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レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
第一章 呪霊解きの世界……。『ウィズ ゴースト レインボー』
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勇者……。

黒音(クロネ)視点─





(ふう……。やれやれ……)



 夢葉(ユメハ)の全身から噴き出した風に、吹き飛ばされた私は、そう想いながら両膝についた土埃(つちぼこり)を払いのけるようにして立ち上がった。



(冗談が、過ぎたみたいね……)



 どうも、いつもの調子(ノリ)気分(テンション)夢葉(ユメハ)と関わると、知らずの内に夢葉(ユメハ)を傷つけてしまうみたい。

 いや、怒らせちゃうんだよねー。

 そんな感じ。


 私が立ち上がると、夢葉(ユメハ)の右手の上で黄緑色の蛍光色を放つ方位磁石(コンパス)みたいなのが、ピタリと止まり、矢印を出して一つの方角を指し示している。


 私と同じく、夢葉(ユメハ)に吹き飛ばされたイケメン吸血鬼(ヴァンパイア)なピピ郎が、背中の黒くて大きな翼をヒラリとはためかせて風に乗る。

 風に乗ったピピ郎が、一瞬で夢葉(ユメハ)(カエデ)のもとへと吸血鬼(ヴァンパイア)らしく華麗に降り立った。



「おぉっ!? 方位磁石(コンパス)が、ピタリと指し示してマスねー? どうやら……」



 そう……。

 ピピ郎が、振り向いた先──


 夢葉(ユメハ)が起こした風とは違う風が、巨大な神とも言える涅槃(ねはん)像の(ヘソ)のあたりの空洞から、ヒンヤリと冷たく流れて来る。

 この辺り一帯は、かなり蒸し暑いのに。

 私も、ピピ郎と夢葉(ユメハ)(カエデ)くんのもとへと歩み寄る。



「どうやら、アソコ? って、感じ?」



 もちろん、神の涅槃(ねはん)像の(ヘソ)のあたりにある空洞のコト。

 私が、そう言うと、夢葉(ユメハ)の右の手のひらに浮かんでた黄緑色の蛍光色を放つ方位磁石(コンパス)が、消えて無くなってしまった……。



「じゃ、じゃあ……。先陣を切るのは、僕……お、俺だね? 勇者らしく勇気あるトコ見せないと……」



 そう言いながら、ガクガクとまたもや震え出す(カエデ)くん。

 そりゃあ、(カエデ)くんの勇気あるトコも見てみたいけど、私は、夢葉(ユメハ)みたいに(カエデ)くんには求めてない。

 


((カエデ)くん……。無理しなくて良いのに……)



 私は、そんな風に想う。



「よし! みんな、(カエデ)に憑いて行くよ!」



 張り切るように、何か意を決したように言う夢葉(ユメハ)

 夢葉(ユメハ)だって、分かってる。

 (カエデ)くんの震えるような気持ち。

 (カエデ)くんは、臆病な自分の気持ちと闘っているんだって。



(なら……)



 私も(カエデ)くんを筆頭に、夢葉(ユメハ)とピピ郎に憑いて行く。

 けど、私たち四人を異世界(ゲーム)におけるパーティーととらえるなら、隊列の組み方は、(カエデ)くんの勇気とは別。

 最も戦闘(バトル)に適した効率の良い配置、それぞれの立ち位置って言うのが、あると想う。



「ちょっと……」



「え? な、何かな? 黒音(クロネ)ちゃん?」



 先陣を切る(カエデ)くんの肩を、私がチョンチョンと指先で触れると、(カエデ)くんが振り向いた。



(カエデ)くん? 無理しなくて良いよ? パーティーにはパーティーの隊列の組み方……立ち位置や役割ってのが、それぞれにあるから」



「え? で、でも……」



 (カエデ)くんは、躊躇(ためら)っているんだろう。

 私の意見に従うべきか、夢葉(ユメハ)の言うように勇気を振り絞るべきか。

 確かに、勇気を振り絞るコトは、(カエデ)くんの霊的な成長には欠かせないと私も想う。

 けど、チームとして考えるなら、パーティーは(カエデ)くん一人だけじゃない……。



黒音(クロネ)……。黒音(クロネ)の言いたいコトも分かるけど、(カエデ)の霊的な成長が先じゃない? (カエデ)には、現実世界に戻れば肉体があるワケだし。それに、私たち四人(パーティー)(かなめ)だよ?」



 夢葉(ユメハ)が、最もらしいコトを言う。

 ちょっと、つらい。

 確かに、夢葉(ユメハ)の言うコトも一理あるけど、夢葉(ユメハ)直接的(ストレート)な物の言い方には、心を(エグ)られる。

 私は、泣きそうだ……。



「まあまあ。お二人とも。(カエデ)くんを、パーティーの主役に立てつつ、私たちも、それぞれの動きや役割を闘いながら模索(シミュレーション)してみては、如何(いかが)デス? この異世界(ゲーム)の中じゃあ、死ぬコトも無いデスし。なんと言っても我々四人が、力を合わせて一つのコトに挑むのも初めてのコトですし?」



 イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)なピピ郎が、私とも夢葉(ユメハ)とも違うピピ郎らしい三つめの意見を言った。

 

 夢葉(ユメハ)のも私のも取り入れたピピ郎らしい第三の意見。

 年の功とでも言うのだろうか?

 若返り、いつになくイケメンな意見を言った吸血鬼(ヴァンパイア)なピピ郎が、天を仰ぎながら金色の長髪を掻き上げ、キラキラと輝かせている。

 ピピ郎は、自分の意見に酔いしれてんのかな?



「そうか……。そうか。僕……俺が弱いからイケないんだ……」



 最もらしい意見を言ったイケメン吸血鬼(ヴァンパイア)なピピ郎だったけど、夢葉(ユメハ)にも私にも気づかない部分(トコロ)で、何気に(カエデ)くんの(ハート)を傷つけてしまっていたようだ。


 フルフルと、(カエデ)くんの(ハート)が、震えている……。



「僕……お、俺はぁ!! 俺わ、強くなるっ!!」



 唐突に叫び声を上げた(カエデ)くんが、「シュゴオォォ……」と足もとから土煙を上げながら、「ウオオォォォ……」と雄叫びを上げ、(ツタ)の巨大植物が生い茂る全身50メートル強の涅槃(ねはん)の巨大神像の(ヘソ)の部分の空洞へと全力疾走(オーバードライブ)し、(フル)加速(ダッシュ)する。



「か、(カエデ)くん……!?」



「ま、待ってー!! (カエデ)ー!!」



「あ、(あるじ)ーっ!! (カエデ)くんっ!!」



 これには、私たち三人……特に夢葉(ユメハ)が、一番驚きを隠せてなかった。

 (カエデ)くんに、置いてけぼりにされた私と夢葉(ユメハ)とイケメン吸血鬼(ヴァンパイア)なピピ郎は、慌てて(カエデ)くんの後を追った……。












 


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― 新着の感想 ―
[一言] 楓君。 勇気は無謀とは違うのよ(`・ω・´)
[良い点] 楓くん、覚醒できるといいな☆彡 でも以前より勇気もあるし、行動力も備わってきたと思います! 成長が楽しみです(*'ω'*) それと夢葉と黒音の楓争奪戦も楽しいです♪
[良い点] ピピ郎がみんなに馴染んできてるのがなんだか以外です(´▽`) あらまぁ楓くん。 気持ちは何となく察しますが、突っ走っては危ないよ(;´Д`) マナさんの時もそうでしたが、皆さんひとりひとり…
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