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レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
第一章 呪霊解きの世界……。『ウィズ ゴースト レインボー』
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『キュン』……。

黒音(クロネ)視点─




「見なよ……。ココ。完全には開かなかったけど、開いた穴が塞がりかけてる……」



 ゆっくりと立ち上がった(カエデ)くんが、巨大神像の(ヘソ)の空洞へと近づき、開きかけた結界に手を触れている。



夢葉(ユメハ)。ありがとう。何か、突破口みたいなのが、開けたよ?」



(カエデ)……。ありがと。そう言ってくれると嬉しいんだけど、一発じゃ開かなかった……」



 (カエデ)くんが、閉じかけてる結界の穴へとズブズブと右手を突っ込みながら、夢葉(ユメハ)に声を掛けた。

 夢葉(ユメハ)は、一撃で結界を破れなかったコトを気にしているのか、納得が行かない様子だ。夢葉(ユメハ)の悔しい感じが伝わる。


 結界の穴へと、(カエデ)くんがズブズブ右手を突っ込んでいる間は、修復の途中なのか、(はじ)いたり吹き飛ばしたりするような効果が、結界には見られなかった。



(カエデ)くん? これって、好機(チャンス)じゃない?」



「だね? 黒音(クロネ)ちゃん。 閉じちゃう前に……な、ん、とか、シないとっ!!」



 私に、そう言った(カエデ)くんが結界の中へと潜り込むようにして身を乗り出し、息を止めるようにして透明なゼリー状の結界の中へと尚も潜り込んだ。



「ふぉごっ!? ふぉごぉもももっ!?」



 透明なゼリー状の結界の中へと、潜り込んだ(カエデ)くん……。

 既に上半身が結界の中へと埋まってて、(カエデ)くんは、お尻だけ突き出している格好だ。

 途中で息が続かなくなったのか、(カエデ)くんが必死でもがいて苦しんでいる。

 (カエデ)くんも『幽体』だから、呼吸なんて関係ないはずなんだけどなー……?

 いや。結界の中は特殊で、結界に入ろうとする侵入者を(はじ)くような効果が、(カエデ)くんを苦しめているのかも知れない。

 まるで、現実世界(リアル)で水の中に閉じこめられたかのように……。

 


(あぁ……。(カエデ)くん……。苦しそう。だけど、なんか、好きっ!!)



 透明なゼリー状の結界の中で、必死にもがく(カエデ)くんの姿を見て、私の胸のキュンキュンが止まらない……。

 なんか、お(ヘソ)の下のあたりまで、キュンキュンする……。



「ぬぉっ!? (あるじ)っ!! (カエデ)くん、大丈夫デスかっ!? 素晴らしいっ!! 見事な足掻(あが)きっぷり!! まさに、芸術(アート)!! 無様(ぶざま)な格好デスが、男前すぎるほど男気を感じマスっ!!」



 イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)なピピ郎の芸術的(アーティスティック)感性(センス)にも火をつけたのか、(カエデ)くんのこの必死すぎる姿に刺激(インスパイア)され、私の(ハート)と同様に感嘆の声が止まらないピピ郎。

 

 (カエデ)くんの苦しみが私の(ハート)直接的(ダイレクト)に貫き、格好はともかく、それでも勇者としてもがく(カエデ)くんの躍動的(ダイナミック)な姿が、快感の渦となって私の(タマシイ)に激しく押し寄せて来た。



「あぁ……。(カエデ)くん……。たまらない」


 

 私が小さくそう呟いてしまった後、夢葉(ユメハ)の声が私の頭の後ろから聴こえた。


 

「頑張れーっ!! (カエデ)っ!! 頑張れーっ!! 力の限りっ!! 全力だよっ!! 突き抜けて!! (カエデ)っ!!」



 私の(ハート)も突き抜けてしまいそうだ……。(カエデ)くんのこの必死すぎる姿に。

 

 さっき、上半身まで透明なゼリー状の結界の中へと潜り込ませていた(カエデ)くんは、ついに結界の中へとお尻を納めて──水中をスローモーションで歩きながら泳ぐような姿で、結界の中を尚も突き進んでいた……。



「ふぉごっ!! ふぉもももっ、が!!」



(バシャッ……!!)



 ついに、必死でもがいていた(カエデ)くんが、結界の向こう側へと(はじ)かれるようにして、飛び出た。



「ハァ、ハァ……。ぐっ、(ぐる)じい……」



「ぬおっふぉっ!! (あるじ)!! (カエデ)くん!! これは素晴らしい!! 感動致しマシたよっ!! お見事デス!!」


 

「ヤッター!! (カエデ)っ!! おめでとー!!」



 飛び跳ねて喜ぶ夢葉(ユメハ)が、イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)なピピ郎とハイタッチを交わす。

 


「イェイ!!」



「ヤリマシタネー!!」



(パーン……!!)



 巨大神像のこの(ヘソ)の空洞にある入り口の前で、イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)なピピ郎と夢葉(ユメハ)の歓喜の声が(そら)に舞い上がった……。


 

(フフ……。(カエデ)くん……。おめでとう……)



 心の中で静かに呟いた私の胸が、「たゆん」と揺れて──

 まるで、生きてる時みたいに、私のお腹の下のあたりが「キュンキュン」とした……。













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[一言] こっからが大変だぜ楓ちゃん(;'∀')
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