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どうぶつたちのキャンプ  作者: 葵むらさき


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第79話

「おお」シャチは感動の声を挙げたのち、急ぎ来た途を泳ぎ戻っていった。仲間たちと協議するためだ。

 レイヴンの気持ちと考えは、彼に大きな感動と感謝を抱かせたようだったが、それでもこの『危険な任務』を、双葉の近くにいるというだけでモサヒーに任せてよいものか、モサヒーに掛かる危険の種類と度合、もしそれでも実行を依頼するならばどのようにしてかその方法と作戦など、大至急会議する必要があるとの事だ。

 レイヴンはシャチの説明を聞きながら自らをクールダウンさせることができ、彼が去って行った後は再び北を目指し始めたのだった。

「大丈夫ー?」そして一旦逃げ去ったハシナガイルカも、ある意味何食わぬ顔で舞い戻って来た。「ごめんごめんー」

「あ、お帰りなさい」レイヴンは驚きながら迎えた。「ご無事でしたか」

「いやー、それはこっちの科白だよー」ハシナガイルカは笑った。「てっきりレイヴンたちも空へ逃げると思ったんだけど、普通にシャチと話してるからびっくりして見てたー」

「あ、ああ」レイヴンは苦笑した。「シャチさんは双葉と闘う作戦についての話をしに来てくれたんです……後でまた来る、と仰ってはいましたが」

「えっ、そうなのー?」ハシナガイルカは身をすくませる。

「あ、でもちゃんとぼくから、ハシナガイルカさんがぼくらの道案内をしてくれていると伝えますから、襲われることはないでしょう」レイヴンは慌てて補足した。「大丈夫です」

「そうかなー」ハシナガイルカはそれでも不安そうだった。「代わりに自分が道案内するからこいつを食わせろとか言い出したりしないかなー」

「あははは」出し抜けにオリュクスが笑った。「それ、まるでさっきのシュモクザメみたいだね」

「う」レイヴンにも先ほどの苦い思い出が蘇り、中枢帯に一瞬痛みが走る。

「シュモクザメかあ」コスも発言する。「そういえば、シャチとシュモクザメが闘ったらどっちが勝つと思う?」

「シャチだと思う」オリュクスが答え、

「シャチさんじゃない?」キオスが答え、

「断然シャチだねー」ハシナガイルカまでが答える。

「やっぱりそうかあ」コスが笑う。

「ははは」レイヴンは搾り取ったような笑い声を挙げた。「じゃあ、まあ、行こうか」


          ◇◆◇


「それは駄目だろう」シャチの一頭は真っ向から反対した。「危険過ぎる」

「しかし一考には値する」別のシャチは前向きに捉える。「せっかくの進言だ」

「しかしそのモサヒーという者は、双葉と結婚しているのだろう」また別の一頭が意見する。「妻に対して抗生物質を投げろと頼むのか」

「我々にそんなことは言えぬだろう」

「そうだ、残酷にも程がある」

「しかしそれでは何故レイヴンは、モサヒーに頼んでみるなどと言い出したのか?」

「モサヒーはレイヴンの親友なのに」

「どうしてそんなひどいことを?」

「レイヴンというのは、頭がおかしいのか?」

「いや、決してそのようなことはない」

「ああ。彼は至極まともで真面目で、思慮のある生物だ」

「では何故?」

「きっと何か考えがあるはずだ」

「レイヴンは何を考えている?」

「彼を我々のこの会議に参加させるべきなのでは?」

「しかし彼は北へ向かっている」

「そう、仲間を捜すために」

「であれば」

「どうするか」

「我々の方から、赴いてみるか」

「しかし大勢で移動すると、双葉に感づかれるのでは」

「むう」

 シャチたちの会議はなかなか結論まで辿り着くことができずにいた。


          ◇◆◇


「モサヒー、返事をしないで聞いてくれ」

 突如、レイヴンからそんな呼びかけが届いた。モサヒーは一瞬立ち止まりそうになるが、すぐにレイヴンの言葉の意味を理解し浮揚推進を続けた。

「ぼくと通信していることがコードセムーさんに気づかれるまで多分、地球時間で一分ていどかかるんじゃないかと思う。だからこれから何回か、ごく短時間だけぼくの方から一方的に、君に話しかけるよ。返事は不要だ。じゃ、また後で」

 そして実際、話はそれで終わった。

 第一回目の話は。

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