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レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
第二章 呪霊妖魔大戦。『ウィズ スピリチュアル フューチャー』
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それから。

こちらも、再び走り始めました。m(_ _)m

完結を目指します!!


楓視点になります。

「まあ、座ってワシの話を聞いてくれんかの、みんな……」


 焼失した寺の本堂とは離れた場所に位置する奥の院──『修練堂』。

 会長の所有するこの山頂の敷地内には、幾つかの由緒ある建造物があり、俺たちのいるこの修練堂は火災による被害を免れていた。

 あれから、数時間が経ち──、山を覆う樹木の枝葉には沈みかけた夕陽が赤く射し込んでいる。

 『修練堂』は、かつて修行僧たちが寝食をともにして過ごしていた場所だ。

 だだっ広い畳敷きの大広間には、夢葉(ユメハ)の母親と学校から無事帰った妹弟、会長と俺、妖魔側の人間に操られていたご婦人、それから──、

 ──霊体であるピピ郎と黒音(クロネ)ちゃん、夢葉(ユメハ)に風の神の子のヴィシュヌヴァも居た。

 会長を前に、みんな、それぞれに座り静かにしていた。


「ママ、怖いよぅ……。これから、どうなるの?」


「大丈夫よ。ママも夢葉(ユメハ)お姉ちゃんもお爺ちゃんも、みんな居るから」


 小学生の夢葉の妹が(タタミ)に座ったまま不安げに、夢葉の母親の顔を覗き込むようにして見つめている。


「お父さんとお婆ちゃんは?」


 夢葉の弟が発した言葉に、俺を始め皆の表情が曇る。

 妖魔側の人間に会長の寺が襲われた時には、夢葉の父親と祖母は居なかった。そして、今も。

 

「だ、大丈夫よー! ね、お爺ちゃん?」


「ふむ。その事なんじゃが、夢葉……」


 霊体である夢葉がフワリと浮いて、胡座(アグラ)をかいて座る会長のもとに近づいて話し掛けたが、会長は何かを言いかけて口を(つぐ)んだ。


「ごめん。なんか、夢葉の家族と関係あるわけ? 席外そっか? 夢葉のお爺ちゃん?」


 黒音(クロネ)ちゃんも、霊体である自身の身体をスーッと立ち上がらせて、肩に短く切りそろえられた黒い髪の毛を耳もとで掻き上げながら、会長へと尋ねた。


「むぅ……。すまんが、ママさん。子どもたちを連れて、奥の部屋でお茶菓子でも食べといてくれんかの? どの道、後で説明せねばなるまいが……。夢葉は、ここに残りなさい」


「えー! やだやだ!! 私もジイジのお話聞く!!」


「ぼ、僕も中学生だし、話くらい聞きたい……」


 そう言った夢葉の妹と弟の言葉が、俺たちの間に漂う重い空気を揺り動かすように胸に突き刺さった。

 視線を(タタミ)に落としていた俺も顔を上げ、会長の顔を見つめた。


「なーんだか、重っ苦しい空気ですねー。死人の私には関係ないことですが? 夢葉さんのお父様とお婆様、それと、この度の事件とが何か関係があるのですかね?」


 会長の寺に戻ってからは、ピピ郎は何故か本来の吸血鬼(ヴァンパイア)風紳士なイケオジ姿(スタイル)に戻っている。

 しかし、まさか──、とは想うが、誰もが核心を突いたようなピピ郎の言葉を言えずに、その場に押し黙っていた。


「んー。なんだか、放っておけない感じ? 神の子だからって、何でも僕に出来るワケじゃないけど、出来ることはやらせてもらうよ?」


 風の神の子こと、僕っこヴィシュヌヴァがエメラルドグリーンな瞳を(まばた)きさせて、そう言ったかと思うと──、『修練堂』に柔らかな風がフワリと吹いて、ヴィシュヌヴァの水色にウェーブした髪が穏やかに(なび)いた。

 少しだけ、(タタミ)の上に座る俺の額にもヴィシュヌヴァの風が触れて、心地良かった。


「そうじゃの」


 重苦しい曇った表情の会長の顔がほんの少し緩み、会長はフーッと息を吐いた。


「実はの……──」


 そう言葉を話し始めた会長の横顔を夕闇が照らし──、僧衣を着た会長の座る小さな影が、(タタミ)の上へと静かにスーッと伸びていた。



 

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― 新着の感想 ―
[一言] 果たして如何なる事実が明かされるのか(;゜Д゜) メッチャ気になるのです!! そしてこの大戦の行方は!?
[良い点] 再開されてたーーっ!!(大歓喜) ありがとうございます、すみさまっ!! また夢葉ちゃんたちに会えてすごく嬉しいです♡ 続き、楽しみにお待ちしております♪
2023/03/28 21:25 退会済み
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