新たなる『浄霊指令(ミッション)』……。
☆黒音視点☆
(ピロピロリーン……)
何かの通知音が、お寺の本堂に設置された巨大画面の中から流れる。
夢葉のお爺ちゃんである会長が、何かを言おうとして、私と夢葉と楓くんの三人が、さらに巨大画面の前で、釘付けになる。
「んー……? メールじゃな?」
会長である夢葉のお爺ちゃんが、そう言って──
オンラインゲーム内に届いた1通のメールを開封する。
『初めまして。叶百会様。お世話になります。N県S市市役所管財課の田中と申します。市が管理する所有者不明の建物の取り壊しが決まりまして、解体業者に工事を依頼しているのですが、原因不明の事故が多発しており作業が滞っています。幸い負傷者はまだ出ておらず大事には至っておりませんが、一度調査を依頼したくお願いに参りました』
「ふむぅ……」
夢葉のお爺ちゃんが、白いアゴ髭を左手で触りながら、何かを考えている様子だ。
オンラインゲーム内にもメール受信機能があるとは、ちょっとだけ驚いた。
てか、夢葉のお爺ちゃん『叶百会』って言うんだ?
名前……。
あぁ当然、呪いに抵抗出来るように、名前自体に結界か何かの術式が施されているよね?
そんな感じが、する……。
『叶百会』って名前を私が口にした瞬間に、弾かれたような感覚が、私の口の中に残った。
流石は、夢葉のお爺ちゃん。
ぬかりなし。
でも、会長である夢葉のお爺ちゃんが、私たち三人に言うコトは、ひとつ。
『浄霊指令』だ──
「ワシの開設した『お悩み霊サイト』に多数の全国からの依頼が殺到しておっての? たいがいワシが画面越しに遠隔で祈ればコトは治まるんじゃが、重い案件はゲームの方に流れて来るように設定しておるのじゃよ。なんせワシも、この寺の結界を守らねばならぬし、ココを出るワケにもイカン。そこでじゃ──」
はい、来たー。
夢葉のお爺ちゃんからの『浄霊指令』依頼 ──
『浄霊指令』か『依頼』になるのかは、「本格的な浄霊」か「お悩み相談」によって違うんだろうけど、今回のも『浄霊指令』の匂いが色濃くプンプン臭うよねー。
たぶん依頼メールの文面から察するに、けっこうヤバい案件な気がする。
そう言うのは、感じるんだ。
ひょっとしたら、前回の『浄霊指令』より複数にして強力なアレな存在たちが多数いるのかも知れない。
ワクワクする……。
私は、寂しがり屋だから、ひょっとしたら、やっぱりそう言う場所やアレな存在たちに、引き寄せられてしまうのかも?……なんて想う。
けど、楓くんのコトが、心配だ……。
「夢葉のお爺ちゃん改め会長? 今回のは、ヤバい案件じゃない? 楓くんが今のレベルで行っても大丈夫なの?」
「あ、それ。私も想ってた。お爺ちゃん? やっぱり、今の楓には荷が重過ぎるんじゃない?」
私だけじゃなく、夢葉も心配していたようだ。
夢葉のそんな気持ちは、なんとなく分かってたけど。
楓くんの気持ちと言うか心が、フルフルと震えていた。
怖いんだ……。楓くん。
楓くんの隣にいた夢葉も心配そうに、楓くんの顔を見つめている。
私と同じ魂の契約を夢葉も楓くんとシたから、楓くんの気持ちの動きは、夢葉にも分かるはず。
「そうじゃな。楓くんには、特別な装備をしてもらって臨んでもらうコトにしようぞ? 何、心配はいらん。ワシの特別製の装備品じゃて、問題無しじゃ!」
「問題無しじゃ!」って、行かせるんかーいっ!
さっきの楓くんの『パラメータ表示』見たら、いくらなんでも、ヤバいよぉー!
ダメだ。
楓くんが、可哀想過ぎて、なんか私、泣けて来た……。
「大丈夫だよ? 黒音。二人で楓を守れば大丈夫。それに、もしもの時は、黒音の転移能力を楓の幽霊名刺に転用して、三人でこのお寺に帰ろ?」
夢葉……。
こう言う時の夢葉はメンタルが、強い。
夢葉の『パラメータ表示』で精神力の数値でもある(めんたる)や(まいんど)も、私よりよっぽど高かった。
「それから、楓? 無事帰って来れたら、久しぶりにシてあげるよ? 大丈夫。頑張れる。ね? 楓……」
私より年下とは想えない夢葉の言葉に泣ける。
夢葉の楓くんを想う気持ち……。
今回は、夢葉に完敗だ。
楓くんの頭を撫でる夢葉の胸が「たゆん」と揺れて──
私の胸も、涙を止めて「たゆん」と揺れた……。
☆☆七海 糸様☆☆ 作 黒音『FA』DXvr.─ありがとうございます─m(_ _)m☆彡




