表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
第一章 呪霊解きの世界……。『ウィズ ゴースト レインボー』
50/88

敵(ターゲット)……。




「ふむぅ……。どうやら、敵さんの(マイナス)のオーラに、ワシら全員、取り囲まれてしもうとるようじゃの……」



 ハンズフリーにしておいた俺のスマホから会長(じいさん)の声が聴こえて来る。



「会長っ!! 黒音(クロネ)ちゃんはっ!? 黒音(クロネ)ちゃんは今、何処にいるんですかっ!?」



「落ち着け。(カエデ)くん。黒音(クロネ)ちゃんの本気(ガチ)モード『呪いの(ポテンシャル)発動(ブースト)は凄まじい。黒音(クロネ)ちゃんは、ワシらの目の前から消えはしたが、まだ敵さんにヤラレたワケでは無いじゃろて……。しかしながら、ワシも(カエデ)くんのゴーグルを通じて遠隔霊力操作(リモート)()ておるのじゃが、黒音(クロネ)ちゃんの所在はまだ(つか)めておらん」



 ハンズフリーにした俺のスマホから会長(じいさん)の声だけが響く……。

 日が落ちたせいで、夕方から夜になり、いよいよ(アチラ)さんに有利な展開になって来た。

 俺たちは、完全に不利(アウェイ)ってワケだ。


 暗闇が支配する心霊廃墟ホテル内部で、俺のヘルメットのヘッドライトだけでは一部しか照らせず、周囲全体を見渡せない。


 黒音(クロネ)ちゃんの言ってた、(ターゲット)の「転移用」の『呪い』も壁に複数描かれているワケだし、いつ何処から(ターゲット)が襲って来るか、分からない……。



(カエデ)くん。ゴーグルを『暗視カメラ』に切り変えてくれんか?」



 ハンズフリーにしておいた俺のスマホから会長(じいさん)の声が聴こえる。


 会長(じいさん)の指示どおり、ゴーグルのフレーム横にある小さな電源(スイッチ)を2度押しすると、ゴーグル内の視覚が、暗視カメラのように切り変わり、さっきまでの暗闇が昼間のように明るく()える。



 と……。


 さっきから、夢葉(ユメハ)の声が聴こえ無い。

 気配すら感じられ無い。


 全身に鳥肌が、立ち……俺は身震いする。



「か、会長……。夢葉(ユメハ)が、夢葉(ユメハ)が、いません……」



 絶望の闇が広がり、俺は身動きひとつとれない。



「な、なにっ!? すまぬ、(カエデ)くん。(カエデ)くんとの会話の遣り取りに気をとられ、夢葉(ユメハ)までも……。えぇぃっ!! 大丈夫じゃ!! 夢葉(ユメハ)とて、まだヤラレとらんわいっ!! なんせ、ワシの孫っ!! 大丈夫じゃ!!」


 

 根拠の無い会長(じいさん)の発言だが、今は会長(じいさん)を信じるしか無い。


 それと、消えてしまった黒音(クロネ)ちゃんと夢葉(ユメハ)のことも……。


 ハンズフリーにした俺のスマホから聴こえる会長(じいさん)の声は、今の俺にとって唯一の希望の光だ。


 祈るような気持ちだ……。

 

 ガタガタと震えながら、黒音(クロネ)ちゃんと夢葉(ユメハ)の無事を必死で祈る。


 けれども、時間は待ってはくれない。


 向かう先は、ひとつ。


 地下室だ──


 

 

(カエデ)くんや。しばし待ってはくれんかの? ワシの画面(オンラインゲーム)の方で、地下室への(ルート)を探索するから、今からワシの言うとおりに進んでくれんかの?」



 ハンズフリーの俺のスマホから会長(じいさん)の声が聴こえる。


 画面(オンラインゲーム)越しにコチラの様子を()ている会長(じいさん)


 会長(じいさん)の誘導に従って、俺は「地下室」へのルートを歩みながらも、黒音(クロネ)ちゃんと夢葉(ユメハ)の無事を必死に祈りつつ、女性失踪事件との関連性を考えていた。

 

 

 ──(ターゲット)は、若い「女性」に固執シている。

 

 

 なので、男である俺には興味が無い?

 

 

 『未練』や『執着心』がアレな存在を、この世にとどまらせる『原動力』になっているのなら──


 

 興味が持て無い『男の俺』に対しては、『呪い』を発動させる『(パワー)』が100%発揮できずに、弱まる。


 結果的に、(ターゲット)が壁に描いた『呪いの模様』に、俺を引きずり込むコトが出来なかったのではないだろうか?

 

 楽観的過ぎるだろうか……?

 

 

 だが、もし、俺が、若い女性だったならと思うと、「ゾッ」とする。

 あるいは、もし、(ターゲット)がより凶悪で、男女問わず『命を獲る』ことにだけ固執していたのなら……。


 

 しかしながら、失踪した女性たちが、その先、どうなったのかまでは、俺には分からない……。


 やはり、黒音(クロネ)ちゃんと夢葉(ユメハ)のことが、心配だ。

 

 

 と、その時一瞬、足場の悪い床に散乱したガラクタや木の枝に、あわや足もとを取られ、俺は転倒しそうになった。



「!? ふぅ……。危ない、危ない……。気をつけないと」



 俺は、スーツ姿だが、会長(じいさん)から支給された登山用の安全靴を履いている。


 敵襲ではなく、自分のただの不注意に少し安堵(あんど)する。


 ゴーグル内の「暗視カメラ」を注意深く覗き込みながら、画面(オンラインゲーム)から指示を出す会長(じいさん)の誘導に従い、俺は「地下室」へと降りる「階段」を探し当てた。

 


 ハンズフリーにした俺のスマホから会長(じいさん)の声が聴こえる。



「ワシじゃ! (カエデ)くん! 分かっているとは思うが、いよいよ敵さんの本陣じゃ! 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんが、敵さんに引きずり込まれた事から、敵さんには異空間転移能力がある! そして、おそらく夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんも、そこにおる!!」



「……!? そ、そうですか! 会長……!! よ、良かった……」



「うむ! どうも、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんは、敵さんの(つく)り出した『異空間』にとらわれているようじゃ! 分かりにくいが、微弱ながらも二人の『霊力』が感じられるぞいっ!!」



「分かりました……!! 心して(のぞ)みます!!」



 一歩、一歩。


 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんの「生存報告」を会長(じいさん)から聴き、俺は本当に安堵する。


 だが、黒音(クロネ)ちゃんも夢葉(ユメハ)も、まだ(ターゲット)の手の中。


 俺は、「地下室」までの階段を一歩一歩、注意深く降りながら考える──



 (ターゲット)は、生きている若い女性や、アレな夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんを捕獲出来るほどの、なにがしかの能力(チカラ)を持っている。

 しかしながら、瞬間的に致命傷を俺に与えられるほどの瞬発力(パワー)は、持ってはいなかった……。


 

 もし、致命傷を俺に与えられるほどの瞬発力(パワー)を、(ターゲット)が持っていたのなら、とっくに俺はヤラレていたんじゃないのか?

 

 死傷者が今まで出ていないことを考えてみても、(ターゲット)には、そこまでの『(パワー)』は無いものと考えたい。 

 

 

 そして、「失踪」という(ターゲット)の『力の誇示(こじ)』の仕方からも、そのように判断出来(うかがえ)る。

 

 

 (ターゲット)は、「転移用」の『呪い』を床や壁などの物体に描くコトで、遠隔操作能力(リモート)で物や人を取り込んだり、自身を転移させて空間を移動させるコトには自信があるようだ……。

 

 しかし、(ターゲット)本体は、至近距離における接近戦(タイマン)では、さほどの破壊力(パワー)は持っておらず、あまり自信が無いんじゃないだろうか……?

 

 ……そう思いたい。

 

 

 (ターゲット)が、夢葉(ユメハ)のように直接物や人に触れられる条件は、(ターゲット)自身の描いた『呪いの模様』に近づいたものだけ。

 

 

 臆病者だ──



 俺と同じ……。


 

 俺は、暗闇の中へと沈み込む「地下室」へと降りる階段を降りながら、(ターゲット)を討伐する事だけに意識を集中させていた。


 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんを救出するために……。



 











 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いきなり大ピンチ(;゜Д゜) いったいどうなっちゃうのぉ(;゜Д゜)
[良い点] わぁ、シリアスな展開になってきましたねΣ(゜д゜lll) 夢葉ちゃんも黒音ちゃんも心配……(>_<) 地下室……怖いですが楓くん、頑張れ!!
2022/04/19 20:09 退会済み
管理
[良い点] 夢葉ちゃんと黒音ちゃんのためにも~… 楓くんガンバレ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ