決意……。
♤楓視点です─♧
俺は……。
俺は、情けない!!
夢葉に頭を撫でられ慰め宥められ、黒音ちゃんまで、泣かせてしまった。
なんてコトだ!!
『常世道先案内相談員』の名が廃る!!
お寺の本堂に座して動かぬ毘盧遮那仏の前で、俺は会長に決意の誓いを立てて宣言する。
「ヤラせて下さい!! その『浄霊指令』!! イカせて下さい!! その場所にっ!!」
「ほぅ。流石は、楓くんじゃ。ワシの見込んだ男」
毘盧遮那仏の両隣に立てられたロウソクの炎が揺れている。
さっきまで暗闇だった俺の心に、炎が宿り激しくナニカが燃え上がる。
「ほっほっほ」と会長が笑い、ナニやら巨大画面の裏側にあるお寺の本堂の奥から、ゴソゴソとナニカを取り出して来た……。
「ほっほっほ。楓くん。君の心意気に感動したっ!! 受け取るが良い……」
「ん……?」と、俺は会長がお寺の本堂の床に「ゴトゴト」と置いたモノを見る。
目出し帽。
鎖かたびら。
急所専用プロテクター。
携帯用超大型バッテリー。
電極のある何やら怪しい長めの金属棒。
小型ピンマイク。
とっても怪しいピンク色のゴーグルにヘルメット──
他にも、いろいろとあったが……。
ひと言で言うと、霊感0のド素人が機械で霊に挑む用の装備品の数々だった。
「楓くん! 持ってけ!! 餞別じゃよ!!」
「あ、ありがとうございます……」
会長からの、とてもアヤシイ装備品の数々だが、何も無いよりかは随分とマシだ。
初めての『浄霊指令』の時の衝撃を想えば。
魂喰の『幽霊名刺』もあるし……。
そう……。
俺は、魂をかけて戦う!!
夢葉と黒音ちゃんのために!!
……ん?
ヒトのためなのか? 世界のため? 自分のため? 何のため?
よく分からないが、行かなきゃと想う。
「それとな? 楓くん? 君は自分のコトを役立たずと想うとらんか? 確かに『パラメータ表示』は夢葉や黒音ちゃんにはカナリ劣るが、君には陰陽師とも呼ばれるアレな存在を使役する力がある。ワシらとは流派は異なるがの?」
そう……。
会長に言われて──
俺の方に振り向いて、黙って笑顔で「コクリ」と肯く夢葉と黒音ちゃんの二人と目が合う。
「パラメータの数値には無い『何か』が、君にはあるのじゃよ? 楓くん? ゆえに、夢葉も黒音ちゃんも憑いて来た。そうじゃな? お二人さん?」
もう一度、会長がそう言った後に、夢葉と黒音ちゃんが、再び俺の目を見て「たゆん」と笑顔で肯く。
「たゆんたゆん」な夢葉と黒音ちゃんに、取り憑かれるなんて、本望ではないか?
改めて、そう想う俺。
ヒトのため? 世界のため? 自分のため?
あぁ……。 そんなコトは、もうどうでも良い。
夢葉と黒音ちゃんが、側にいる。
(とにかく、ヤッてやろうじゃないかっ……!!)
側にいる愛くるしいアレな夢葉と黒音ちゃんの「たゆんたゆん」な二人を視て、俺はアノ部分を固くシながらも、心に固く決意する──




