『セーブポイント』……。
─夢葉視点─
(ズゴゴゴゴゴ……──)
私が、「行くよ!」と決意の言葉を叫んだ瞬間──
足もとから、ゆっくりと色づき始めていた『世界』が、巨大な振動音とともに急速に色づき、その全貌を明らかにした。
「こ、これは……!?」
私は、目を見開いて驚く。
私たちは、青空の広がる一面お花畑のような小高い丘の上に立っているのだけれど──その下。
眼下には、いわゆる中世ヨーロッパのような街並みが、広がっていた。
赤い屋根のような住居群。巨大な塔。何処かへと続く大きな川。お城みたいなモノまである……。
不思議なコトに、私たちの頭の上の空は青いのに、遠く地平線の彼方へと近づくほど……空が赤い。夕焼けのようにも見えた。
「おーい! こっち、こっちー!!」
後ろで、黒音の声が聴こえた。
振り返ると、さっきまで黒音と一緒にいた楓もフラフラと立ち上がり、まだ眠たそうに目を擦っている。
黒音が、四つん這いになりながら、私のいる方向とは真逆の方向の景色を指差して驚いている。
「こ、これって、何なの!?」
黒音が、指差す方向に臨むのは、いわゆる大渓谷のような赤い大地。
切り立った巨石群に巨大な岩山と土壁が、天然自然の大迷宮を成している。巨大迷路だ。
同じく、私たちの頭上は青空が広がっているのに……そちらは、暗雲立ち込める暗闇の空。時々、雷みたいなのが、光っている。
私の後ろで、ピピ郎の気配を感じた。
「ふーむ……。どうやら、ここは、『死者の国』のようデスねぇ?」
「「「 『死者の国』!? 」」」
ピピ郎の言葉に、私と黒音、それに目覚めたての楓も目を見開いて驚く。
「あ、私。一度、芸術に挫折して現世を去った時、コチラ側に来た時があるのデスよ? あきらめてましたので、成仏シかけてたんでしょうかね?」
ピピ郎が、ピピ郎の知られざる過去について、ほんの少し語った。
「で、デスねぇ。その時、しばらくこの辺りを彷徨ってたのデスが、想い出しましたよ?」
ピピ郎が「パチン!」と指先を鳴らすと、さっき私の頭の上にあった『職業名』や『レベル』、『ステータス表示』の文字や数字なんかが、黄緑色の蛍光色で「フォン……」と、再び現れた。
それと、さっきまで無かった小さな球状の方位磁石のようなモノが、私とピピ郎と黒音と楓の四人の真ん中で浮かんでいる……。
その小さな球状の方位磁石のようなモノは、「クルクル」と回転してて、全方向に向けて矢印を出して、回り続けている。
黄緑色の蛍光色を放って。
現在位置情報とかを示すモノだろうか?
「あ、コレ。私の時にも、ありました。どうやら、どっちでも良いから、早くココから進めってコトですかね? ま、私は彷徨っている内に、やっぱり芸術をあきらめ切れなくなりまして、この場所に佇んで居ましたら、再び現世へと送り返されたワケなんですがね?」
ピピ郎が、黄緑色の蛍光色の光を放つ小さな球状の方位磁石のようなモノを眺めながら、目を細めて言った。
(現世に戻るのに、そんな時間が掛かるの? 困るなー……)
そう想った私は、空に向かって叫んだ。
「今すぐ出して……!!」
すると、空から光が射し込んで来て、機械音声の音のような声が響き渡った。
(ログアウトしますか──? セーブ後に現世へと転送します──)
「すぐ出られるじゃん?」
機械音声の声を聴いた私は、「ジトッ……」と、ピピ郎を見つめながら言った。
「やっぱりねー……」
頭の後ろで手を組んでた黒音も、胸を「たゆん─」と揺らしながら、ジト目を向けてピピ郎に言った。
「ウッ……」
私と黒音の言葉に、ピピ郎はメンタルを削られ、落ち込んだようだ。
「まあ、初めての経験なら、分からないコトだらけだよ? 仕方が無い……」
楓が、ピピ郎のフォローに入った。
さっきまで、「ウッ……」とか言って、肩を落としてたピピ郎が開き直り、目を輝かせて顔を上げた。
「デスよねー! 楓くん!! 流石は、我が主!!」
ピピ郎が、いつもの状態に戻った。
ピピ郎は、メンタルの回復が早いと想う。
「で、どっちに進みマス……?」
ピピ郎が、私と黒音と楓の意見を伺いつつも、「クルクル」と自身を回転させて、華麗にターンを決めて言う。
「「「 うーん…… 」」」
私と黒音と楓が、腕組みしながら口を揃える。
(悩むね……。けど……)
直感的に、ある方向を見つめると、楓の姿が視界に入った。
楓の視線の先には、私が居る。
こんな時に言うのも、変だけど……。
私は楓に見つめられて、「キュン」とした……。




