ! あそこなら……」


 アタシが思いついたのは、城の裏山だ。

 そこには綺麗な湖があるから、月が反射してきっと綺麗だろう。


 思いついたなら、即行動!


 アタシは裏山に向かって走り出すことにした。

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