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神々の契約  作者: ルマ
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第0話 Opening

初めましての方は初めまして、前作をご存じのお方は御機嫌よう!

作者のルマです。よろしくお願いします。


今回の舞台は仮想日本!時代は現代です。

和風ファンタジーを流行らせたい……!一時「和風ファンタジーは流行り難い」みたいな記事を拝見しました。確かになろう系では少ない気がする…。

和風ってどこまで書けば和風なのかしら…。

戦闘系和風ファンタジーってある気もするんですけどね?


 

 月影団(げつえいだん)……それは神と契約した者たち。

 彼らは(カラス)と呼ばれる者たちと永きに渡り戦い続けてきた。



 これから語られるのは、そんな月影団に所属する一人の少年が自分の運命に抗い戦う、そんな物語。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

 【現代日本】4月


 「ねぇ、聞いた?あの()()()()()()!」

 「えぇ、聞いたわ。また一人いなくなったんでしょう?」

 「そうよ、あの終電の後に来る()()()()の話よ!」


 二人の女がカフェの窓辺で顔を突き合わせながら小さな声でコソコソと話をしている。

 

 「終電が過ぎたのに、もう一本電車がやってくる。その電車に乗った人は帰ってこないって……。」

 「あれ本当の話なのかしら?でも、あそこの電車……この前事故があった場所だし、呪われてるのかも。」

 「もうすぐあの駅自体も無くなるって話でしょう?」


 一つの駅で、夜な夜な起こる怪奇事件……。

 今や地元ではその話題で持ちきりであった。




 「なぁ、本当に行くのか?」

 「何言ってるんすか先輩!!俺たちがいかなきゃ誰が行くんすか?」

 「わ……わかってるよ!!ただ、その……武者震いさ!」


 話題の駅に警官が二人立ち入っていた。

 二人は先輩後輩の間柄で、今回の『終電後の電車事件』の調査に駆り出された二人だった。


 空には三日月……つい先ほど終電の電車が去っていった。

 ここの駅は無人駅。地元でも乗り降りする人は稀な駅だった。


 「どうせ、ただの噂っす。ここで乗り降りする人なんて少ないし、そもそも終電を逃して乗るなんて、どう考えてもおかしいっすから。」

 「でも、確かに行方不明なんだぜ?ったく……酔ってどこかに行っただけなんじゃねぇのか……?誰もそもそもこんなところになんて…ぎゃぁ!!!」


 ドカっ……!あまりの恐怖で腰を抜かして転び、頭を守るように蹲った。

 頭の上でバタバタ飛ぶコウモリ。


 「先輩、それ、コウモリっす。」

 「うゎあ…あ……わ、わかってた!分かってた!こんな姿誰にも言うんじゃねぇぞ?!」

 「ハイハイ……。うぁ!本当に電車が来たっ?!!」

 

 パァー。

 電車の音が聞こえ二人はあわてて線路を見た。

 すると、電車が来ているではないか……!!

 

 「本当に電車が来たぞ……?」

 「っすね……。」

 「乗らねぇからな。」

 「え?じゃあ、どうやって調べるんスか?」

 「そりゃあ、写真を撮ったりだな……」


 プシュー……と音を立て、扉が開いた。

 中には人が倒れているのが見える。


 「人が!!」

 「おい、馬鹿!だめだ入るな!何かおかしいぞ!!」


 先輩の制止の声も聞かずに後輩警官が中に入り込んでしまった。

 発車のメロディーが流れる。車掌のアナウンスはない。

 何かがおかしい。

 いや、おかしいのは当たり前だ。

 何と言ったって、()()()()()()()()()()()()()()()()なのだから、おかしくないわけがない。


 プシュー……音が鳴り扉が閉まりそうだ。


 「おい!早く降りてこい!!急げ!!」

 「先輩……なんか、動けな…」

 「おい?……おいダメだ行くな!!」


 慌てて扉に警棒を挟むが無駄だった、扉が閉まる。

 やばい…!

 だが、腰が抜けてたせいで、立つことができない。

 後輩が……!誰か……!!いや、俺が警官なんだけどさ!!


 ガシャンッ!!!

 「よっ…と。」

 「?!」


 後ろから少年が走り込んできて、その電車の横に張り付いたかと思うと、窓を両足で割った。

 あまりの出来事に声も出ない。

 そのまま少年は電車内に入り込み、いつの間にか倒れている後輩に声をかけた。

 

 「大丈夫か?今、助けてやるからな。」


 金髪で短い癖髪。

 蜂蜜色の瞳に軽やかな口調…。

 

 地元の不良少年か?!


 『おい、油を売ってないで急げ。片づけるぞ。』

 「わーってる!」


 ――今、誰と会話したんだ……?


 よく見れば狐の面を斜めに被っている。

 その仮面が淡く黄色に光っては声を発しているようだ。

 まるで御伽噺か何かのようなこの状況に目を丸くしかできない。

 

 ついに電車が発車する。

 慌てて先輩警官もその割れた窓から乗り込んだ。

 不思議と少年が来たことで恐怖が和らいだようだ。

 扉はもう閉まっていて、窓からしか入ることができなかった。


 「おい、おっさん!な~に入り込んでるんだよ!あぶねぇぞ?」

 「後輩を置いて逃げることはできない!むしろ少年、君の方が危険だぞ!」

 「マジかよ~……。おっさん、これは普通の電車じゃねぇんだぞ?これは、()()()()でも、()()()だ。このままだとあんた、死ぬぜ?」

 「堕神器(おちじんぎ)……?なんだそれは。とにかく、俺は警官としてだな、君を…あ…れ?体が…おも…。」

 

 だんだんと重くなる体、何かに縛られたかのように動けない。

 金縛りのようだ。

 何が起きているのか分からず狼狽するしかない。


 「ほらな。ったく、世話が焼けるおっさんだぜ。ほらっ…よっ!」

 「うお…!あ、体が軽く…?」


 少年が警官の方に触れると、体が一気に動けるようになった。

 札を貼られたようだと、気が付いた。


 「札…?」

 「それ取るなよおっさん。俺御手製の札だから!俺の()()すげぇから、札も作れるんだ。」

 「へ、へぇー……?」

 

 ふと少年の方を見ると、少年はどうやら無事のようで、狐の面をいつの間にか被っていた。

 着ていたパーカーはそのままに、いつの間にか手にかぎ爪のような武器を握りこんでいる。


 だが、驚くべきところは別の場所にある。

 姿が何やらいろいろと変わっているのだ。

 耳や尻尾が生え、まるで狐人間のようだ。


 ふわふわな尻尾一本。先は淡く黄色く光っていて揺らめいていて、黄金の狐の尻尾のようだ。

 耳は高い位置にあり、元の耳はどうやらなくなっているらしい。

 手に握りこんでいるそのかぎ爪は銀色で、鋭利だ。 


 ――え?コスプレ……?ってかめっちゃモコモコじゃん?!


 「この電車、たぶん元は玩具か何かだったな。」

 「え、玩具?でも走ってるぞ?」

 

 その姿よりも気になったのはその発言だった。

 少年は気にもしないかのように肩を回して、辺りをキョロキョロと見る。

 

 「あぁ、八百万の神って知ってるか?大切にされたものや長い年月生きたやつは神になる。そういうやつは『()()』って言わるんだ。まぁ、他にも神が造ったモノや、祝福を授けたものも神器になるけどな。ま、そういうやつは少ないわな。」

 『おい、話逸れてるぞ!』

 「おっと、悪りぃ悪りぃ!話が脱線したな。これがその神器ってやつよ。」

 

 長年大切にされたものには神が宿る……。

 どこかで聞いたことがあるような話だ。それが神器って呼ばれているとは知らなかったけど……。


 「神器…それってすごいのか?」


 少年は雰囲気だけで笑うと、仮面をコツんと叩いた。

 「あぁ、すげぇんだ。契約した奴はそれを使うことができるんだ。まぁ、条件が付くけどな。魔法みたいな技使えるようになるんだぜ?その力を利用して、人の為になることをするってわけ!『相性レベル』を上げると、どんどんとその神器の力を引き出せるようになるんだ!俺は『一体化レベル』だぜ!」


 自分の胸を広げて、じゃーん!と見せてくる。

 どうやら彼が使っている狐仮面と少年は『相性レベル』とやらがなかなかに高いらしい。

 一体化しているから姿が違うんだろうか……?

 一体化以外には何があるのか分からないが、どうやら一体化がすごいのは彼の態度でなんとなく分かった。

 

 「人の為になることをするんだろう?じゃあ、なんで人を誘拐だなんて……。」

 「ん?それはな、これが今『堕ちている』からだよ。人の悪意や負の感情を浴び続ける……または、()()()に酷いことをさせられ続けると()()()()()んだよなぁ……これがさ。普通はそのまま壊れちゃんだけど……『(カラス)』っていう連中が壊れる寸前で暴走させてるんだ。」

 

 声音が少しだけ悲しそうな色を含んだ。

 

 ――壊れる寸前で暴走させている……?


 「なんでそんなことするんだ。」

 「さぁな。そんなのそいつらに聞かねぇとわかんねぇよ。さ、さっさと終わらせるかね。」

 

 カツカツと歩き出した少年の後を追おうと思ったが、近くに倒れこんでいる後輩を放ってはおけずに、その場を動けなかった。

 周りには倒れている人たちが少なくとも三人いる。

 行方不明者は四人……、一人足りない。


 歩いていく少年に声をかける。

 「なぁ、どこに行くんだ?!」

 「これを動かしてる契約者に会いに行くのさ!」

 「え?」

 どこにいるのか分かるのか、そう聞く前に、少年は走り出してしまった。

 向かう先は先頭車両のようだ。

 「はやっ?!!」

 走ると黄色い一本の線のように見える。

 狐のように軽やかに走り行く姿は現実感がない。

 「どうなってるんだ…?」



 ガコンガコン!!!

 大きく揺れたと思うと、少年が戻ってきた。

 少年の後ろから車掌の格好をしている子供がドタドタと気味が悪い動きで走って来る。

 「な、なんだ?!」


 どうやら戦闘をしているらしい。

 ガキンッ!ガキン!!と重たい金属の音が鳴る。

 子供の車掌は鉄パイプのようなものを握っている。

 どうやら電車のどこかの部品らしい。取っていいのだろうかソレ?


 狐の少年はふわりと重力を感じない動きで、軽やかにその攻撃をすべて避け切る。

 少年が人差し指と中指を合わせて立て、自分の胸前に添えると『印』と叫んだ。

 

 ババババッ………!!!

 淡く黄色に光る紙の札が順番に少年の周りに現れると、一枚の札を子供の車掌に投げつけた。

 それを追うように他の紙の札も追いかけ、そのまま子供を捕縛した。

 車掌の帽子が落ちると、その子供の顔が見えた。

 

 「ひっ…!!」


 子供の額には大きな黒い石がハマり込み、ドクドクと周りが鼓動するかのように脈打っている。

 目は白目を剥いており、口からは涎が垂れている。

 

 異常なその姿に、恐怖が沸く。

 捕まってもなお、その子供は攻撃しようと動く。


 「があ゛ぁ゛ぁぁあ゛!!」


 叫び声は獣のようだ。喉からしゃがれた様な声しか出ていない。

 それでも狐の少年は慣れた様に、『雷撃』と静かに言った。

 

 捕らえられ、抵抗しようと蠢いていた子供の体に雷が走る。

 シュー……と煙が上がると、その子供は目を閉じ、動きを止めていた。

 狐の少年は額に埋まっているその禍々しい黒い石をかぎ爪で抉り抜く。

 それを床に落とすと、バキッと靴で踏みつけ、割ってしまった。


 「終わったのか?」

 「あぁ、終わったよ。悪かったな、巻き込んで。」

 「その子供がお前の言った、『鴉』っていう奴なのか?」

 

 子供を見れば、涙を流してただ穏やかに眠っているだけの無垢な子供に見える。

 「いいや、この子は烏の連中に負の感情を利用されただけだ。時期に目が覚めるさ。」


 振り返った少年の顔を見て警官はぎょっとした。


 「何で泣いてるんだ?怪我でもしたのか?救急車を…」

 「いや、いいんだ。」

 

 狐の少年はなぜだか、涙を流していた。仮面を被っているから分かりづらかったが、仮面の下から顎を伝って落ちていくその透明な雫は涙だと思う。

 何故泣いているのか…?怪我でもしているのか?

 そう聞いたが、少年は首を振った。


 「この黒い石…呪石(じゅせき)っていうんだけど、これを壊すと、その人物の記憶を少し見るんだよ。それで、涙が出ただけ。怪我はないし、大丈夫。」

 「そう…なのか。じゃあこの後、署ま…で…あれ?なんだか眠く…。」


 いきなり襲ってきた睡魔に勝てず、警官は意識を失った。


 


 もう一度目を覚ますとそこに少年はいなかった。


 「先輩!先輩!!あぁ、よかった!」

 「お前、無事で…。少年は?狐の面を被った少年はどこに?」

 「え?そんな少年はいませんでした。ただ、行方不明者全員、駅で倒れていて…。先輩、俺が昨日見たのは夢だったんでしょうか?あの電車は一体…。」

 

 あたりを見れば、電車内で倒れていた三人と、あの車掌だった子供が倒れていた。

 

 


 その様子を遠くから見ていた少年がいた。

 『やっぱり電車の玩具だったなぁ。どんな記憶を見たんだ?』

 狐の面が少年に尋ねる。

 

 「うん、あの駅でお父さんを亡くしているらしい。

 お父さんは線路に落ちた老人を助けようとして…だけど周りは誰も助けてくれなかったらしい。それが悔しくてその日に見て見ぬ振りをした人たちを誘拐して、線路に突き落とそうとしていたらしい。」

 『へぇ~…つまりは線路において、轢き殺そうって考えてた訳か!じゃあ、間に合ってよかったな。まだ誰も線路に落ちてないしな。』


 駅を見ていると、子供が目を覚まして泣いている。手元には壊れた電車の玩具が握りこまれていた。

 よかった、()()()()()はないようだ。


 「リバウンドなしでよかった。」

 『まぁな。堕神神器はリバウンドなしで使えるのが特徴だからなぁ。ま、普通は契約者は神器を使ったリバウンドを受けるはずなんだけどな。しっかし、鴉の連中よく上手くやるぜ。壊れる寸前で暴走させるなんざ、本当に器用な奴ら。』

 「そんな連中だとわかってるなら褒めるなよ。」

 『褒めてないやい!感心しただけだ!』


 拗ねた様に言う相棒に、肩をすくめて見せた。

 電車の玩具はひびが入っていて、壊れてしまったらしい。

 子供の泣き声がいっそう酷くなった。

 

 『あーあ。壊れちまったぜ。だから嫌なんだこんな場面を見るなんぞ。』

 嫌そうに言いながらも、同情しているようだ。

 壊れてしまった神器に無理やり成ったあの電車の玩具に同情しているのか、あの子供に同情しているのかは分からないけれど、神器というのは生来人のことが好きだ。

 好きで好きで……最後はその黒い感情にすら同情し、飲み込まれ堕ちる。そして最後は壊れてしまうのだ。


 その子供を見ながら、俺も悲しい気持ちになった。


 「電車が好きだったんだって。あの子供が生まれたときに買った玩具らしい。」

 『子供の思いはすごい力が籠っているからな。まぁ、だからといってこんなあっさり神器になんかならねぇ、やっぱり烏の連中が無理やり子供の思い出や感情を利用して、早急に神器に仕立て上げたんだ。…そして暴走させたって感じだな。』

 「()()()()()()()()()()()()()()……。」

 『けっ、偽善者みたいな台詞はよしてくれ。鼻が痒くなる。』


 ふっと笑うと、少年はようやく歩き出した。

 向かう先は、月影団げつえいだん本部。


 「寄り道して、遅くなっちゃったな。急いで帰らないと。」

 『新しい奴らが入団するんだって?お前の同期になるんだな。』

 「あぁ、楽しみだ。」

 


 少年の名前は、中院なかのいん らい、十六歳。

 月影団所属、第4期生。

 

 彼の物語はまだ、始まったばかりであった。

 

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