アクセルはフルスロットル……!!
─楓視点です─
N県S市──
そこは、社用車の軽トラに乗って、朝から時速100キロ超えにしてアクセル踏みっぱなしの高速道路を飛ばして、連続運転すること6時間強の道のりだった。
途中、パーキングエリアにトイレと土産物売り場に寄った時に、俺は『幽霊名刺』をこっそりと胸に仕込むのを忘れずに、浄霊用装備品の確認を怠らない。
そんな俺を尻目にシて……。
夢葉と黒音ちゃんが、さっそくの土産物売り場で、ハシャいでいる──
「これ見てみてー! 可愛いっ! 夢葉! ご当地キャラだよー!!」
「ふあー! 何コレ!? 試食品のオンパレード!! 食べてみ? 黒音! とってもスイーツな味がするっ!!」
ご当地キャラのキーホルダーやらグッズに眼がない黒音ちゃん。
地域特産品のお菓子やら水産物、食品に釘付けの夢葉。
夢葉や黒音ちゃんが、ご当地モノの限定お土産に心奪われるたびに、フワフワ物が浮いたり、試食品の蓋がパカパカ開いたり、爪楊枝が飛んだりするので──
俺は、二人の動きに合わせて、怪奇現象が悟られぬように、必死で取り繕っていた……。
傍目には、何とも奇怪な男として、一般人の方々の目には映っていたコトであろう。
「く、黒音ちゃん? こ、コレが欲しいの?」
「そうだねー。コレも良いけど、アレも欲しいかな?」
財布の中身を開けて、俺は所持金を確認する。
寺に無事帰ったら、経費として会長に請求しようと想う……。
そうこうしていると、夢葉が、俺の服を「グイグイ」と引っ張って来る。
「コレ……」
「ゆ、夢葉? コレが良いの?」
「うん!」
結局、夢葉と黒音ちゃんのために、ご当地キャラのキーホルダーやら、グッズ……お菓子やら、ついでにジュースやソフトクリームまで買わされる。
俺は、缶コーヒーとカレーパン1個。
緊張シて、あまり食欲が無い。
今回の『浄霊指令』は、取り壊しの決まった物件だから、昼間の明るい内に、まずは調査を済ませたい。
事故も昼間に起こっているコトから、昼でもアレに遭遇する確率は高い。
ましてや夜は、アレの動きも活発になるから、アドバンテージを活かして昼間の内に辿り着き、潜入したい……。
俺のそんな想いを他所に──
再びパーキングエリアを出た後、軽トラの車内には、最新ランキング曲とアニメ曲が交互に代わるがわる大音量で流される。
もちろんのお菓子パーティーが俺の隣で繰り広げられ、「チロチロ」と舌先を出して夢葉と黒音ちゃんが味わっている。
最近、黒音ちゃんも舌先を「チロチロ」出して、味わう感覚を獲得したらしい……。
夢葉と黒音ちゃんの食べきれなかったお菓子やソフトクリームが、運転中の俺の口の中へと何度も放り込まれる。
「ふももも……! ぐほぉっ!!」
「おいしい?」と、夢葉と黒音ちゃんにそれぞれ聴かれ、「おうぃふぃい……」と答える俺。
俺は、えずきながらも、なんとか頬張り、全てを飲み込む。
超ストロベリーな甘さとミックスバニラチョコな味が、俺の味蕾を刺激する。
甘く幸せな豊潤な刺激……。
夢葉と黒音ちゃんの「たゆんたゆん」も相まって、俺の脳内が二人の虜になる……。
それは、そうと……。
会長は、軽トラ車内の様子を何処からか視ているんだろうか?
初めての『浄霊指令』の時は、会長も心配で視てくれていたようだが……。
視点としては、オンラインゲームさながら、俺と夢葉と黒音ちゃん三人のそれぞれ後方から視えていたようで、それでも結構『霊力』を消費するからとのコトで、俺は会長から怪しいピンク色のゴーグルを授かっていた。
ゴーグルのフレームにある小さな電源を「オン」にすると、会長が『霊力』を使わずとも俺たち三人の状況を俺視点で視るコトが出来るそうだ。
小型ピンマイクは、会長との通信用。
潜入時は、俺のスマホをハンズフリーな状態にして、音量を最大限に上げ、会長との遣り取りをする手筈だ。
ハンズフリーな状態にしておけば、夢葉と黒音ちゃんも会長と通話が出来る。
とは言え、プライバシーもあって、俺は会長に前もって確認をしていた。
でないと、夢葉と黒音ちゃんの「たゆんたゆん」に翻弄されっぱなしのリアルな恥ずかしい俺が、会長の巨大画面にCG化されて映り、叶総理事長及び夢葉の家族全員に視られる恐れがあるからだ。
俺は、プライバシーについて会長に説明し『浄霊指令ポイント』に無事到着したら、必ず連絡する旨を予め伝えている。
念のため、夢葉に聴いてみる。
「ん? お爺ちゃんの霊力? 今は感じ無いかなー?」
安心する。
俺は、夢葉と黒音ちゃんの「たゆんたゆん」を横目に、チラリと視る。
相変わらずの二人のダイナマイトな「ぱっつんぱっつん」なアノ部分が、俺の「士気」を上げる。
夢葉と黒音ちゃんの二人ともが、秘書課主任秘書としての正装を着た上で、意図されたサービスなのか、胸もとのボタンを外し「たゆんたゆん」な胸の谷間を覗かせている。
(漢として、ヤリ遂げねば……!!)
二度目の『浄霊指令ポイント』へ踏み込む覚悟を改めて決め、俺は軽トラのアクセルを踏み込みながらもほぼ同時に、もう一人の俺であるアノ部分を熱く固くする。
エンジンの回転数が上がり、俺のアノ部分も上がる。
夢葉と黒音ちゃんを隣に乗せて──
『浄霊指令ポイント』へと、ようやく辿り着いたのは、もう夕方の四時前で。
春先のまだ寒いこの季節の日照時間は短く、夕闇が迫って来ていた……。