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状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!  作者: 三〇八
状況の人、異世界で無双する
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状況の人、暗殺に遭う2

「何事ですか!? こ、これは!」

 当館の当直職員と衛士数人が銃声を聞いて駆けつけてきた。

 破壊されたバルコニーの扉と、横たわる黒ずくめの人物。これが賊の襲撃であることはすぐに察知できたが、今までの襲撃、テロ、戦闘の状況と比べて職員たちはかなりの違和感を覚えた。龍海たちは彼らの感覚で言うと武器を持たない、いわゆる丸腰の状態だ。しかも一端の男は一人、もう一人はまだ年少の士官学生、あとは少女とB……熟女である。それなのにバルコニーの扉が粉砕されたあげく、賊を仕留めている。火炎魔法の焦げ跡も、氷魔法の濡れた後も認められないのは魔法攻撃では無かった事が推測される。

 ではどうやって? 

 迎賓に使われるこの館の職員ともなれば、場数を踏んでいるベテラン揃いが相場であるが未知の状況に困惑を隠せなかった。

 そこに、

「なにを呆けているのですか?」

と、メイド少女に軽い叱責を飛ばされて我に戻る職員たち。

「あ、そ、そうだな。君、一体何が起こっ……え? あれ?」

 返事はしたものの、職員困惑更に倍!

「で、殿下!? いや、あの、お召し物……!」

「何度も言わせないでください、苦言など言ってて面白いものではありません」

「し、失礼いたしました! しかし殿下、なぜこのような場所に!?」

「将来の伴侶と、ご一緒することに何か問題でも? それより、人を呼んでここの後始末をお願いします。それと隣の部屋は空いてますよね? わたくしと勇者さま方で、下手人の取り調べを行いたいのです。それとわたくしが懇意にさせて頂いております治安部の特務捜査班に、下手人の収容準備をするようにお伝えくださいませ」

「はは! 直ちに!」

 職員たちは散っていくクモの子より更に俊敏に各部署へ向かって行った。


 隣の部屋に移った龍海たちは、まだ絶賛気絶中の賊の検査を行った。

 アマリアが賊の顎を戻し、部屋内の調度品のティースプーンをチーフで巻いたものを猿轡代わりに噛ませておく。その手際の良さに、龍海の背筋は平熱に戻る暇がない。

「そういやシノさん、初弾当たってたんじゃないの? 背中大丈夫?」

 賊の得物はクロスボウであった。放たれた矢は二本。初弾は龍海の背中に命中し、二矢目はソファを貫通して、隠れていた龍海の頬を掠めて壁に突き刺さっていた。

「この矢は……貫通力に特化した鏃を使ってますね。重装甲歩兵を貫く目的で開発された、高価ですが大変固い金属であるミスリルが含有された素材かと。多分、毒も塗布されているでしょうね」

 ロイが矢を分析してくれた。防具が無ければ掠っただけでも致命傷、暗殺にはもってこいだ。

 ――やっぱりミスリルなんてファンタジー素材(マテリアル)があるのか……

「……雇われハンターやテロリスト風情が買えるモノではありません。イヤな予感がしますね」

「数も少ないのかな? 鎧とかには?」

「ミスリル合金の鎧を愛用している者も少数ですが居ります。しかし先ほども申しました通りとにかく高額で、かなり上級の高級将校や、武具によほど執着のある冒険者くらいしか」

「やっぱり強力なんだろうな?」

「小銃の7.62mm弾辺りは分かりませんが、拳銃弾はまず弾くんじゃないかと? 矢にしてもその貫通力はご覧の通りです」

「ガラス越しでも弾道が変わらない様にしたってことかな? でもこの新型ベストには効かなかったようだな」

「我のウロコを使ったやつかや?」

「カレンの?」

「そ! 薄いし軽いから防弾板の変わりに出来そうだと思ってカレンに協力してもらったんだ。洋子やイーミュウが着てるのもそうだよ」

「ああ、新しく作ったからってくれたわよね。2型に比べて確かに軽くて動きやすいけど、カレンのウロコ使ってたのかぁ」

「12.7mmでも貫通しなかった火竜のウロコだからな。防弾性能は実証済みだ」

「ウロコなんてそんなに簡単に取れるの?」

「まあ、お主らの産毛みたいなもんじゃからの。場所にもよるが、この程度の量ならな」

「場所にもって? どこのウロコ?」

「聞きたいか? まあ弾除けにするって言われたからそれに相応しいところと言えば……の?」

「弾除け…………え! まさか!」

 洋子は以前、授業中に戦史に詳しい教師が冗談めいて話していた戦時のエピソードを思い出した。弾に当たらないための(まじな)いとして、女性の肌着(下半身向け)等の切れ端や、痴毛を懐に忍ばせると言うヤツだ。つまり……

「ちょっとぉ! あたしのこのベストにもそこのウロコ使ってんのぉ!?」

()()除けにはピッタリじゃろが。はっはっは」

「うわ、やだ、えんがちょ!」

「冗談じゃ冗談。お主らのは我の胸の下のウロコよ。あそこはよく蒸れよるでな、代謝は早い方でのぅ」

 どうやら最悪は免れたようだ。しかし、自分の胸ではそんな蒸れるところがない洋子やイーミュウにとっては結局面白いモノでは無かったが。

「さて、この下手人についてだが……取敢えず頭巾を剥がすか」

「はい」

 龍海に言われて、小刀を取り出すロイ。頭に巻かれていた黒布を切り裂きながら剥ぎ取っていく。

 頭部の布を取り去ると、イノミナのそれのような猫耳が現れた。

「猫の獣人か?」

「ヤマネコ系ですね。マチネコ系よりも五感が鋭い傾向にありますわ」

「イーミュウさんの仰る通り、ネコ系の俊敏さ、柔軟さに加えて、その鋭敏な五感の特性を生かしてこういった隠密業に従事する手合いも多いと聞き及んでおります。タツミさま、おそらく此奴は気配を完全に消し、その敏感な聴覚で部屋内の会話から人物の特定と位置を把握し、事に及んだものと」

「我もギリギリまで気付かなんだわ、大したものよの。だが、引き金を引く時の殺気までは消せなんだようじゃな」

「ああ、突然だったから冷や汗が出たよ。索敵+も無敵じゃないんだなぁ」

「と言う事は、やはり標的はシノノメ卿……」

「そう言う事になりそうだな。つまり俺とメルの婚姻による両国の同盟・合併の類に反対する勢力か」

「どちら側でしょうかね? ここまで侵入してきたからには、やはり我が国の過激派?」

「今の段階では何とも言えんな。こいつがすんなり口を開いてくれりゃいいが……」

「何としても割らせますわ。タツミさまに矢を引くなど万死に値します!」

「ああ、あの、王女殿下?」

「アマリアと呼び捨ててくださいませ、タツミさま~!」

 王女さま、ニッコリニコニコ。

「あ、いやあ、そういう訳にも……ところで殿下はその……」

「何でございましょう?」

「その、こいつに対する処置とか、些かちょっと、驚いたと言いますか、感服したと言うか……」

「はあ。それは、どの事でございましょう? あ、回復魔法ですか?」

「ああ、それも見事でしたが、ああ、何と言うか……」

「タツミが聞きたいのはの、姫君が賊の顎を外したり、気絶させたり、歯を引っこ抜くとか物騒な話がポンポン飛び出してる事では無いかと我は思うのだがな?」

 カレンのフォロー(?)が入った。

「あら、そんな事ですかぁ?」

 ――そんな事、だと?

 ケロっと答えるアマリアに龍海くん、またしても背中がゾッ!

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