スタート……!!
─夢葉視点─
ピピ郎は、『幻術師』。
黒音は、『詠唱士』。
お爺ちゃんの言ってた大雑把な職業名とは違い、より詳細な職業名になっている……。
ピピ郎が、言うにはだけど。
「わ、私は……?」
時間も無いし、早く戦闘して『経験値』積みたいけど、ちょっと気になったからピピ郎に聴いてみた。
「夢葉さんですか? 概ね分かりますが、少し視てみましょうか……?」
ピピ郎が、そう言って指先を「パチン!」と鳴らすと──私の頭の上に、何やら文字と数字のようなモノが浮かび上がり……黄緑色の蛍光色で何やら表示されて光っている。
なんで、ピピ郎には分かるんだろう……?
「『気闘士』……? 『レベル10(テン)』……?(……なんか、強そう?)」
「フフフ……。『気闘士』とは、かなり希少ですね? 視たコトが無い」
ピピ郎の頭上にも、『魔法幻術師レベル13(サーティーン)』と、黄緑色の蛍光色が浮かび上がっている。
黒音の頭上には、『黒呪詠唱士レベル10(テン)』。
昏睡状態のまま、のびて倒れている楓の身体の上には、『癒融合浄霊師レベル10(テン)』と、私と同じ黄緑色の蛍光色が浮かび上がっている……。
(『癒融合浄霊師』……? )
んー……。長たらしい職業名だけど、楓は、私と黒音とを憑依させて闘うからかな?
それに、楓が憑依状態だと、私も黒音も楓も『霊的体力』や『霊力』……その他、諸々(モロモロ)が全回復する。
(それにしても……)
なんで、ピピ郎には分かるんだろ?
指先「パチン!」で、表示?
しかもピピ郎は、レベル13(サーティーン)で、私はレベル10(テン)。
ピピ郎に負けた。
でも、私と黒音は同じレベル数値だけど……。
あ、それより、楓──
「そんなコトより、楓くん目覚めさせる方が先じゃない?」
黒音が秘書課主任秘書のタイトなスーツ姿で、スラリと立ち……ピピ郎と私に向かって、私と同じくらい大きな胸を「たゆん──」と揺らしながら言った。
(……いやいや、ピピ郎が楓を目覚めさせるための『魔方陣』を発動させようとした時に、黒音が職業のコトをピピ郎に聴いたからじゃん!!)
──黒音は、私より天然だ。
「デスよねー。黒音さん? 私も楓くんを目覚めさせるための『魔方陣』を発動させないまま待機させてマスし、ね?」
──流石のピピ郎も、苦笑いしている。黒音は、ピピ郎よりも天然だ。
「では……」
ピピ郎が、そう言うと──
楓とピピ郎との間で、待機しながら宙に浮いていた円形を縁取る五芒星の魔方陣が、楓の身体の中へと吸収され、吸い込まれてゆく……。
「う、うーん……」
楓が目覚め、眠たそうに瞼を擦りながら、ネクタイの締められたスーツ姿の上半身を起こそうとしている。
「楓っ、くーん……!!」
起きたての楓の上半身に飛びつき、両胸を「たゆんたゆん」させて抱きつく黒音。
「ちょ、クッ、黒音ー……!!」
またしても、黒音に先を越される。
私は、黒音よりも、いつも出遅れてしまう……。
「アハッ! いや、ごめんゴメン。夢葉。……楓くん? お目覚め? 大丈夫?」
黒音の「たゆんたゆん」な両胸に、楓の顔を埋めさせる黒音。
ここは、『巨大画面』の中だから、『霊』であってもお互いに触れられるようだ。
楓自身も『幽体』だけの姿だから。
黒音が楓を抱き締める姿に、憤りや嫉妬よりも、私は「ガクッ」と肩を落とす……。
なんとなく、私は、黒音に劣等感を感じてしまう……。
(イケない……)
私は、俯いて、「しっかりしなきゃ」って想う。
深く息を吸い込んで、静かにゆっくりと息を吐き、呼吸を整える。
顔を上げる。
私が、自身の身体の前で、両の手の拳と拳をぶつけると……空気を振動させる音が、この場に鳴り響いた──
(バン……!!)
「行くよっ!!」
私が、そう叫ぶと、黒音も楓もピピ郎も、みんなが私へと一斉に振り向いた。
私の胸が、「たゆん──」と揺れた……。




