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装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―  作者: EPIC
第5章:「最終局面、そして決着の時」
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5-4:「プランF(Fall)」

 皇帝の手と意志によって、『邪法』による闇が発生から浸食を開始。

 謁見の大広間をみるみる内に包み支配して行く。


「まず!……抗生ユニットをっ!」


 その脅威を見止め、祀はすぐさま『邪法に』対抗しうる〝抗生ユニット〟を起動すべく。抜かりなく分隊に組み込まれていた、そのオペレーターの隊員に指示を張り上げ掛けた。

 しかし。


「ッォぁ!?」


 直後瞬間。何か別種の歪な衝撃が、分隊他各員へ襲い来た。

 祀に分隊各員が反射で身構えつつ発生源を辿れば、それは皇女ヴェリアスからのもの。


「――フフ」


 彼女のその翳し上げていた手に見えるは。まるで暗黒の太陽のように揺らめく、禍々しい漆黒の球体。

 闇魔法――その生成発現の光景。

 今の衝撃派は、強力なその魔法の発現に伴い、零れ来た余波に過ぎない。

 そしてヴェリアスの手より、次には何の遠慮躊躇も無く闇の魔弾は放たれた。


「!――飛べェッ!!」

「回避しろォッ!」


 放たれた魔弾の狙いは。最早予測するまでもなく、分隊各員に皆の居る方向。

 瞬間直後には、誰かの発し上げた訴える声が立て続けて響き。それを聞くが早いか、分隊各員に祀、ミューヘルマに皆は、一斉に三々五々に蹴り飛んで、散って退避。

 そしてそのまた直後には、叩き込まれる勢いで飛び込んで来た闇の魔弾が。着弾地点、謁見の大広間の真ん中でぶつかり砕け――とてつもない破壊エネルギーを生み出した。


「ぅァ!?――ッぅ……!?」


 背後にその洒落にならないエネルギーの気配を感じつつ。

 危機一髪のタイミングでそれを逃れ、飛んで転がり回避した先で。しかし祀は視線を起こした瞬間、さらなる敵の動き、襲撃を見止める。


 それまで、まるで式典のように並んでいた少数の帝国兵たち。明かせば、帝国軍近衛部隊の中でも最も選りすぐられた、皇帝近衛兵達が。

 大剣にハルバード等のそれぞれの得物を構え、床を蹴って一斉に飛び出し散り。

 今の魔弾の回避ための散会によって、隊形を崩していた分隊各員やミューヘルマ達に向かって。襲撃攻撃を仕掛けて来たのだ。


「ッ!身を守れッ、対応しろッ!!」


 祀はすかさず張り上げ、各員各所へ促す。

 そしてしかし次には、両陣営の人員は交じり合い、近接距離での混戦状態に陥った。


「ッ゛ぉ!?」

「ヤロァッ!!」


 帝国近衛兵の振るった得物を、銃火器で間一髪防いだ事によるその衝突の金属音に。近距離での発砲音など。

 分隊各員の戦闘音に、合わせて零れ上がる怒号が響き始める。


「ミューヘルマっ、下がって!」

「相手に不足はありませんわねっ!」


 ミューヘルマの身はクユリフが庇い、帝国近衛兵の襲撃より防ぎ護り。またエンペラルがその馬人の脚力で、襲い来た帝国近衛兵を蹴倒し退ける姿を見せ。


「面白いじゃないか!」

「互いを守れッ!」


 レーシェクトは痛快そうに笑いながらも、杖を振るい攻撃魔法を放ち。ストゥルは張り上げながら、味方各位の援護のために立ち回る姿を見せる。


「ッ……コマンド・アジャストより他近隣ユニットへ!こちらは重要対象、帝国の皇帝を発見!しかし強力な戦力に遭遇し、困難な状況に陥っている!」


 しかし。皇帝アルデュスクォが生み出して場を支配する『邪法』に、ヴェリアスの操る闇魔法は大変な脅威だ。

 そして、交戦する帝国近衛兵達も今までに無い程の手練れ。

 自衛隊側の状況は大変に困難であった。


「応援を要請する!繰り返す!至急、応援を――!」


 その危機的状況にある旨を、そして応援を要請する言葉を。

 祀は剣幕を浮かべ、通信に急き焦る色で張り上げた。




《――応援を要請する!繰り返す!至急、応援を――!》

「ッ」


 通信上に張り上がった、祀の声での応援救援要請。

 城の上層階、その内の一室で。会生始め観測遊撃隊の各員はそれを聞き留めた。


 現在の一室は、上品な造りの執務用と思われる部屋空間。

 会生率いる観測遊撃隊は、今先程にこの部屋に突入してクリア。それをもってこの階層の制圧掌握を完了したばかりであった。


「祀ちゃんの声ッ?。チクショ!下が本命だったかッ!」


 今に聞こえたその祀からの知らせの言葉と、その応援要請の旨に。

 確保捜索対象たる皇帝の所在が、祀等の向かった下階層の謁見の間の方であった事実を知り。寺院が悪態を吐く。


「急ぎましょう、再編をッ」

「――いや」


 会生の傍に居た舟海が。すぐさま再編成を行い、下階層へと降りて応援に向かうべく進言を寄越すが。

 しかし会生は、その進言を取り下げる一声を発した。


「会生さん?」

「寺院、祀たちの現在座標を調べろ」


 不可解に思い零した舟海に。しかし返す事はせずに言動で回答を示すように、会生は寺院に向けて指示を告げる。

 自衛隊の各部隊各員は、小型のビーコンを装備所持しており。その信号によりそれぞれ相手の現在地座標を調べ知る事ができた。


「!――マジか!この真下だぜッ」


 小型携帯端末にて、指示された通りに祀等の方の座標を調べた寺院は。次にはその判明した調査結果に目を剥き言葉を零す。

 祀等の現在位置、事態の発生地点であろう謁見の大広間の場所は。なんと現在地、会生等の足元、真下の階層に位置していたのだ。


「日頃の行いが良く運んだな――爆薬を設置しろ」


 その結果に、会生は真顔ながらも珍しく冗談じみた言葉を発し。そして次には指揮下の各員へ指示を張り上げた。


「ここと、そこ。そして反対だ」


 会生は執務室の床の各所を指し示し、命じた爆薬設置のその設置個所を指定する。


「マジ……?」

「愉快な演出になるな」


 その指示の流れから、会生の想定している策に各員も思い当たり。

 百甘が困惑交じりに零したり、反して調映がニヒルに発しながらも。各々は手早く行動作業に当たり、完了させて行く。


 ほどなく会生に考えは形となり。

 執務室の床面を一杯に使うように。設置個所同士を結んで円形を描く形で、爆薬の設置が完了した。


「よし――寺院、舟海、百甘、調映、櫛理。〝降下〟の配置に付けッ」


 そして会生は、観測遊撃隊の遊撃班より隊員数名をピックアップ。その設置範囲内への配置を、そんな言葉をもって指示。

 各員をその内に円形に配置させ、そして自身はその中心に構え立つ。


「他は、状況判断から後続突入しろ」


 そして会生は残る観測遊撃隊の各員に、今からの〝初手〟より続く行動を指示。


「各員、いいか――?」


 そして、配置した各員に準備状況を訪ね。各員の頷きないしハンドサインにて、その了解を受け取り。


「――やれッ」


 直後。会生は端的に、しかし響く指示の声を発し上げ。


 ――刹那、設置した爆薬が一斉に起爆。

 それが床面を破り、大穴を開け。


 会生等を、〝降下突入〟へと導いた――

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