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状況の人、異世界で無敵勇者(ゲームチェンジャー)を目指す!  作者: 三〇八
状況の人、異世界で無双する
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状況の人、追撃中4

 こめかみに、キレる寸前ほどの青筋を立てる狐男。龍海に叩き込むべく狐火の出力を最大にして振りかぶる。

「クソザコがぁ! 死んで後悔しやが……」

 バン!

「れ! ぼぉ!」

 狐男は爆音と同時に腹にとてつもない衝撃を受けて、後ろにブッ倒れた。

 瞬時に魔力が途切れて手の平の狐火は霧散した。

「あが! ぐはぁ……」

 龍海のP-09から撃ち出された9mm弾に撃ち抜かれて(うずくま)り、呻き声を漏らす狐男。そんな中、

ダダダ!

さらなる援軍が表からも集まってきた。その数は10人を超えていよう。

「兄弟!」

 援軍のリーダーだろうか? 狐男の事か、()()の事かはわからないが三人の血だらけの仲間を見て、そのオークと言うよりゴブリンぽく見える(混血?)そいつは、これまた一気に頭に血を昇らせたようだ。

「てめぇ~!」

 状況からして()()をやったのはこの見知らぬ(ヒト)種の三人である事は明白だ。

 ならばやる事はひとつだ。事情は奥の留守居組に後で聞けばいい。

「やっちまえー!」

 うおー!

 援軍組は一斉に襲い掛かった。

 相手は剣も槍も弓も持っていない、しかも鎧もつけていない軽装ぶり。

 この数で掛かれば結果は火を見るより明らかだ!


 と、なるはずなのだが……やはり頭に血が上りっぱなしだとロクな事にはならない。

 その得物も持たず、防備も軽い三人に何故()()がやられてしまったのか?

 そこまで思いが及ばないのであるからして。

 故に火を見るより明らかな結果は、いとも簡単に逆転する。

「ロイ!」

 龍海はP-09をホルスターに納めると、収納から散弾銃を出してロイに投げ渡した。

 ロイは銃を受け取ると、

ドン! ドン! ドン!

弾倉内の散弾をすべて連中に叩き込んだ。

 ダララ! ダララ! ダララ!

 龍海は89式を取り出した。

 3点射で確実に連中を屠っていく。

 バン、バン、バン、バン、バン!

 散弾を撃ち尽くしたロイは副兵装のG17を抜き、前衛があっと言う間に、それも何が起こったかわからないうちに崩されて目を見開いている後衛に向かって容赦無く9mm弾を叩きこんだ。

 龍海も89式を撃ち尽くすとP-09を構え、尚も動こうとする者に狙いをつける。

「う、うわああ!」

 撃たれる狐男や援軍を見ていた屋内組の奴らは我先に逃げ出した。

「待て!」

 バン、バン、バン、バン!

 弾倉をリロードしたロイは、逃亡する屋内組に撃ち込んだ。

「ヒィ!」

 被弾はしなかったものの、壁や調度品に着弾して巻き上げられた破片が降り掛かり、屋内組は悲鳴を上げながら床に転がり込んだ。そのまま、頭を抱えて震え上がる。

「ほっとけロイ! それよりこっちを責めるぞ」

 そう言うと龍海は正に死屍累々の援軍組に近寄った。

「あ、あ、あひ! あひ!」

 右脚を撃ち抜かれただけの比較的小柄なオーガが第四匍匐前進宜しく、這い蹲ってその場から逃れようとしていた。

 龍海はそいつの前に回り込んでしゃがむと、目の前にポーションをちらつかせて、

「さっきから言ってるが俺たちはテイマーのハンター、マティを探してるんだ。知ってる事が有るなら全部吐け。そしたら命は助けてやるし、ポーションもくれてやる」

「し、知らねぇ! 俺はこの組に入ったばかりなんだ! そんな奴知らねぇよ!」

「卿、右脚……踏ん付けますか?」

 ロイが狂気、と言っても差し支えないくらいの目線をくれながらオーガの傷口に足を乗せた。

「い、痛ぇ! や、やめて! ほんとに知らねぇんだよぉ!」

「なら、知ってる奴は誰だ? そいつは息してるか?」

「だからわかんねぇって! 誰が誰を知ってるとかそんな! 店長とかならともかく!」

 ハアァ……

 と、龍海が苦虫を噛み潰したような溜息を洩らした。店長らしき男はカレンに頭を割られてしまったし、もう一人は口が利ける、いや口が無いも同然の状態。

 ――屋内組、締め上げるか? あっちもザコっぽいが……

 と思ったその時、

ガタン!

 商会の向かいの建物辺りから物音がした。積まれた木箱に何かが当たる音。

「誰か!?」

 龍海は誰何(すいか)しながら拳銃を向けた。

 バン!

 箱より数十cm上に威嚇射撃を加える。

 発砲は誰何複数回の後に行うものだが、今の龍海にそんな余裕は無い。

「待った! 待った待った、シノサンの旦那!」

「あ?」

 おそらくは木箱の後ろ、そこから聞こえた声は女の声。しかも聞き覚えのある声だ。

 おまけに「シノサン」だと?

「出ていくから! い、今出ていくから! ヤらないでよ!? 絶対、絶対ヤらないでよ!?」

 両手を上げながら姿を現した猫耳を持つ女。

 声と同じく、すでによく見知った顔だ。

「イノミナ! なんでこんなところに?」

 隠れていたのは情報屋イノミナだった。

 銃を知らない彼女は、「銃を()()」と言う形容の仕方は分からないようだ。それ故「撃たないで」では無く「ヤらないで」になったらしい。

「こ、こっちのセリフだよ! なんで旦那たちが魔族領に入ってんのさ!」

「先にこっちの質問に答えろ。何でここに居る!?」

「例の調査だよ。どうやら旦那が想像したみたいに、上流の奥方の中に反戦グループみたいなのが出来ててさ、モノーポリ領の方はどうかな? って調べてたんだ。で、興味深い情報も得たし、そろそろ引き上げようとしたら何かこっちで派手な音がしたから……情報屋としちゃあやっぱり……気になるだろ?」

「……そうか」

 龍海は銃を降ろした。

「でも……なにやらかしたんだよ旦那ぁ。いくら何でもこりゃひどいや……」

 呻き声と虫の息が混ざったみたいな地獄絵図にイノミナも足が竦んでいる様子だ。

「洋子とイーミュウが攫われた。犯人はおそらく二人を奴隷として売る気だ」

「え!? あの子たちが!? そっか、それで手掛かりを探しに……だけどヤバいよ旦那。アデリアでは御法度でも、こっちじゃ奴隷売買は合法扱いなんだよ?」

「扱い? 扱いと言ったか?」

「ああ。魔導王フェアーライトは奴隷売買を嫌っているんだ。今はまだシーエスやモノーポリが反対しているけど、それ以外は禁止か順次禁止にして行ってる。やがては全面禁止になるだろうけど、現在は……」

「ほほー、さすが情報屋、魔族の事でも結構知っとるようだの?」

「商人だって魔族領に出入りしてる奴なら知ってるさ。旦那、とにかくずらかった方がいいよ。すぐに警衛隊が群がって来るよ!」

「そういう訳にもいかない。ハンターのマティの居場所を調べなきゃ」

「マティ? マティってテイマーの置き引きマティかい?」

 ケロっとした口調で聞くイノミナ。

 対して目を見開く龍海。

「知ってるのか!」

「ま、まあ酒の席で聞いただけだけど……人懐こい振りして近寄ってはモノ盗んだり、子供攫って売り飛ばしたりしてる最低野郎ってボヤいてたオヤジがいて……多分そいつもやられた一人なんだろな~って、わ!」

 イノミナの襟が持ち上げられた。

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