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第22話

 ミーアキャットたちは食事をしていた。

 子どもたちはもうお腹いっぱいになったようで、じゃれつき合って遊んでいる。

 群れの大人たちは順番に、食事を取る班、子どもたちを見守る班、そして外敵の接近を見張る班に分かれ行動している。


 キイイイ──


 突然、見張り役のミーアキャットの要警戒アラート声が響いた。

「子どもたち、巣に入りなさい」大人たちはただちに食事をやめ小さい者を導く。

「怖いよ」

「大丈夫」

「兄ちゃんについて行くんだ」

 子どもたちを避難させた後、数匹の大人たちは近づいて来る者の正体を見極めるため巣の入り口付近に集まり警戒態勢を取った。

 やって来たのは、猛禽類だった。大きく翼を広げ、大気に乗り滑空してくる。

「チュウヒワシか」ミーアキャット達は尻尾を垂直に高く立てた。「追い払うぞ」

「まあ待て待て、お前ら」チュウヒワシは上空から声をかけてきた。「今日はお前らに、大事な情報を持って来てやったんだよ」

「──」ミーアキャット達はすぐに反応をせず、警戒を解かなかった。

「タイム・クルセイダーズが来てるぞ」チュウヒワシは構わずそう告げた。

「──」ミーアキャット達の態勢は維持されたままだが、彼らの瞳は少しだけ揺らいだ。

「北の方で今、ゲラダヒヒが狙われてる」チュウヒワシは見てきたことをそのまま正確に伝えている様子だった。「その後、こっちまで来るかも知れん」

「わかった」ミーアキャット達は一斉に頷いた。「ありがとう」「報告に感謝する」

「んじゃ、謝礼に一個食わせろ」チュウヒワシはするりと降下して爪を地上に向けた。

「そうは行くか」ミーアキャット達は一斉に尾を高く立て直し、うなり声を挙げた。「とっとと帰れ」

「俺腹減ってんのよ」チュウヒワシは爪先を引っ込めつつも食い下がった。「一個くれよ」

「うるさい。帰れ」ミーアキャット達は威嚇を止めない。

「あの、こんにちは」その時レイヴンが彼らに声をかけた。「お取込み中恐れ入ります」

「わっ」「何だ」「びっくりした」ミーアキャット達は叫んで大きく飛び退った。

「誰だお前」チュウヒワシが爪を引っ込めながら鋭く訊いた。

「あ、すいません。ぼくたち仲間を探していて」レイヴンはチュウヒワシとミーアキャット達のちょうど中間位の高さに浮揚しながら説明した。「この辺で、今まで見たこともないような変わった動物を見ませんでしたか」

「お前」チュウヒワシが再び鋭く訊いた。「タイム・クルセイダーズの仲間か?」

「えっ」レイヴンは驚いた。「いいえ、違います。皆さんそのようにおっしゃいますが、ぼくはタイム・クルセイダーズではありません。まったく無関係の者です」

「そうか? けど、似てるよな」チュウヒワシはばさりと羽ばたきながら首を傾げた。

「本当か」ミーアキャット達も戦慄の声を挙げる。「タイム・クルセイダーズってこんな感じの奴なのか」

「ああ。こんな感じの、小っせえ奴だ」チュウヒワシも答える。

「いえいえ、まったく違います」レイヴンは必死に叫んだ。「ぼくは彼らとはまったく関係がなく、ただ仲間を探しているだけなんです」

「──」

「──」チュウヒワシもミーアキャット達も、対応に迷っているのか返事をしなくなった。

「ええと」レイヴンもまた困り果ててしまった。「突然話しかけてすみません。決してあなた方に危害はくわえませんので、そこはご安心くだ」

「あ」その時チュウヒワシがすっと視線を離れた所に逸らした。

「ん」「あ」続けてミーアキャット達もそちらを向いた。

「え」レイヴンはきょとんとしたがやはり同じ方向を向いた。

「あ」そこに見つけられた者もこちらを見た。

 ケープコブラだ。

「お、うまそう」チュウヒワシの態勢が直ちに定まる。

「これは」「おう」「いいな」ミーアキャット達もすぐに態勢を整える。

「え」唯一レイヴンだけが戸惑いに揺らめき続けていた。

「何、ちょっと」ケープコブラは大至急の体で上体のケープを大きく広げ叫んだ。

 が、チュウヒワシとミーアキャット達は構わず一斉に獲物を追い始めた。

「レイヴン、行こう」コスが収容籠から呼ぶ。

「ここでも、マルティは見つからなかったね」キオスも残念そうに言う。

「うわ、すごい。見てよあれ。すごい攻防だ」オリュクスが興奮したように叫ぶ。

「──」レイヴンは何度目の徒労になるのか数えることもやめ、当ての無い浮揚推進の途につくのだった。

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