可能性
詰めが甘いので、ツッコミどころ満載かもしれません。
それでもよろしければ読んでみて、突っ込んで下さい。
12月21日 午前10時
宮下咲良が食料品を買いに家を出た。それを玄関で見送った夫、宮下恵大。
同じく午前10時、8時に家を出て友達と遊びに行った浅野恵菜の帰りを待つ、父親の浅野太一と母親の浅野音。二人の元に電話がかかってきた。それを取ったのは音だ。
同じ日の3時間前、午前7時。仕事のために朝早く家を出ていった秋田明香里。同じ職場で働いているが昼出勤なので妻を見送った夫、秋田好。
秋田家、午前10時
職場から電話がかかってきた。好、それを取る。
「もしもし」相手は上司だった。
「お前んとこの奥さん、まだ出勤してねえじゃないか。何してんだよ」と少し怒っているのがわかる。でも
「3時間ほど前に家を出ましたよまだ着いてないってことはないと思いますが」相手がさらに怒気を強めた。
「まだ来てないんだよ!じゃなきゃこんな電話はかけん。奥さんにかけたけど、繋がらないんだ。とりあえず、お前の方からも電話をかけてくれ」
浅野家
音が取った電話の相手は見知らぬ人だった。
「お前のところの娘を誘拐した証拠に。殺されたくなければお前の友達の宮下咲良を誘拐しろ。タイムリミットは1週間後だ。1週間の間に誘拐しなかったら娘を殺す。宮下咲良を誘拐した証拠に宮下の写真を毎朝ポストに投函しろ。住所は■■■■だ。お前から警察にも通報するなよ」
見知らぬ人は一方的に電話を切った。
10時15分
スーパーに着いた咲良のもとにメールが届いた。送り主は音だ。
「今何処にいる?」
だったこれだけの短文。何故聞いてくるのか謎だったが、咲良はスーパーの前を打ち込み送信した。
10時30分
スーパーに着いた太一と音は咲良を見つけた。友達だということを利用して、二人は咲良を自分達の車に乗せ、睡眠薬で眠らせた。二人はそのまま車でスーパーを去った。
同じく10時30分
上司から電話がかかってきた後、明香里に電話をかけたがやはり繋がらなかったので出勤してきた好。その好の職場に電話がかかってきた。取ったのは好だ。電話の相手は見知らぬ人だった。
「秋田明香里を誘拐した。殺されたくなければ、お前の元カノの田中智子を誘拐しろ。タイムリミットは1週間後だ。1週間の間に誘拐しなかったら、この女を殺す。田中智子を誘拐した証拠に田中の写真を毎朝ポストに投函しろ。住所は■■■■だ。お前から警察にも通報するなよ」
見知らぬ人は一方的に電話を切った。
午前11時
スーパーで咲良を誘拐して帰ってきた太一と音。どうにかして警察に通報するか、思案を始めた。
12月22日 午前8時
音は昨日電話で言われたように咲良の写真を封筒に入れて2つ投函した。1つはもちろん電話の相手へだ。
好は妻の明香里を助けたいが、智子を誘拐できないでいた。
午後9時
仕事から帰ってきた太一はポストを確認した。咲良はまだ帰ってきていないようだ。夕刊とチラシと1つの封筒が投函されていた。封筒は今朝、音が投函したものである。恵大は中身を取り出した。入っていたのはベッドで眠っている桜の写真と手紙だ。恵大は恐る恐る手紙を開いた。
宮下恵大様
この度は宮下咲良を誘拐してしまい、申し訳ありません。ですが、これには深いわけがあります。今から書くことをどうか、信じて下さい。そして助けて下さい。
私の名前は浅野音です。咲良とは友達です。お二人の結婚式にも参加させていただきました。住所はそのときに伺いました。
そんな友達を私が誘拐することになってしまったのはある人から電話がかかってきたからです。誰かはわかりません。電話の主は言いました。
娘を誘拐した。殺されたくなければ咲良を誘拐しろ。そして、証拠として写真を送れ、警察には通報するな、と。
私は夫の太一と相談して、咲良を誘拐することにしました。そして電話で言われた通り、咲良の写真を電話の主に送りました。この手紙と同封した写真は電話の主に送った写真と同じものです。どうにかして警察に通報する方法を夫の太一と考えました。それはこのように恵大さんに手紙を書くことです。
お願いです。5日後、恵大さんから警察に妻が帰ってこないことを通報して下さい。そしてこの手紙や写真、これから送るものも全て持って行ってください。警察に通報するのが5日後の理由はあまりにも早すぎると電話の主にバレる可能性があるからです。
安心してください。咲良を絶対に傷つけません。今はまだ睡眠薬で眠っていますが、目を覚ましたら恵大さんに伝えたことと同じことを伝えます。どうか私達を信じて協力して下さい。私達の娘、恵菜を助けて下さい。
浅野音、浅野太一
手紙を読み終えた恵大は気持ちよさそうに眠っている咲良の写真を見て、二人に協力することを心に決めた。
12月24日
また同じように恵大のもとに写真が届いた。この日は咲良からの手紙が入っていた。
恵大さん
私、目が覚めました。家と違うベッドで寝ていて、いかも音と太一さんがいたので驚きました。私がなぜ音の家にいるのか、理由を聞きました。恵大さんも聞いたでしょ?
私からもお願いです。恵菜ちゃんを助けるためにも二人に協力してあげて下さい。私のことは心配しないでね。
咲良
手紙は咲良からのものだった。筆跡もこの前と違って咲良のものだったで、恵大は嬉しかった。
そして刻々と時間は過ぎ、最初に手紙をもらってから4日経ち、12月27日になった。この日は写真と手紙だった。
宮下恵大様
最初に手紙を送った日から4日が経ちました。明日で5日目です。警察に行って下さい。宜しくお願い致します。
咲良、浅野音、浅野太一
同じ日、誘拐された浅野恵菜と秋田明香里が目を覚ました。目を覚ましてお互いに驚いた。隣に叔母がいることに、隣に姪がいることに。驚いている二人に男が言った。
「お前達を誘拐した。浅野恵菜、お前の両親はお前を助けるために犯罪者になったぞ。秋田明香里、お前の旦那はお前を助けようとしない。もし、28日深夜までにお前の旦那が田中智子を誘拐しなければ死んでもらう」
二人は返す言葉もなかった。
28日の朝、宮下恵大は浅野夫婦に言われた通り警察に行った。説明すると警察はすぐに動いてくれた。浅野恵菜は写真を送るのに指定されたときにいるだろうと。警察はすぐに向かった。
11:00、警察は恵菜がいるであろう家に着いた。インターンホンを鳴らすと男が出てきた。男に警察だと伝えると殴りかかってきた。一人の警官が男を取り押さえ、もう一人が中に入ると、そこにいたのは一人ではなかった。
「警察です。何も怪我はありませんか?誘拐されているのは浅野恵菜ちゃんだと聞きましたが、あなたは?」
「恵菜の叔母の秋田明香里です。私も誘拐されたんです。昨日犯人にもしも私の夫が田中智子を誘拐しなかったら殺すと言われました」
一旦、明香里と恵菜は警察署行った。そこに一人の男がいた。その男は恵菜を見るなり少しホッとしたような顔をしたのは気のせいだろうか?しばらくするとまた人がやってきた。来たのは音と太一と咲良だった。恵菜は立ち上がり音と太一に抱きついた。同じように男も立ち上がり咲良に言った。
「無事で良かった。みんな」
音と太一は恵菜を抱きしめながら明香里に気づいた。音が尋ねる。
「明香里、どうしてここにいるの?」
「私も恵菜と一緒に誘拐されていたの。警察が来てくれなきゃ降ろされるところだった。私の夫は私を助けるために犯罪者にならなかったみたいだから」
ちょうど言い終わる頃に秋田好が来た。
「明香里、ごめん。何もできなくて。俺、誘拐できなかった。少ししようとも思ったけど、怖かった。ずっと俺は犯罪者にはならないって思ってたのに……。人を誘拐することを少し考えてしまった。ごめんな」
この事件は浅野家族、宮下夫婦、秋田夫婦の7人に誰でも犯罪者になる可能性を思い知らせたのであった。
ありがとうございます