朝の光……。
(チチチ……)
雀の鳴き声が、聴こえる──
襖の向こうの縁側から朝の光が射し込んで、眩しいくらいに私の瞼の内側を明るくする。
(眩しい……)
そう想いながら私が目を開けると──
うす暗い床の間の壁にもたれ掛かりながら、縁側の襖から射し込む朝の光を背にして、足組みして座る黒音が、私を見ている。
「おはよ? 夢葉。よく眠れた?」
「おは……よ。黒音。ねむ……」
まだ目が覚めたばかりで、意識のハッキリしない私は、ボンヤリと夜中の出来事を想い出す。
そうだ──
「楓……?」
私が部屋の方へと顔を向けると、楓がまだ、寝息を立てて眠っている。
相変わらずのフツメンな寝顔で、髭も伸びている。
髪の毛は、くしゃくしゃで、私のお母さんから渡された旅館の浴衣みたいなのを着て眠っている。
ヨダレが、垂れている……。
「黒音ちゃん……。夢葉……。待って……」
独り寝言を言う楓。
楓は、まだ夢の中で、私と黒音と砂浜で追いかけっこでもしているのだろうか?
楽しそうに目を閉じたまま「むにゃむにゃ」と、楓がヨダレをすする……。
「おかえり。夢葉。契約……おめでと」
縁側の襖から射し込む朝の光を背にして──
うす暗い床の間の壁にもたれ掛かりながら、微笑む黒音。
黒音が、足組みをしたまま私に言った。
「あ、ありがと。黒音……」
私が、まだハッキリと目が覚めないまま言うと、黒音はより一層微笑みを強めた。
「ウフフ……。これで、夢葉も楓くんも私も一心同体。三人一緒だね?」
「ウッ」と、一緒たじろぐ私。
悪魔的微笑をする黒音に苦笑いする。
シてヤラレたのか……?
まあ、良いか……。
黒音は、黒音で、なんか思惑があったのかも知れない。
けど、結果的に、こうなるコトは分かってたコトだし。
それよりも、私の心の中で、晴れなかった心のモヤモヤが、少しだけ晴れた気がする。
「フッ……。ま、良っか……」
少しだけ笑って、寝ていた私は上半身を起こす。
イメージして着てた白い浴衣の中で、私の胸の谷間が「たゆん──」と、揺れた……。
七海 糸様 作 夢葉『FA』─ありがとうございます─m(_ _)m