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5話 義父


『ラミリア•ガーネット』


俺が転生する前にやっていたゲーム……『ブロッサムファンタジー』で主人公の親友ポジションだった少女。


貴族の身ながら身分を気にせず、誰とでも分け隔てなく接する優しい性格。

ゲーム内では、転校生だった主人公に最初に話しかけ、その後も主人公の相談に乗ったり、時には共に戦い、そして主人公とは親友になっていく。


戦闘面では近接戦闘は苦手だが、その分補助魔法を得意としており、サポーターとして重宝していた。


そんな彼女と、まさかここで出会うなんて想像もしていなかった。



しかも、ゲーム内では敵対していたクロエと友達になるなんて……訳がわからないよ!


ラミリアと出会って早1ヶ月ほどが経過した。

最初は喧嘩していた二人だったけど、今ではすっかり打ち解け親友と呼んでも差し支えないほど仲がよくなっている。



ゲームでは敵対していた二人だっただけに、この関係を見れて嬉しいと思う反面、この先の展開がさらに読めなくなっていった。


現在、俺とクロエの関係は良好だし、クロエがゲームのルート通りに闇落ちするとは思えないけど、この先に何があるか全く分からない。


だからこそ、ありとあらゆる状況に備えて準備を進める必要がある。

全く……お兄さまは大変だぜ!


「失礼します、リオン様。旦那様がお呼びです」

「……うん、分かった。すぐに向かうよ」


部屋で勉強をしていたら、義父付きのメイドに呼ばれる。

……あぁ、面倒くさい。


だけど、呼び出しを無視すると更に面倒なことになるから行かないとなぁ……。


呼び出しの理由は大体予想がつくけど、あの人に一々説明をすることを考えるだけで億劫になる。


俺は重い足をあげて、義父の部屋を向かう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「失礼します」

「……入れ」


義父の部屋をノックして声をかけると、部屋に入るよう指示をされる。


部屋に入ると、一週間ぶりに義父と対面する。


この人の名は『ディオルガ•ホワイトローズ』。

ハルジオン王国の三代貴族のひとつ、ホワイトローズ家の現当主で俺とクロエの父にあたる人物だ。


「お久しぶりです、父上。今日の要件はなんでしょうか?」

「お前なら一々聞かずとも要件は分かっているだろ? ガーネット家のことだ」


……やっぱりか。

このタイミングでの呼び出しだし、ラミリア関連のことなのは予想はついていた。


どうせ、内偵調査か風の噂で、俺たちがラミリアと懇意にしていると聞いたのだろう。


「なぜホワイトローズ家の後継者が、わざわざ弱小貴族の令嬢と交友を持つ必要があるのか、説明をしろ」


友達を作るのに理由は必要なのか?……と言っても、この人には通用しないだろう。

この人が常に見ているのは家柄と利益だけだ。


かといって、この人が納得しないことで、ラミリアとの関係を断てと言われるのも困る。

……せっかくクロエに友達ができたんだ。

こんなことで二人を引き離す訳にはいかない。


「ガーネット家自体にはそれほどの権力や後ろ盾はありません。しかし、ガーネット家の領土には希少な鉱石が眠る鉱脈があります。今のうちに関係を築いておいて損はないかと」


「……なに? そんな情報は入っておらぬが……」


「独自のルートから調べた情報ですので、おそらくですが、ガーネット家自体もその鉱脈の存在を認識していません。情報自体が出回るのも数年は後だと思われます」


「……そんな情報を私に信じろと? 情報源は?」


「それは秘密です」


異世界転生する前の情報です……と言っても信用されないだろう。

むしろ俺の頭がおかしくなったと病院に連れられかねない。


ちなみにこの情報自体は、ゲーム内のサブクエスト内で判明する事実でもある。


「信じるか信じないかは父上にお任せします」


「ふむ……まあ、いい。ガーネット家の件はお前に任せる」


「かしこまりました」


「……全く、こんな情報をどこから仕入れてくるのやら。実績が無ければ信じれん話だ」


ディオルガからの信頼を得るために、ホワイトローズ家にとって利益が出る情報をこれまでにいくつか伝えておいて正解だったな。


「それと、最近のアレはどうだ?」


『アレ』……だと?

ディオルガが『アレ』と呼ぶ人物は一人しかいない。


「……問題ないかと。誰にでも優しく、様々な才に溢れ、最近は俺と一緒に剣や魔法の修練にも付き合っていますよ」


「そうか。アレの管理はお前に一任しているからな。精々、政略結婚の道具として育ててくれ」


「……かしこまりました。それではそろそろ修練の時間なので失礼します」


多分、これ以上ここにいたらこの人を怒りで殺してしまいそうだ。


俺はすぐにディオルガの部屋を後にする。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


(はらわた)が煮えくりかえる!!」


俺は屋敷の裏にある修練場で思わず大声をあげる。

よくここまで、怒りを堪えることができたと自分で自分を褒めてやりたいくらいだ。


「何が『アレ』だ!! あの子の名前はクロエだ! 自分の娘の名前くらいちゃんと呼んでやれ!!」


管理?

政略結婚の道具?


ふざけるな!!

クロエはお前の出世のための道具じゃない!!


ディオルガがクロエのことを嫌っていて、酷い扱いをするのにも理由があるのは知っている。


ディオルガは愛妻家だったが、クロエが産まれる際に自分の妻を亡くしてしまった。

その結果、妻の死因を作ったクロエのことを愛せなくなった……というのは設定集にもかかれていた。


自分の愛する人を失う悲しみは理解できる。

……でも、その負の感情を他人にぶつけるのはダメだ。


クロエに対する数々の暴言に暴挙。

俺はディオルガを絶対に許さない。


俺が『ホワイトローズ家』の家督を継いで最初の仕事は既に決めている。

それは……ディオルガの追放だ!


処刑されないだけ、感謝してもらいたいくらいだ。


「……さて、そろそろするか」


モヤモヤの発散も兼ねて、俺は魔法の修行を始めることにする。


いくら俺が養子といっても、有能であり続けなければ家督は引き継がせてもらえないだろう。


三代貴族の養子に引き取られるだけあって、このリオンの能力は極めて高い。


だけど、そこで満足せずに修練を続けて、誰からも認められるほどの能力を身につけないとな。


それに、俺には前世での『ブロファン』の知識もある。

少しずるい気もするが、ちょっとしたチートまがいの行為で能力を上昇することもできるのは大きなアドバンテージだ。


「まあ、今はとにかく基礎能力の向上だな」


魔法の修行の後は剣の修行もしないとだし、その後は勉強もしないとだ。

それに、クロエが万が一……いや、億が一でも追放された時のための対策も考えないと。


「全く……お兄さまは大変だぜ!!」

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