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装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―  作者: EPIC
第5章:「最終局面、そして決着の時」
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5-2:「元凶、それとの相対」

 自衛隊各隊は、素早く流れるように。しかしかつ苛烈に、怒涛の勢いで。

 エーティルフィ城の内の制圧、掌握を進めて行った。


「――停止しろ、一旦再編成する」


 会生率る観測遊撃隊に、第32戦闘群からの一個分隊。本隊より先行していたその混成隊が、監督する祀の指示によって一旦停止したのは。

 城の低階層の、中央付近に存在する広いホール空間に踏み出た所であった。


 ホールに広く散会展開し、一度警戒隊形を敷く各員。


「ここより、中枢か」


 そしてその中心で、堂々立ち構える会生が零す。

 ホールは同階層の奥へと繋がるであろう大扉に、上層階へと続く荘厳な造りの大階段などのアクセスが設けられている。

 それらはここより城の中枢、主要施設に通じているであろう事が推察できた。


「殿下、この先には?」


 そこで祀は、部隊に同行していたミューヘルマに。同じく同行してるクユリフやエンペラルに護られる彼女に、訪ねる声を紡ぐ。

 この城の主の一人たる彼女にこの先の造り、存在する施設を訪ねるもの。


「謁見の大広間が扉を進んだ奥に。上階には私たちの住まう階層と、いくつかの公務の場があります」


 それに、各方の施設設備の構造に存在を答えるミューヘルマ。


「どちらにも、〝居る可能性〟はあるな」


 それを傍で聞き、そしてそんな言葉を紡ぎ零したのは会生。

 その言葉は示すは――ガリバンデュル帝国の皇帝、そして皇族の所在の可能性だ。


 もぬけの殻であった帝国帝都。そして今先にこの王都エーティルフィで確認された、帝国第一皇子の存在とその排除。

 その状況と実例から、帝国の皇帝自身に他皇族もまた、この王都エーティルフィに赴き身を置いている可能性は格段に上がっていた。

 そして居るとするならば、その場所はこの王城のどこかである可能性がまた高い。

 今先から自衛隊各隊は王城の制圧掌握と並行して、皇帝に皇族の捜索索敵を行っていた。


「分かれて捜索索敵を行う。会生、上階高所を抑える事を兼ねて、観測遊撃隊を率いて上へ」

「いいだろう」


 祀は、会生に上階への制圧へ向かう指示を向け。会生も端的にそれに了解。


「32群分隊は正面奥を調べろ、私も同行する――かかれ!」


 続けて祀は第32戦闘群からの分隊に、正面扉の向こうの調査を指示。

 そして号令の言葉を受け。各隊各員は再編成から、割り当ての方へ当たるべく行動を再開した。




 視点は第32戦闘群の分隊と祀、そしてそれに同行したミューヘルマたちを追う。


「接てェきッ!」

「分隊支援火器ッ、前へ、前へェッ!」


 ホールから大扉を潜り越え。謁見の大広間へと通じる、荘厳な廊下通路を押し進める分隊。

 その際にも、密に配置して待ち受けていた帝国兵たちと接敵、交戦が発生するが。

 最早する事はここまでと変わらぬと。分隊は苛烈な火力投射を持ってそれを退け、押し進んでいく。

 激しい銃火を響かせながら廊下を突っ切り。目的の謁見の大広間へ到達するのに、さほどは時間は掛からなかった。



「――やれッ!」


 爆音が劈く。

 分隊の分隊長の合図で、廊下の奥に設けられていた大扉が、設置した爆破パネルによって破られた。


「GOGOGOォッ!」


 荘厳な大扉が、しかし紙切れのように向こうへ吹っ飛び。

 抉じ開けられた開口部より、スタンバイしていた分隊各員が流れるような動作で突入。


「――ッ!?」

「!……これは……っ?」


 雪崩れ込むように突入した先で、素早く散会展開した分隊各員に、それに続いた祀。

 だが直後に各々は、突入した先に見た。しかし少し意表を突かれる光景に、思わず微かに目を剥いた。


 広がっていた空間施設にあっては、想定通りの広く開けた空間を取った、荘厳な造りの謁見の間。

 しかし各員は、密な抵抗のバリケードがそこにあるだろうと想定していたのだが。それにあっては、しかし異なっていた。


 謁見の広間の奥、低い階段造りの土台の上に作られた立派な玉座と、その周り。

 周りには少数の、ここまでとは服装意匠の異なる帝国兵たちが。何かまるで式典かのように広がり並んでいる。


 さらに異なる光景が一つ。玉座の少し離れた横隣。

 そこに立つは一人の少女。上品なドレスに身を包み、長い優美な金髪の元に大変に美麗な顔立ちが見れる。

 しかしその顔には、何か嘲るような加虐的な笑みが浮かんでいる。


 そしてだ。その少女の足元に居るは、いや侍らされ従わされているは。

 一糸纏わぬ、裸に剥かれた体で膝まづかされている、5人ほどのダークエルフであった。


 遠目に、一人は美麗な青年に見え。他四人は麗しい美女に美少女に見えるダークエルフたち。

 しかしその端麗な顔はいずれも悲しく苦し気な、悲観の色に染まっている。

 それもそのはず。ダークエルフたちはいずれも、裸に剥かれた体に首輪を嵌められ。それから伸びるリードを、今の加虐的な笑みの少女に握られている。

 虜囚、奴隷。ダークエルフたちが、そういった立場に落とされたのであろうことは明白であった。


「――お父様、お母様っ!姉様方っ!」


 そんな光景を見止めた分隊各員に祀を割る様に。次にはミューヘルマがそんな声を張り上げて駆け出て来た。


「!、あれが殿下のっ?」


 その台詞から察するは容易。今に捕らわれているダークエルフたちこそ、ミューヘルマの家族――すなわち、このミュロンクフォング王国の王族なのであった。


「ミューヘルマ……!」


 捕らわれの5人の内から、青年の容姿のダークエルフがミューヘルマを見止め。また悲痛に満ちた声を返す。


「あら、聞いていた末の妹様ですの?クス、また可愛らしい――私の蒐集品に、また一つ良品が増えそうですわ」


 そんなやり取りに無粋に割り込むように、何か背筋の凍るような声色に言葉を寄越したのは金髪の少女。

 その美麗な眼は、しかし何か気味の悪い色をミューヘルマへ向けている。


「……帝国第一皇女、ヴェシリア……!」


 一方のミューヘルマは、睨み刺す眼でその少女を見つめ返し。そして少女のその名と肩書であるそれを口にする。

 明かされた通りその少女こそ。ガリバンデュル帝国第一皇女、ヴェシリアであった。


「そして……――皇帝、アルデュスクォっ!」


 そして、続けてミューヘルマはその隣。謁見の大広間の奥、その中央に置かれた巨大な玉座に。

 本来は彼女の父である国王が座すべきそこに、しかし成り代わり傲岸不遜に座る存在に目を向け。

 透るその声色にしかし凄味を利かせ、叩きつけるまでの声を発し上げた。

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