【4】
「…はあ」
帰宅すると、早速ベッドに横になった。部屋着には着替えず、そのまま目を閉じる。
「終わった…」
今日1日がものすごく長く感じた。皆、ぎこちなかったのをひかりは思い出し、ははっと笑う。死のうとしたくせに会社まで行くのだから、自分も根性あるものである。
「何も食べたくない」
食欲がなかった。お風呂に入るのさえ、面倒くさかった。
ーこのまま眠るか。
ひかりは息を大きくだすと、枕に顔を埋めたのだった。
しかし眠っても、ひかりはリラックスできなかった。良い夢を見るつもりが、どうしても修二との思い出がよみがえってくる。一緒に笑ったり、デートしたことや、ドライブをしたことが鮮明に浮かんでくる。
ーどうして。もう嫌。
自分が自分で自分嫌いになる。消そうとしても次々と溢れてくる。
ー何よ、もういいでしょ。
嫌気が指し始めた頃、幻の修二が両頬に触れてきた。あ、キスだと思った瞬間、真っ暗になった。
「…は」
飛び起きると、部屋は真っ暗だった。ひかりは泣き出す。夢を鮮明に覚えているのだった。
「うえーん」
子どものように感情のままに泣き出す。持った枕を何度も叩き、ストレスを発散しようとする。失恋は辛かった。今まで経験してきたが、修二は特にお気に入りだったので、最悪の気分だった。
ー何で思い出すのよ。
修二の気配や手の触れ方、あと、彼が残していった歯ブラシなど未練がある。しかし、現実は残酷で、もう終わったことだった。修二は二度と来ないし、ひかりも会う気は無かった。
ーこんなことで負けてたまるか。
女は強いものだと、修二に見せつけてやるつもりだった。スマホの電話番号を消し、前向きに生きようと覚悟を決める。寂しさは引きずっているが、ひかりはもう後ろを見るのを止めることにした。自分が惨めになるだけである。
「私は強いのよ」
両手を拳にし、あげると強く宣言する。
「イケメンをゲットしてやる!!」
それが修二に対する復讐だった。ひかりは両頬を叩くと、部屋のあかりをつけたのだった。