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レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
第一章 呪霊解きの世界……。『ウィズ ゴースト レインボー』
59/88

『浄霊指令(ミッション完了)』……!!

─楓視点─

(フォン……)




「うぉっ……!!」



 俺と夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃん、それに若い女性二人と名も知らないイケメン吸血鬼(ヴァンパイア)なアレな男を乗せた『異空間魔方陣』が、地下室から急上昇したかと思うと、いきなり地上に飛び出た──



「な、なんだ……!?」



 突然の出来事に俺は驚く。


 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんも驚いた様子で「たゆん──」と胸を揺らす。



「地上……ぉ?」



 黒音(クロネ)ちゃんが、大きな目を見開いて夢葉(ユメハ)に言う。



「地上……だね?」



 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんと顔を見合わせて言う。



「フッフッフ……。さてさて、(カエデ)くん? 約束は果たしましたよ? 私を何処へ連れて行ってくれるのかな?」



 イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)なアレな男が、金色の長い髪の毛を掻き上げ、華麗にターンを決めながら言う。


 このイケメン吸血鬼(ヴァンパイア)な男の(アレ)的なイメージだろうか?


 前は、オジサマ風な黒髪オールバックだったのに、若返ったせいか、イケメン金髪ロン毛に仕上がっている。


 黒ズボンに、ワイルドに胸の開いた大胆な白カッターシャツ。

 口もとには真紅の赤い薔薇が似合いそうだ。

 おまけに、透き通るほど色白。

 吸血鬼(ヴァンパイア)なアレなイメージだからだろうか……。



「この若い二人の女性たちの救助が先だ……」



 俺は、自分の身の丈に合わない真面目(マジメ)台詞(セリフ)を吐く。



「フフフ……。まあ、そうですよね?」



 呑気(ノンキ)なもんだ。『(アレ)』だからか? 知ったこっちゃあ無いのか? 他人事か?

 

 まあ、『(アレ)』なんて、そんなもんかも知れない。

 命の心配など、知る(ヨシ)もがな……。

 無責任に彷徨(さまよ)うコノ世の『(アレ)』たち。


 と、ここまで言っておいて、俺は前言を撤回する。


 何も俺たちとは変わらない……。

 喜怒哀楽の感情もあるだろう。

 ただ、コノ世にとらわれるほど成仏出来ない想いを抱くなら、俺たちと同じ。

 俺だって、「(アレ)になって直ぐ成仏出来るか?」と問われれば、答えは「ノー」だ。


 

(まあ、良いのさ……)



 俺は、顔を上げて、市役所管財課の田中さんを探す──と、けたたましいサイレンの音が幾重にも重なり鳴り響く。


 赤いランプが何台も、(まぶ)しいくらいに回転し、点灯して光る。

 赤いレーザーポインターで視界を奪われたように、(まぶ)し過ぎて(まぶた)を開くことが出来ない。


 おそらく、何台ものパトカーに救急車、消防車が、次々と到着して来ている。



「大丈夫ですかっ!?」



 救急隊員たちが、俺の目の前で倒れている二人の若い裸の女性たちのもとへと駆け付ける。


 突然現れた俺たちに驚きながらも、失踪していた二人の若い女性たちが目の前で裸で倒れているのを発見して、さらに驚いたコトだろう……。


 

 と、そこへ、警察官がパトカーから降りて来て、俺へと詰め寄って来た。



「署までご同行願えますか?」



(うわ! 来たー!!)



 俺は、とてつもなく憑かれている、いや、疲れているのに、容疑の目を向けられ、おまけに休む間も無く警察署へと連れて行かれそうになった……。


 もちろん、救急隊員や警察官たちには、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃん、それにイケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風なアレなこの男の姿は、見えていない。


 コイツが、真犯人だと言うのに──



(ギロリ……)



 俺は、アレなイケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風なこの男を(ニラ)む……。



「ハハ……。ナントカに(くち)無しですよー……?」



 「ふざけるな!」と、俺は、この男に言いたい。


 しかし、真相を語れるのは、ほぼ俺だけ。


 倒れている二人の若い女性たちの体力が、回復したとしても、何も覚えていないかも知れないし、まだ何らかの術が施されていて、「口封じ」されているのかも知れない。

 あるいは、記憶を奪われているとか……?


 いや、それは無いものと考えられる。


 一度は、この男の(タマシイ)も滅びかけたなら、術は一旦解除されているはず。


 けれども、『幻術操作』の特性として、術を掛けられた者は、「催眠状態」に陥るため、ほとんど覚えていないモノと思われる。

 まるで、夢でも見ていたかのように……。

 あくまで、俺の予想だが……。


 

 そうこうしていると、心配そうに見ていた市役所管財課の田中さんが、疲れ果てた俺のもとへと、駆け寄って来た。



「どうなりました!? 大丈夫ですかっ!?」



 「助け舟」を求める俺の視線に感づいた市役所管財課の田中さんは、事の成り行きを俺とともに、丁寧に警察官へと話してくれた。


 『(アレ)』のコトなど、事情聴取の中では、ただの妄言としか、とらえられないだろう。

 通用しないのが、現実世界なのだ。


 なので、N県S市市役所からの依頼で、取り壊しの決まった物件の「お祓い」に来たら、たまたま廃墟ホテルの中で、失踪した二人の女性を発見した──


 ──と言うコトになった。



 しかしながら、イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風なアレなこの男が、この土地を離れると、この男の『霊力(チカラ)』が及ばなくなり、途端に建物の倒壊が始まる。


 俺は、市役所管財課の田中さんを交えて、建物倒壊の危険が間近に迫って来ている事を懇々と説明する。

 

 そして、イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風なアレなこの男に、安全に作業が終わるまで、きちんと見届け、この土地から離れずに見守るよう言い伝えておく。



「ぐっ……。責任を取れと言うコトですか……」



 イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風なアレなこの男が、しょんぼりとして肩を落とす。



「因果応報ってヤツ? 自業自得だよねー……?」



 夢葉(ユメハ)が、「チラリ」と男を横目に見て、両手を腰に当てながら……「フーッ」と息を吐く。

 夢葉(ユメハ)の両胸が「たゆん─」と揺れる。



「だよねー。せっかくイケメン君になれたのに? 残念だったねー」



 黒音(クロネ)ちゃんが、悪魔の如く「ニヤリ」と笑い、悪戯(イタズラ)っぽくアレな男の肩を「ポンポン」と叩く。

 と、同時に、黒音(クロネ)ちゃんの胸も「たゆんたゆん─」と揺れた……。

 


 俺は、会長(じいさん)の寺の住所を、イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風なアレなこの男に口頭で伝え、男の『異空間転移能力』で自力で寺へと帰って来るように言い残し、その場を去った。



「ちゃんと、最後まで、見守るんだぞ? 約束は、その後だ」



「分かりましたとも……。必ずや、やり遂げて帰って来ますとも……」


 

 市役所管財課の田中さんに『浄霊指令(ミッション)完了』の挨拶を済ませて現地解散し、俺と夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんは無事に寺へと帰路に着いた。

 

 途中お約束で、高速道路のパーキングエリアのトイレに寄ったついでに、俺と夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんの三人で、土産物売り場に寄ったが、案の定、ひと騒動あった。


 しかし、それよりももっと驚いたコトに、俺と夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんの三人が寺へと戻ると──


 イケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風なアレな男が、ご機嫌な様子で俺たちの帰りを待っていた……。



「我が(あるじ)(カエデ)くん。お帰りなさいませ……。いや、(あるじ)を『(カエデ)くん』と呼ぶのはオカシイかな……?」



 聴くところによると、誰もいないコトを確認した上で、男の『異空間操作能力』で倒壊寸前の廃墟ホテルを『異空間』に包み込み、さっさと更地(さらち)にして帰って来たと言う……。



 まだ、名も知らない……このイケメン吸血鬼(ヴァンパイア)風な男との新たなる生活が、始まろうとしていた。










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― 新着の感想 ―
[一言] 再会早かった!?(;゜Д゜) いやぁ、さわがし……賑やかになりますねぇ(;゜Д゜)
[良い点] 楓くんの死に対する恐怖がリアルで、わーっ!ってなりました。 確かに怖いですよね〜。 すぐに成仏できるか……うーん、できない、かもです´д` ; イケメン吸血鬼キターーーー!! まさか新たな…
2022/05/04 15:15 退会済み
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[一言] 仲間が増えましたね~♪(^^)d たゆんではありませんが(^ω^)
感想一覧
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