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状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!  作者: 三〇八
状況の人、異世界で無双する
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状況の人、威力偵察する3

「お主じゃな。あの()()とか言うのをまともに食らったら、我もタダでは済まんの」

「……高評価頂いて恐縮だが……マジで居らんのか? 例えば魔導国を束ねるフェアーライトだっけ? 魔族の大将なわけだし、結構強かったりすんじゃねぇの?」

「天辺だからと言って全てに秀でておるわけでは無いわな。アデリア国王とて剣や魔法が国内一ではあるまい?」

「ん~、まあ確かに」

「人間や、ことに魔族の中には一撃で10人20人を屠るほどの火炎や氷、(いかづち)などの魔法を繰り出す者は()る。そんなのが20人30人と集まれば我ら古龍と言えども手古摺るだろうが、そこまで国を挙げるほどの手間をかけて我らと敵対しようとする者は今の時世、居るとは思えんな」

「別にお前らは国やら人やら滅ぼそうとしている訳じゃ無いもんなぁ」

「いずれにせよ個人的な事情でやり合うならともかく、国家の総名代として我と事を構えようとする勢力あらば、他の古龍も黙っとらんからな」

「そんなものなのか?」

「我ら古龍は自由だと言ったであろ? 例えば我以外の古龍を国家の思惑で滅せようとする連中が現れれば、我もその勢力を我らの自由に仇成す敵と認識するぞよ?」

「その代わり敵対さえしなければ人間や魔族が何をしてようが知ったこっちゃない、という事か……」

「その辺は今までにも話しておった通りよ。お主には我の餌場としての義理は果たすが、戦力としての員数には入れるなや?」

「へいへい」

「事にあの娘どものケツは拭かんからな。我も煽られては居るが、あやつら熱くなりすぎよ。我も引くわ」

 言われて龍海は洋子、イーミュウの方に目を移した。

 と言うか主に耳だが。

「図に乗ってんじゃねぇぞ、ヒューマンのクソガキ! 痛ぇ目あいてぇか!」

「口ばっかじゃなくさっさとやればいいじゃぁ~ん? それともやっぱ口だけですかぁ? 遠吠えだけは得意そうだもんねぇ~?」

「クソビッチが! 身ぐるみひん剥いて晒すぞ!」

「あらぁ~? 私たちの事、散々ガキだの小娘だの仰ってたのに興味ありますのぉ~? やっぱりご覧になりたいんですかぁ? お犬様相手ならバターでも用意しますぅ?」

「ヤダ~! 想像しちゃったじゃない~。イーミュウったら、お 下 品!」

 ――妙な方向で煽り合ってんな~。てかここでもバター犬なんて真似事なんぞあるんか?

 全く洋子にしても、うら若きJKが想像出来る、そんなバター犬なんて知識をどこから手に入れますか? ネットですかそうですか!?

「お~い、洋子、イーミュウ? 煽り合いもいいけど、もうちょっと話題選ぶとかさぁ……」

 ヒュン!

 洋子らの下ネタ的煽りに、龍海が苦言を呈そうと口を出した直後、鋭い風切り音が耳に入ってきた。

 ――矢!? 打ってきた!?

 カアァン!

 ウルフ族の放ったであろう弓矢が、洋子らの足元の岩に当たって乾いた打撃音が響いた。プラグ軍曹ら動哨班が皆、楯を前に出して備える。

「バター犬は言いすぎですよぉ~」

 ――ありゃぁ~、禁句だったかねぇ~

 ヒュン! ヒュン!

 ウルフたちの中で弓を構えていたのは2名。そいつらが続いて矢を放ってきた。

 カン! カアァン!

 飛んできた矢が周りの地面や岩に当たる。

 洋子やイーミュウも思わず姿勢を低くし身構えた。

「おらあ! さっきまでの威勢はどうしたぁ!」

 口で煽り負けしたウルフどもが矢を射かけてきた訳だ。自分らから煽ってきた割に沸点が低いのではないか?

 ――オーガの盗賊と同レベルかな?

 龍海はそんな風に感じていた。

 いや、バター犬が結構連中の逆鱗に触れるワードなのかも? 

「いきなり射かけてくるなんて何考えてんのよ! 危ないじゃないの!」

 洋子が怒鳴り返した。しかしウルフ。

「悔しかったらやり返してこいやー!」

 そう言いつつ、更に射かけてくる。

 しかし盾には当たるものの、全てが決定打から外れている。

 どうやら、これも挑発の範囲らしい。

 龍海が転がった矢を見てみると、それらには(やじり)が付いていなかった。 

 殺傷する気は無く、話に聞いていた小競り合いの範疇であろうか? こちらが尻尾巻いて逃げ出せば嘲笑ってとりあえずお開きとか?

 とは言え、そうそう軽く考えて良いものではない。鏃は無くとも当たり所によっては結構なケガをするし、目に当たればまず失明は免れない。

 ヒュン!

「あ!」

 などと考えている内に、その中の一本が、早速懸念通りの軌道で飛んできた。

 イーミュウの顔面への命中コースで襲ってきたのだ。

「く!」

 反射的にイーミュウは眼を瞑り両腕で顔を防御した。

「イーミュウ!」

 許嫁への直撃コースに、思わずロイが叫びながら彼女の盾になるべく駆け出した。だがとても間に合いそうにはない。ロイの、歯が欠けるくらいの歯軋りが聞こえて来そうだ。

 無慈悲にイーミュウを狙う矢。やがて、 

パシ!

音がした。

 しかしそれは、被矢――矢が彼女に直撃した音では無かった。

 イーミュウも矢を受けた衝撃は感じられず、右目を恐る恐る、うっすら開けてみると……弓矢の先端が目の前30cm程度で止まっていた。

 ――わお!

 龍海は感嘆の声を漏らしかけた。

 イーミュウ直撃の射線で飛んできた矢は、なんと洋子が素手で掴んでイーミュウへの被矢を防いだのだ。

 おまけに……

「何してくれてんの! 嫁入り前の女の顔に傷がついたらどうすんのよ!」

パッシューゥン!

洋子は怒鳴りながら、その矢を狼どもに投げ返したのだ。

「おわわー!」

 どこぞで語られた一子相伝の暗殺拳法使い宜しく、矢を掴んで投げ返した洋子。しかもその矢の初速は筋力強化も相まって、普通の2倍ほども出ている。

 これにはさすがに狼たちも驚いたらしく――まさかあんな小娘に素手で止められて、更に倍返し宜しく、かつて見た事も無い速度で投げ返されるなど想像の斜め上とか下とかいうレベルではない。狼どもは慌てて頭を抱えてしゃがみこんだ。

 カイィーン!

 投げられた矢は狼たち後方の樹の幹にズドンと突き刺さった。鏃は付けられていない矢なのに、である。よほどの勢いと鋭さが無いと、鏃の無い矢がこんな風には……それをみて蒼ざめる狼ども。

「ヒュウ!」

 これには一歩離れて面倒くさそうに見ていたダークエルフも唇を鳴らして感嘆した。弓使いとしては目を見張るものがあったと言う事だろうか?

 そこは当然、龍海も同様であった。

 カレンの指導の下、洋子の勇者としての能力が日を追うごとに開花していくのは龍海も感じていたが、いくら素質があって魔法の発動が出来るようになったとしても、実戦ではそれを生かすセンスが必要になってくるものだ。

 今の洋子は矢がイーミュウ直撃コースと直感するや、腕の筋力、瞬発力強化を発動させ、文字通り目にも留まらぬ速さで反応して矢を捉えたのである。

 ――肉弾戦じゃ勝てねぇな、もう……

 まあ、当初の目的からすれば喜ばしい限りである。

 で、なぜか喜んでいる輩がもう一人……

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