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レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
第一章 呪霊解きの世界……。『ウィズ ゴースト レインボー』
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『名前』……。

─楓視点─

「おはようございます! (カエデ)くん! 今日も絶好の芸術(アート)日和(びより)ですねぇー」



 朝の青空のもと──


 イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風なアレなこの男は、朝からご機嫌な様子である。

 筆を執り、「キャンバス」に思う存分、油彩画が描かれている。

 

 とは言え、男が直接、絵筆を握るのではなく……「キャンバス」に(あらかじめ)め仕込んでおいた「異空間魔方陣」が、男の想いどおりに絵の具の色を選択して吸収して行くのである。


 誰もいないのに、真っ白なキャンバスに、自動で浮かび上がって来る絵。

 摩訶不思議な光景である……。



「おはよう……。朝から調子が良いようだな」



 俺は男に、そう言って……。

 まだ、男の『名前』を聴けていなかった事を思い出す。


 

 ──2度目の『浄霊指令(ミッション)』から今日で数日が、経つ。


 

 俺と夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんは、この数日間、忙しくバタバタしていた。

 

 と言うのも、俺と夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんが、2度目の『浄霊指令(ミッション)』を終え、この寺へと帰って来て早々──


 会長(じいさん)浄霊師(エクソシスト)仲間の一人が、ある『浄霊指令(ミッション)』中に倒れたとの訃報が、会長(じいさん)の寺の本堂に設置されてある『巨大画面(オンラインゲーム)』の方へと転送されて来たからだ。


 幸い、今のところ、命には別状は無い様子だが、かなり『霊障』が酷いらしいとの事だった。

 

 『霊障』というのは、いわゆる『(アレ)』から受けた『呪い』みたいなものである。

 言葉にするのも躊躇(ためら)うほど、良くない。

 つまり、『呪い』のせいで何らかの要因が突発的に生まれ、生命が危ぶまれると言う事だ。


 会長(じいさん)の仲間も『浄霊師(エクソシスト)』であった事もあり、なんとか自力で『浄霊指令(ミッション)ポイント』から脱出し、命辛々(いのちからがら)逃げ帰ったようなのだが──


 搬送先の病院で様態が思わしく無いため、急遽、ウチの会長(じいさん)が呼び出され、この寺の留守番を俺と夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんが、しなくてはならなかったからだ。


 『結界』や『解呪』を得意とする会長(じいさん)


 会長(じいさん)のおかげで、その『浄霊師(エクソシスト)』仲間も命を取り留めた。

 今は、様態も安定して、回復して来ているらしい。


 そう言う理由で、会長(じいさん)の留守中の『結界』の維持及び、「お勤め」と称される儀式儀礼の数々……その他、事務手続きや、会長(じいさん)の管理する「お悩み霊サイト」の代行管理業務、等々。

 それらをこなした上で、いつもの寺の掃除も、こなす。


 「良くまあ、これだけの数の仕事をこなしていたものだ」と、感心するくらい、会長(じいさん)の留守中の代行業務に日々追われ、俺と夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんは、バタバタと忙しく駆け回って「グッタリ」としていた……。

 実はこの数日、三人とも忙し過ぎて、寺の掃除までは手が回らなかった。



「疲れたよー! あぁ、疲れた! もう、無理!! 休憩っ!!」



 流石の夢葉(ユメハ)も、この寺の『結界』の維持に霊力を使い、巨大画面(オンラインゲーム)の設置された寺の本堂の床に「ゴロリ」と寝転んだ。



「だよね。夢葉(ユメハ)。疲れたよねー。(カエデ)くん? (カエデ)くんの中に入って、『霊力充電』シても良いかな?」



「賛成っ!! (カエデ)の中に入って『霊力充電』シたら、『三位一体』の『憑依状態』になって、三人で残りの仕事もササーッとやっちゃえば良いじゃん!!」



(いや……。そうすると、俺だけ『霊的体力(ひっとぽいんと)』が大幅に削られるから、俺としては、遠慮したい気持ちで一杯なのだが……)



 俺の気持ちを他所に──


 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんが、俺の身体の中に入って来る。



(フフッ……。仕方ないな……)



 俺は半分諦めて少しだけ笑い……聞き分けのない可愛い夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんを、(ふところ)へと呼び込み、座禅しながら瞑想を始めた……。



 特に、お経が読めるわけでは無いが──


 静かに目を閉じて、『三位一体』の『憑依(トランス)状態』に集中する。

 まるで、2度目の『浄霊指令(ミッション)』の時のように金色の紅い『霊力(オーラ)』に包まれている感覚が俺の全身を覆う。


 俺の中で、無邪気に夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんが、遊んでいたようだが、やがて静かになり──俺も心地良くなって眠ってしまった。



(どれくらい眠ってしまったのだろう……?)



 俺が眠りから覚めて目を開けると、イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)な男の顔が、俺に口吻けでもするかのように、視界一杯に迫って来ていた──



(カエデ)くん? 目が覚めたかね?」



「うわわっ!? な、何シてる!?」



「いえ……。お寺のお掃除が終わりましたので、ご報告に……と思ったのですが?」



「え!? あ、ありがとうっ!!」



 俺は、この男に、心の中から感謝した。

 しかし……。


 

(『名前』は、何て言うのだろう……?)



 ずっと、気にはなっていた。

 ここ数日の忙しさもあってか、聴く機会(チャンス)が無かった。

 それでも、名前も知らないまま、このままずっと、このイケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風なアレな男と過ごすのも……申し訳ない。



「そ、そうだ! 名前は? 名前は何て言うの?」



 俺は、思い切ってドキドキしながら聴いてみたが、それはもう一つ──ある事が気になっていたからだ。


 どうも、この男の顔立ちは、イケメンとは言え……明らかに日本人とは異なるからだ。

 ヨーロッパ? イタリア系?



「私の名前ですか? フフッ……。いつ聴かれるかと待ってましたよ? 私の名前は、『アルフォンソ=ピッピストレーロ』!! 良い響きでしょ?」



「アルおんそっ? ピッピ、すとれぃろぉ?」



 俺は上手く発音出来ずに、舌を噛みそうになる。

 特に最後の「すとれぃろぉ」が、物凄い「巻き舌」で発音されている……。

 俺には無理な発音だ。



(んー……。困った……。何て呼ぼうか……?)



 ──と、そこへ……。



「ワシじゃ!!」



 寺の本堂に設置された巨大画面(オンラインゲーム)が、「ブン……」と不気味な音を立てたかと思うと──画面一杯に、会長(じいさん)と良く似た顔の夢葉(ユメハ)曾祖父(ひいじい)さんの顔が、超至近距離で、いきなり映し出されていた。



「「「ひぃえぇぇ!?」」」



 俺と、俺の中でさっきまで(くつろ)いでいた夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんが、驚いてそろって声を上げた。

 俺の中で、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんの胸が「たゆん─」と揺れたのを感じた──



 




 


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― 新着の感想 ―
[一言] じゃあ君はハガ○ンな感じでアルくんで!(ビシッ
[良い点] イケメン吸血鬼の名前、カッコイイけど覚えられないタイプですね( *´艸`) 三人の仲がより深くなってムフフ♡となっております(〃ω〃)
2022/05/11 19:39 退会済み
管理
[良い点] アルフォンソ=ピッピストレーロ…イケメンヴァンパイアさんには申し訳ないですが言いにくいですね(^_^;) >俺の中で、夢葉ユメハと黒音クロネちゃんの胸が「たゆん─」と揺れたのを感じた──…
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