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状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!  作者: 三〇八
状況の人、異世界へ転移する
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状況の人、お目付け役が付く5

「お互い差別や敵対心とかは無いのかしら?」

「無い訳じゃありません。しかしそれが元で紛争のきっかけになる事は両者とも望んでいませんので、差別や偏見の元になる法度に背く連中の存在は双方ともに頭を痛めております」

「なるほど。じゃあさっきのコのような目に会わせる反社組織もいると?」

「お恥ずかしい話、我が国にもそんな不逞の輩、郊外に潜伏する盗賊らとつるんでいるヤクザ者は後を絶たず……」

 昨晩の捕り物の様子が龍海の脳裏を過る。

「ヤクザ者同士が手を組んでそれぞれの需要に合わせた奴隷のやり取りもあるのかの?」

「はい……」

「そういう連中の居場所とか潜伏先とかはわかるのかな?」

「……どうなさるおつもりですか? もしかして彼女に御助勢されると?」

「それは置いといてな、もしも魔族らの戦闘能力や戦法を窺うには、そういった犯罪者連中を相手にすれば統治者の心証を損ねる事も無いかと思ってな」

「それは如何なもんかの? ポリシックはもちろん、ここいらの領主からすれば自分の縄張りで好き勝手飛び回っているハエに見えるのではないかや?」

「ねえロイくん? あたしたちってポリシック領に入ることは出来るの?」

 洋子がやけに乗り気だ。やはり何かスイッチが入ったのか?

「ずいぶん前のめりだが良いのか? オーガ族辺りが下手人なら、より人と似た種族を相手にせにゃならん。我と対峙した時とは勝手が違ってくるぞ?」

「ご忠告ありがと。で、どうなの?」

「そうですね。我々だけでは渡航目的をはっきり言う訳にはいきませんし、国境巡回の兵に呼び止められると面倒が起こるかもです。でも……」

「でも?」

「先ほどの女性は魔導国へ商取引に出向いていた模様ですし、仲間の救出ではなく取引のための越境は可能かもしれません」

「つまり?」

「例えば、サイガ卿方が護衛、もしくは雇われ人夫と言う立場で彼女らと同行、と言う体なら不自然には見られないかと……」

 ふーっ!

 龍海は少し強めに一息つくと、眉を顰めながら思考を巡らせた。

 いつか来るであろう魔導国との衝突に備えて魔族の能力は出来る限り見極めておきたい。

 かと言って、いきなり正規軍やそれに類する相手に仕掛ければそれだけで戦端を開くきっかけにもなりかねない。

 しかるに今回の件、魔族の縄張りと言えど相手は魔族領主にとっても手を焼いている無法者であり、若干横紙破りな段取りではあるが犯罪者から同胞救出と言う名分は成り立つし、一刻を争うという事情も付加すれば、ある程度の無理は押し通す事も出来る。

 尤もそう言う理が通じる相手であればだが。

「魔族と接触するにはいい機会だとは言えるがなぁ……」

「今回の事が無ければ魔族への偵察は殴り込みって形になるわよね? そっちの方が問題になるんじゃないかな?」

「まあ、運よく越境してきた反社魔族とアデリア内でガチ合って接触ってのが一番だったんだけど……やっぱりそんな都合よくは行かんわな。ロイ、国境線の備えってのはどうなってる?」

「街道沿いには双方の巡回警備隊の詰所が有りますが、山岳や平野等にはこれといった備えはありません。お互いに害をなさない程度の採取や狩猟は自由と言ってもいいのが現状ですね」

 国境と言ってもどこかの長城みたいに全て仕切られているわけでは無いようだ。まあ、長大な国境すべてに目を張り巡らすのは今の、この世界の世相を見てもコスパが悪すぎる。

 それで先だってのイーナとゴブリンのような例も起こる訳だが。

「……もしも皆さんが彼女の助力がてら魔族の戦闘力をお測りになりたいのであれば、良い機会とも言えましょう」

「うん? だったらギルドの冒険者でも大丈夫じゃないの?」

 洋子が疑問を漏らす。なるほど国境が曖昧で、明確な悪意ある商業をするのでなければ越境にはさほど問題は無い様に思う。

 が、ロイはそれを否定した。

「奴隷売買を目的に武力で人を攫う連中ともなれば盗賊や極道者ら荒くれ者である上に、組織立って活動するため人数もバカに出来るものではありません。万全を期すならやはり傭兵か軍を動かすべきかと」

「だから、王都府にお伺いを立てろ、か……」

「その間に娘どもは売られてしまうのぅ」

「別に全員を相手にする必要は無いんでしょ? 拉致された娘を救出さえできれば」

「そう都合良くは行かんであろうな。売るまでに弄ばれているやもしれんし」

「カレン!」

 洋子が不機嫌丸出しで詰め寄った。

「否定するような事ばっか言ってないで何か案も出しなさいよ! いくら相手が多くてもあんたが元の姿に戻れば!」

「元の姿?」

 ロイくんキョトン? と。

「いやまあ、それはいいとして!」

 洋子の不用意な発言に龍海が割って入った。

 カレンの素性をロイに明かしていいかどうかは、まだ一考を要するだろう。

「洋子、君は彼女の力になりたいのか?」

「魔族の実力を探るいい機会だと思うわ」

「いや、お題目はやめとけ。君の本心が聞きたい」

 龍海の、図星を突くような言い方にちょっとムシっとする洋子。

 しかし、言われた事はとりもなおさず洋子の心象そのものである事は事実であり、それは誤魔化しても仕方がない。意地を張るようなところでは無い。

 洋子は気を取り直すと、

「ん、ごめん……」

そう言いながら大きく呼吸し、

「そうね、本音ではなんとか彼女の力になってあげたい、そう思ってるわ」

自身も落ち着かせる様に言った。

 感情に任せず、セルフコントロールを心掛けられるのは喜ばしい限りではあるが、既に実戦を経験しているとは言え、お互いこちらに来てまだ日も浅い。メンタルは大丈夫だろうか?

「ロイ?」

「相手の勢力にもよりますし大所帯ともなればあまりお勧めできない案件ですが、自分はシノノメ卿方の判断に従います。片時も離れません!」

 姿勢を正しハッキリと即答する少年兵。拝した命令に準ずる姿は、さすが未来の士官将校だ。

 ただ異様にオメメがキラキラしているのがちょいと気にかかるところではあるが。

「じゃ、そういうことで」

「我には聞いてくれんのか?」

「お前は人のいざこざには干渉しないんだろう? なんならここで待ってくれてても良いんだぞ?」

「んにゃ、当然我も付いて行くぞ? せっかくの餌場を失いたくないでな」

「さっきから餌場だの元の姿だの、いったい何のことです?」

「おいおい話すよ。じゃあ、さっきの娘に話聞いてみようか」

 龍海の言葉に洋子ら三人は同時に頷くと、席から立ち上がった。

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