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状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!  作者: 三〇八
状況の人、異世界へ転移する
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状況の人、西へ5

 バサッ! バサッ!

 マミイが帰ってきた。さっそく作成した地図と情報を照らし合わせて貰う。

「凄いねこの眼鏡! まるで昼間のように見えるんだもん!」

 暗視眼鏡の性能に興奮しながらも、マミイは上空から見たアジトの概要を説明・確認した。

 地図に描かれた通り、楕円広場の東端に沿って沢が流れており、その近辺にかなりの人数が集まっていたとの事。

 5つある天幕や、おそらくは首領や幹部級のねぐらと思しき2つの小屋の位置も最終確認し、アジトの状況は大体掌握出来た。

「で、どうだい? お仲間が捕らわれてそうなところ、わかるかな?」

「残念だけど空からは分からなかったよ。屋外に晒されたり、籠に入れられてるワケじゃなさそうだけど、小屋の中に檻でもあるのか……手足を縛られているなら天幕内という可能性もあるし」

「そっか……場所が分かれば一点突破で救出・撤退でどうかと思ったが」

「周りに気付かれずに連れ出せればよいがバレれば20人の追っ手を相手する事になるぞよ? お主らは魔族の戦闘力の品定めも兼ねておるのだ。本来の目的のためには甘い戦術を選んでいては藪蛇になりかねんぞ?」

 カレンの指摘、龍海にはちょいと刺さってしまった。

 確かに今考えていた戦術はあくまで人質救出が最優先となっているし、それは間違ってはいないとも思ってはいる。

 しかしこの作戦はカレンの言う通り、来たる王国と魔導国の戦争に向けての威力偵察の側面も大きい。

 何より自分と洋子のレベルアップのために、あからさまに言えば盗賊相手の殺傷であれば、躊躇・遠慮なく全力攻撃も視野に入れるべきなのだ。

 最優先目標は人質の救出、しかしそれが出来なくても魔族との戦闘を経験するだけでも得る物はある。

 いささか外道な考え方だがこれもあながち間違いとは言えない。あくまでお互いがお互いを利用し合っているのだから。

 ――よし……

「ロイ、ダニー」

「はい!」

「君たちには人質救出の実行役を任せる」

「え?」

「自分らがですか? では卿は?」

「俺と洋子は正面から乗り込む」

「し、正面から!?」

「そうだ。実行部隊が沢沿いに下るのであれば、見張りはその近辺に居るだろう。俺たちは森から沢に出てそのまま前進。会敵次第、そいつをいきなりぶっ飛ばす!」

「派手に銃声を上げてか? わざわざハチの巣を突く気かや?」

「その通りだ。連中は何事かと一斉に飛び出してくるだろう」

「……そっか。シノさんとあたしで盗賊たちを引き付けて、その間にロイとダニーくんにミコさんたちを探させるのね?」

「正~解。奴らが俺たち侵入者が、たった二人だと侮って集まってくれればラッキーだ。連中の目が総出で俺たちに向いている内に、ミコさんたちの気配はカレンが察知してくれるだろう。発見・救出した後は無線で俺たちに知らせてそのまま離脱しろ」

「おいおい、勝手に我を組み入れるでない」

 と、ここでカレンが龍海にクレーム。

「先にも言ったであろう? 我はお主らのいざこざには干渉せんとな」

「それは国家間の戦争の事でしょ? それとも何? 手伝ってくれないの?」

「我は自由だと言ったであろう? 我がお主らについているのはあくまで餌場としてよ。狐っ子の時にも申したはずぞ?」

 カレンは誇りある孤高の生命体、この世界の頂点に属する古龍である。龍海に付いているのも離れるのも自分の自由意思以外には有り得ない。勝手に、それもヒト如きの指揮下とか古龍としての誇りが許さない! とばかりに冷ややかな目線を洋子にくれてくるカレンである。

「どうじゃな? 我をその気にさせたくば、せめてそれなりの見返りを供するのが礼儀であるとは思わ……」

「シノさん、カレンへのビール提供禁止ね。これ勇者命令」

「へ?」

「ちょ! 待たぬか! それは殺生であろう!」

「ひと仕事終わった後の一杯は最高だそうね~?」

「おま! (こす)いぞ!」

「どうすんの~?」

「わかった! 承知した! 何でも協力する! だから禁ビールは許せ!」

「はい、おっけ~。その代わり無事作戦が成功したら朝から飲んでいいわよぉ~」

 鼻息荒く能書きを垂れていた割には結局、即座に同意するカレン。それを見て、にへらぁ~と笑う洋子ちゃん、お顔の悪い事悪い事。

 ――安いな、古龍のプライド……

 龍海、精神的ジト目。

「あの、あたしたちは……」

 セレナたちが聞いてきた。

「君たちはこの近辺、街道から極力離れた位置で待機しててくれ。ロイたちが戻ったらそのまま町へ戻るんだ。俺たちを待つ必要はない」

「そんな! みなさんを置いて行くなんて!」

「君たちの目的は仲間の救出だ。それを最優先に考えろ。大丈夫、俺たちだって無理して残るとかそんなことはしない、アープの町で合流するってだけだよ。じゃあロイ?」

「はい!」

「拳銃の撃ち方はさっきので分かっているな?」

「は、はい」

「その拳銃の予備弾倉も一緒に渡しておく。体格差がありそうだから会敵して剣で敵わないと踏んだら遠慮なく使え」

 龍海はそう言うと、ボアを仕留めた後に試射させたグロック17用の予備弾倉2個をホルスターと共にロイに渡した。

 ホルスターの装着を教えながら今一度指導。

「……銃口を向ける相手だけは間違えるなよ?」

「はい。お預かりします」

「よし、作戦開始だ」

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