『守護神(ガーディアン)』……。
(たくさん霊力が、ザワついているのは街の方……。大きな霊力を感じるのは大渓谷の方……)
私は、直感的に、そう想う……。
けど、たくさん霊力が感じられる街の方は、明るいんだけど負の霊気も感じられる。
反対に、大渓谷の方は暗いんだけど、何か凛としたモノが感じられて。
暗い割には、良い霊気が漂っていて、成仏を目指すならコッチって感じがする……。
「どうなってるの……?」
私は、漠然と空に向かって叫んだ。
機械音声が、何か答えてくれるかも知れない。
(ここは、現世と霊界の狭間……。四十九日間、現世を彷徨った後に辿り着く場所。さらに、その先の霊界へは繰り返し内省しながら孤独な時間の旅を歩みます──)
想ったとおり、機械音声が答えてくれた。
「後ろの街は……?」
気になるコトは、全部聴いておこうと想う。
(旅立てぬ者たちの住まう場所。平和とは縁遠い地獄。旅立ちの決意が生まれるまでの仮の居場所──)
「じゃあ、反対側の渓谷は……?」
(決意の者たちが歩む場所。一瞬か永年かは魂次第。輝きを取り戻せば導かれます──)
「ふーん……」
単純に考えると……。
悪いヤツらは、街の方。
改心した人たちは、渓谷の方。
けど……。
私が、そう想っていると、黒音が機械音声へと胸を「たゆん─」と揺らして叫んだ。
「デッカイ霊力が、渓谷の方から感じられるんだけど? どうなってんの?」
(導く者たち……。『守護神』と呼ばれる者たちが、存在します……。闘っても勝てません──)
「ふーん……」
黒音も、そう言って、私へと振り向いた。
「どうする? 夢葉?」
「んー……。そだね。どうしようか?」
私は、黒音に尋ねられて、また悩む。
渓谷の方は、『守護神』と闘えるけど、勝てない。
たぶん、文字通り『神レベル』?
けど、一度は、手合わせ願いたい……。
負けたら、どうなるのかな?
私たちの魂は消滅しちゃうのかな……?
「『守護神』に負けたら、どうなるの? 私たち、消滅しちゃうの……?」
機械音声に向けた私の声が空に響く……。
(いえ。この『世界』での『霊的体力』は、架空です。『霊的体力』が0(ゼロ)になった者から現世へと強制転送されます──)
私と黒音は、顔を見合わせて叫ぶ──
「「 『守護神』……!! 」」
鶴の一声? とでも言うのかな?
言った私が言うのも、何だけど。
楓と吸血鬼なピピ郎の男性陣が、私と黒音の意見に押されている。
「んー……。どうなんデスかねぇ? 闘った瞬間に、ハイ!さようならーなパーティー全滅状態になりませんかね?」
そう言ったピピ郎の言葉の後に、続けて楓も困った表情で言う……。
「時間考えるなら、街の方へ行って、封印の浄霊師たちに封印された『悪霊』たちと闘う方が良くないかい?」
それもそうだ。
そうかも知れない……。
けど……。
「『守護神』と闘うんだからっ……!!」
ワガママだ。私は。
ワガママかも知れない。
けど、黒音も珍しく楓にたてついた。
「良いんじゃない? 楓くん? 基本的には楓くんの意見に賛成だけど、夢葉も、ああ言ってるし。それに、『神レベル』ってのが、どれほどのモンなのか知っときたいし? 次の『討伐浄霊作戦』でも役立つんじゃない?」
珍しく、黒音が、私に味方した。
楓やピピ郎の言う通りかも知れない。
けど、私は──
(ごめん……。楓……)
内心、私は、本当にそう想った。
「フフ……。良いよ? 夢葉の気持ちに従う」
楓の優しい言葉に、少し私は、胸が「たゆん」と揺れて、泣きそうになった……。




