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装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―  作者: EPIC
第5章:「最終局面、そして決着の時」
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5-5:「衝撃 降下突入」

 場所は再度謁見の大広間へ。

 皇帝アルデュスクォとその配下近衛兵達との戦闘に陥った、祀等にミューヘルマたち。

 その旗色は良いと言える物では無かった。


 皇女ヴェシリアの放つ凶悪な闇魔法が掠め、その脅威に晒され。そして手練れたる近衛兵達は執拗に迫り、得物の刃を突き立てんと喰らいついてくる。

 対して。先手を取られる形から、混成肉薄に持ち込まれた祀と分隊にミューヘルマたちは。

 立て直す隙も無く、散り散りになったまま、その場凌ぎの防戦一方の形に陥っていた。


「くっ!」

「歩が少々わるいですわね……っ!」

「再編の隙が無いっ!」


 剣を振るい近衛兵の襲撃を防ぎながらも、苦い声を漏らすクユリフに。今も近衛兵をその自慢の脚劇で蹴り抜き、退けるエンペラル。

 そして機関けん銃をばら撒きながら、状況の不利を言葉に上げる祀。


 だがそうこうしている今も、皇帝アルデュスクォの発動発現した『邪法』の、その不気味な闇は。謁見の大広間のみるみる浸食し、こちら側の行動可能範囲を奪っていく。

 このままでは、それに触れ飲まれてしまうのも時間の問題だ。


「――闇を迎えるは闇、暗きを阻むは暗き……!」


 その背後。三人に護られるようにしながらミューヘルマは。しかし気を集中させ、何らかの呪文を紡いでいる様子を見せている。

 それこそ、彼女の宿し持つ「手」の発動のためものもの。


「来るっ!」

「!」


 しかし、クユリフの発した声が直後に響く。

 視線を上げ見れば、前方の複数方向より。複数名の帝国近衛兵達が、連携から一斉に飛び出し、襲撃を仕掛けてくる姿が見えた。

 おそらく王女たるミューヘルマを、優先して注力し倒すべく対象と見ての襲撃行動。


「まず――殿下っ!」


 状況、手数から見てミューヘルマに祀たちは明らかに不利。それを察し、祀は反射でミューヘルマに退避を促す旨を発し上げる。

 しかし帝国近衛兵達がその懐に達するのは、それよりも速かった。

 ミューヘルマたちは囲われ、そして次には帝国近衛兵達の振るい上げた得物の切っ先が、殺意が。一斉に集中。


「っ!!」


 万事休す。

 それを目の前に、ミューヘルマ達は一種の覚悟を抱き身構えた――



 ――鈍く、しかし劈く衝撃が。



 ドッ――という鈍重な。しかし明確な爆破衝撃音が響き。

 そして現在の謁見の大広間の、天井のそのど真ん中が。

 鈍い炸裂音と、土埃――いや爆煙の発生を伴って。爆破、崩落――開通したのはその直後瞬間であった。


「――!?」


 唐突なそれにミューヘルマ達はもちろん。襲撃を仕掛けて来た近衛兵達に、大広間で混戦状態にあった自衛隊側、帝国側のその全員が。その意識と視線を引かれる。


「ぁ――」


 そしてしかし直後に、騒々しい崩壊崩落の光景を見せる天井周りの空間に。

 そこに、〝突入降下〟で現れた複数のシルエットを見止め。

 そして何よりその正体に気づき、確信し。

 ミューヘルマは小さな声を零した――




 崩落と、爆薬の起爆によって発生した大量の土煙と爆煙に巻かれながら。

 大きく円形に切り取られる形で崩落した天上構造物は、次には形を保てなくなり。いくつもの瓦礫破片に崩れ分離しながら落下してくる。

 その瓦礫破片のそれぞれには。立ち構え、ないし片膝立ちで構えるそれぞれの〝シルエット〟が見える。


 それこそ――会生を筆頭とする、観測遊撃隊の面々。


 その面々の、〝降りてくる〟姿に光景が。謁見の間に居た各々には、まるでスローモーションのように映る。


 そして、次に響いたのは――鈍くも轟く、〝電子的〟な衝撃音だ。


 合わせてほぼ同時に放射状に見え広がったのは、可視化された電気・電子のような波紋。

 ここまでも見て来た、『邪法』に抗う事を可能とする〝抗生ユニット〟の発動のそれ。

 広まったそれが成し見せたのは、謁見の間に広がり浸食していた『邪法』の、

その〝消滅〟。

 まさに流水で押し流し、履き退けるように。抗生ユニットの発現する波紋に飲まれた邪法の影は、霧散するそれで消滅する光景を見せたのだ。


 しかし、その『邪法』その消滅の光景様子もまた束の間。その次には――劈き轟く無数の銃声が響き始めた。


 まだ突入降下――〝落下〟している最中の観測遊撃隊の面子からの。しかしその状況状態に反しての、的確な射撃攻撃の襲来だ。



 選抜射手たる調映が、64式7.62mm狙撃銃によって。まさにミューヘルマ等に正面より切り掛かろうとしていた近衛兵を、しかしヘッドショットで撃ち仕留めて阻止したのを皮切りに。


 汎用機関銃手の百甘が構え引き金を引く、7.62mm機関銃 M240Bが。唸り遠慮容赦の無い横殴りの掃射を、別方にいた帝国近衛兵達に浴びせ。


 近接戦闘手たる舟海が、間近で遭遇した近衛兵をM870MCSの痛烈な近射で殴り撃ち。

 

 対戦車火器射手たる櫛理は、サイドアームたる9mm拳銃で味方の撃ち零しを補佐しながらも。84mm無反動砲カールグスタフを控え、必要とされる際の〝一撃〟に備え。


 サブリーダーを兼ねる寺院は、89式小銃により散在する近衛兵を、次に次にと的確に仕留める。


 そして各々が円形の配置で、瓦礫に乗って〝降下〟する中の、そのど真ん中には。

 やはり落下する最中の瓦礫破片の上で、しかし堂々立ち構えて愛用の10.9mm拳銃を唸らせ。眼下向こうに見えた近衛兵を射ち屠って見せる、他ならぬ会生の姿が在った。



「――」


 自由落下のわずかな時間の最中で。しかし観測遊撃隊の各員は恐ろしいまでの的確な射撃で、各方に見止めた敵、帝国近衛兵達を撃ち抜き倒す。

 そして、端からそれを見た者にも、そしてそれを実行した当人等からしても。その一連の行為行動はまるで、スローモーションでも掛かったように、長時間に及んだような錯覚があったが。

 実際には、天井の爆破開通からそこまでは、わずか数秒にも満たぬ時間での出来事。


「――ッ!」


 そして直後には、瓦礫破片にそれぞれ乗って落下して来た観測遊撃隊の各々は。

 パレットに乗せられ降下して来た空挺車輛の様相で。自由落下の果てに「ガシャリッ」と激しい音を立てて、謁見の大広間の床に順次、ダイナミックに着地。


「――クリアッ」

「クリアーッ!」

「ナシッ!」


 そして調映や百甘、舟海等各員から。一帯周辺の無力化を見止め確認しての、報告の声が立て続けて上がる。

 観測遊撃隊は、今の天井の爆破開通から落下による突入降下を敢行し、着地するまでの一瞬の時間で。

 分隊や祀、ミューヘルマたちを襲い混戦に持ち込んでいた、帝国近衛兵たちの無力化を完了していた。


 それは、天井の爆破からの突入という奇抜な策により、敵の注意を大きく削げた事が功を成したものではあったが。

 同時に観測遊撃隊各員の、精鋭特殊部隊にも引けを取らない技術手腕を伴って完遂成功でもあった。


「クリア、了解ッ」


 それぞれの報告には、サブリーダーである寺院が受け取る声を返し。

 それを取り次いで渡すように、寺院は振り向いて視線でその旨を背後に伝える。

 そこに、各員の円形に展開配置したそのど真ん中に立つは。またダイナミックな着地から、警戒の意識は保ちながらも、堂々立ち構え続ける会生。


「――上出来だ」


 寺院からの報告を受け、そしてしかし自分でも各員の見事な戦闘行動を見止めていた会生は。

 端的に、しかし確たる声で評し称える声を発した。

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