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状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!  作者: 三〇八
状況の人、異世界で無双する
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状況の人、テイマーと会う2

「うん、アデリアの人たちだな?」

 なんだかイメージ通りの、ドスの効いた低い声だった。

 しかし龍海には、その声は威圧的なものは感じられず、どちらかと言えば気さくな感じを受けた。

「俺たち、魔獣狩りしてたんだが……ちょおぉっと深く入り込んじまってなぁ。よそ者が図々しいと思われるかもしれんが日も暮れちまったし……済まねぇがこの野営地、ご一緒させてくれねぇかな?」

 マジで威圧的な印象はまるで無く、さりとて(へりくだ)っているわけでも当然無く、実にナチュラルな口調でその男は龍海たちに要望してきた。

 龍海や洋子たちは一瞬互いに目を見合わせるが、今のところ彼に敵意を感じないという考えは共有しているらしく、全員がまるで一任を預ける様に、龍海に視線を合わせた。

 まあ事実上のリーダー・指揮官・年長(カレンは年長扱いすると怒る。長寿は威張るクセに)である龍海はまずまずババを押し付けられる立場ではあった。

 ふぉ~、と一息つくと龍海は、

「ああ、お互い争う……危害を加える気が無いなら別段問題ないよ。この辺は一番国境に近いしな。『お互いさま』で行くべきだしね」

と、彼の提案を受け入れることにした。

「おお、ありがとうよ。うちはご覧の通りデカブツを二頭も抱えてるもんでな。それなりに広いところが欲しくてよ」

 礼を言いつつ、彼はこちらに歩み寄ってきた。

 ――オーガ族?

 焚火の火に照らされて浮かび上がった彼の姿は、ポリシック領で多く見られたオーガであった。

 金属を多用した重量級の防具では無く、分厚いが皮革を主に使い、動きやすさを優先したような防具を着用した出で立ちである。

「確かにな。ところで、その魔獣はあんたが飼っているのかい?」

「そうだよ。俺はエームス市のギルドに所属している冒険者で、テイマーなんだ」

 ――テイマー? 確か魔獣とか聖獣だかを従属させて使役したり、仲間にしたりする事ができる能力だよな? 町でも噂されてた……

 彼の言が正しければ、なるほどあの二頭の魔獣が馬車を引いているのも納得。

「マティ! どうなの!? 降りていいのぉ!?」

 馬車から声がした。

 若い……とは言え、少女と言うほど若くは無い女の声だ。

「ああ、OKだ! 準備してくれ!」

「あいよー!」

 元気のいい返事と共に、女は降りてきた。

 背丈は洋子とカレンの中間くらい、細くも無く太くもなく中肉と言うにはちょっと抵抗がある程度の女で頭には、小さいが山羊のそれと良く似た角がちょこん、と生えている。

「あいつの名はラリ。バフォメットと吸血鬼(ヴァンパイア)の混血だ」

 バフォメットと言うと龍海はサバトの山羊みたいなのを連想するのだが、彼女は人間族とさして変わらない風貌、面持ちだった。

 龍海はいつも通り、第一にお胸に目線を合わせたが、オーガくん張りの皮革のプロテクターで固めているので暗がりも相まって良く見えなかった。

「俺の名はマティ。見ての通りオーガ族だ」

「俺は龍海っていうんだ、よろしくな」

 マティの名乗りを受けて、龍海も名乗った。次いで洋子たちも自己紹介する。


「魔獣ハンター?」

「ああ、俺たちのパーティは、もっぱら辺境の地域に出る魔獣を討伐して稼いでるんだよ」

 野営の準備を終えて、食事も済ませたマティ一行。

 龍海はモノーポリ領の情報も得られればと、彼らを酒席に誘った。

「今回みたいに越境も承知で狩るんですか?」

 ロイも龍海をサポートする様に探りを入れる。

「まあトラブルの元だからアデリア領には入り込んで仕事しない様には気を付けてんだけどな? 今回は賞金首の魔獣を追っていて、結構踏み込んじまってなぁ」

「賞金首? 魔獣に特定の懸賞か何かが?」

「おう、3m越えの大黒熊が悪さしてるってんで周辺の村々が数日前に、金を出し合って賞金を付けたんだよ。で、そいつを追いかけてたんだが……」

 ――3m越えの大黒熊? もしや?

「魔獣を使って足跡と臭いを付けて来たんだが、どうやら先を越されちまってな。辿り着いた先には奴のでけぇ死体が転がっていたよ」

 ――やっぱりアレかぁ……

「ふ~ん。あれって賞金なんかついていたのね」

 と洋子。

 とは言え、アデリア側でも討伐依頼としての募集は有ったワケで。

「お? あんたらも、あの死体見たのか?」

「見たも何も、あの大黒熊を仕留めたのは私たちですわ」

「ハァ! あのデカブツをあんたらがぁ!?」

 イーミュウの答えにラリが素っ頓狂な声を上げた。

 5人いるとは言え、半分は見るからに少年少女。一端(いっぱし)の男手は龍海一人であとは軽装の熟女である。

 パッと見る限り熊や牛はもちろん、象猪でさえ手古摺りそうなメンツに見えるのは止むを得ないところであろう。

「ホントかよ? あたいの見たところ、あの大物は無数の傷穴が有ったよ? 体毛に焦げや縮れの類は無かったから炎系の魔法や道具は使ってないだろうし、矢や(つぶて)とかも無かったから氷使いの魔導士が氷矢や氷槍を無数に叩きつけて、特大の……それこそ杭の様な()っとい得物を腹と胸に叩きこんで留めを差したって見てたんだけどな? あんたらそんな強ぇ魔導士なのか?」

 さすが魔獣ハンターを名乗るだけあって、どうやって仕留められたかはある程度検視した模様である。今後の自分らにも役に立つ戦法かもしれないわけで、良い姿勢であろう。

 しかしまあラリの疑問も、ごもっとも。で、

「嘘じゃねえよ? ほら」

龍海は採取した牙を雑嚢から取り出してマティとラリに見せた。

「デカい! それに、間違いなくこれは熊の牙よね……」

「これほどの大きさなら……どうやらホラ話じゃ無さそうだなぁ。じゃあ魔石もやっぱり特大級か?」

「見るかい?」

 龍海は魔石もマティら二人の前に出した。

「ヒュゥ!」

 ラリの唇から口笛が吹かれた。目も思いっきり丸くしている。

「さすがにこれは……いや、すごい。長年魔獣狩りをやってきたが、これほどの大物は初めて見るな。ち、ちょっと持たせてもらえるか?」

 ああ、と気前よく魔石をマティに渡す龍海。

 受け取ったマティは、両手に余る大きさの魔石を上下に揺すって重量を確かめたり、横から見たり下から覘いたりと色々と観察していた。

 そんな中、カレンが腰を上げた。

「どうしたのカレン?」

 洋子が聞くと、

「花摘みよ。ビール唯一の短所じゃな」

と笑いながら森の中の暗がりに入って行った。

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