表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!  作者: 三〇八
状況の人、異世界へ転移する
37/197

状況の人、竜退治する7

「……寝ぼけて、た?」

「うむ。恥ずかしい話、我は寝相が悪くての。特に夢など見てると夢の中と同じように体を動かしてしまう事もザラでな。獲物に火球を放つ夢だと実際に火球を撃ってしまう事も多くてのう」

「その寝ぼけて撃った火球が、たまさか村に落っこちてきたってのか?」

「まあ、上を向いて撃ち出した火球がいくつか届いてしまったのであろうなぁ。正直スマンかった」

「火球ってそんなに飛ぶの?」

「飛ぶだけなら10kmは飛ぶかの? まあ狙えるのは2kmか3kmくらいだの」

 ――戦車砲並みかよ……

 陸自在隊中、龍海は装軌車整備の資格を持っていたが、その講習時に「戦車砲の精度は2km先のドラム缶に百発百中でないと失格だ」と教えられた事がある。

 故にその精度を維持するため、砲身にぶら下がるなどはもちろん、腰をかけるだけでも叱責の対象であった。

 しかし火竜の火球は長い砲身も持たずにそれほどの精度を出せると言うのは、やはり魔力か何かで制御しているのかもしれないなとも思う。

 もしもそうであれば、洋子や自分にも応用できないモノだろうか? 今後、検討すべき課題と言えそうだ。

 で、話を戻して。

「迷惑な話だなぁ」

「我も治したいとは思っておるのだ。放った火球が岩肌で跳ね返って我の顔に当たって飛び起きる事も珍しくなくてのう。何者かの襲撃かと思って乱れ撃ちする事も……」

「もしかしてそういう時も何発か村に届いたと?」

「可能性は否定できん。しかし村まで距離がある故、爆発等は無かったのではないか?」

「でも焼夷弾程度の威力は有ったんじゃね?」

「ショーイダン? なんぞ、それ?」

「とにかく家や畑が燃えて……三軒隣りのマシューさんは大やけどで一月くらい寝て過ごしてましたし」

 エミの証言で、龍海と洋子は寝ぼすけ火竜にジト目攻撃を敢行。

「あ、いや。申し訳ない。だが、人死には無かったようで幸いだったの」

 カレンさん、頬っぺたポリポリ。

「まあとにかく、イーナさんの依頼も達成出来そうでそれは喜ぶべき事よね。でも何で生贄を差し出すなんて悪習が伝わったのかしらね? あなた何か知ってる? あなたの仲間かなんかがやらかしたとか?」

「う~む」

 洋子の問いにしばし考え込むカレン。

 やがて、はっ! と目を見開き、

「思い出した! 恐らくそれも我の事だ!」

と答えた。

「え? やっぱりあなたの事なの?」

「そういやさっき、女はクドくて不味いとか言ってたな? その時の生贄は食ったのか!?」

「違う! 人を食ったのはもう何百年も前の話だ! 我を駆逐しようと挑みかかって来た連中を噛み殺してそのまま飲み込んでしまっただけよ! 食えん事は無いが我はやっぱり牛系が好みなのだ!」

「んじゃ、その時の娘は?」

「そのまま帰したはずだがのう? そこは伝わっておらなんだか?」

「でも伝承には、それでもう火球は来なくなったって語り部が……」

「いや、その時はここいらの森林バイソンを粗方(あらかた)食ってしまったんでな。また増えるまで餌場を変えようと別の場所へ移った故、そう思い込まれてしもうたかの?」

「ただの偶然~? なんなのよ、もう」

「となると、この先どうするかな? このままあんたが居座るとまた火球を飛ばしかねんのだろう?」

「そうだのう。森林バイソンの個体数にはまだまだ余裕はあるのだが……そう言う事なら餌場を変えるとしようかのぅ。またぞろ村に火球を飛ばしてしもて、こんなかわいい狐っ娘にやけどを負わせては可愛そうだからな」

 と言いつつエミの頭をなでるカレン。エミちゃん思わずにっこり。

「そっか。なら火球の件も解決だな。あとはエミちゃんにちょっと口裏を合わせてもらう事になるが」

「え? どうして、シノさん? これで終わりなんじゃ?」

「俺と洋子の事は黙っててもらわなくちゃいかんだろう。イーナさんは村に黙って俺たちに依頼したんだ。勝手な行動をとった彼女に咎めがあるかもしれんよ?」

「あ、そうか。イーナさんは村の決まりを破った事になるんだったよね」

「なんかややこしそうだな? まあとにかく我とタツミ、ヨウコはここからさっさと退散した方がよいのか……ん?」

 話し途中で火竜が洞窟の入り口方向に視線を移した。

「……道を何人かが登って来ておるようだな? 麓で様子を窺っていたか?」

「わかるのか? 索敵スキルか何かか?」

「ああ、人型の時は視界が悪くてな、必ず使う様にしておる。4人、いや5~6人といったところか」

 龍海も索敵+は起動していたが人数はもちろん、何かの気配すら感じることは出来なかった。竜の索敵能力は斯様に優れているのか?

 迷彩魔法を使っていたとはいえ、よく接近できたものだと思う。

「ここへ来る気かしら?」

「火球が何発も爆発したし、M82(バレット)の銃声も聞こえただろうしな。どうしたもんかな?」

 眉間にしわを寄せて考え込む龍海。

 麓からの視点で考えれば、炸裂する銃声や火球の音・光は、伝承の範囲外の現象であったであろう事は想像に難くない。

 何が起こったか、確認しようとはするだろうが確かめに来るにしてもカレンが飛び去るか、夜が明けてもっと視界が良くなってからかと踏んでいた。

 故に夜食に焼き肉などと呑気に構えていたのだが……さて、どう帳尻を合わせるか?

 と、思案していたところへ、

「深く考える事もあるまい。考えさせる役は連中に押し付けよう」

とのカレンの意見に、龍海も洋子も頭の上に?マークが浮かんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ