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レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
第一章 呪霊解きの世界……。『ウィズ ゴースト レインボー』
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魂(タマシイ)の契約……3。





 暗い闇の世界──



 これは、(カエデ)(タマシイ)の世界なのだろうか……。


 私は、(カエデ)(タマシイ)の世界に入って、あるコトを想い出す。


 

(さっき(カエデ)口吻(キス)した時、(カエデ)に名前を告げていない……)



 私の苗字と名前は、一度、(カエデ)には伝えてある。


 でも、黒音(クロネ)の言う悪魔的儀式な(タマシイ)の契約……には、『口吻(キス)』する時に『名前』の交換が必要。


 

 (カエデ)(タマシイ)の世界──


 私の目の前には、どこまでも……闇ばかりが、広がる。


 けれど、ずっと、私の目の前の遥か先。


 青白い(ほの)かな光が、人魂(ヒトダマ)のように、頼り無く灯っては揺れている……。



((カエデ)だ──)



 静かに闇の中で揺れる青白い光を見ながら、私は、そう直感する。


 黒い闇の泉のような場所に浮かぶ静かな『ソレ』──


 どこまでも、半透明に青白く揺らめく『ソレ』は、やがて一人の人のカタチを形作る。


 ボンヤリと……。

 だんだん……。


 光が、(カエデ)になってゆく。


 生まれたままの姿……で。



夢葉(ユメハ)……?」



 まだ、目覚めたばかりの頼りない(カエデ)の意識。

 視線も、虚ろに──

 (カエデ)のようなカタチをした『ソレ』が、目の前にいる私を探して呼んだ。



「そうだよ。(カエデ)。私だよ? 夢葉(ユメハ)……。『(かのう)夢葉(ユメハ)』」



(キーン……──)



 耳鳴りのような金属音が(はじ)けたような音がする。


 普段、聴き慣れない聴きとれない音のようなナニカ。


 虚ろだった(カエデ)の目は、確かに私へと視線を向けて、こう言った──



夢葉(ユメハ)? いるの? 夢葉(ユメハ)……。(カエデ)。僕の名前は、(カエデ)……。夢葉(ユメハ)? 僕は……『川岸(かわぎし)(カエデ)』だよ……」

 


(キーン……──)



 二度目の金属音のようなナニカが(はじ)けて、私の耳の奥深くにまで鳴り響く。


 

 (カエデ)が、そう言った瞬間──



 深い闇に覆われた私の身体(カラダ)が、光輝いた。


 キラキラと光る星のような青白い粒が、だんだんと、私になってゆく。


 私の視界には闇ばかりが広がるけれど、その先には生まれたままの姿の青白く光輝く(カエデ)がいて──


 さっきまで、視覚だけだった私に身体(カラダ)が与えられる。

 私になる──


 導かれるように、そっと(カエデ)へと近づく。

 まるで、湖の水面を歩いているかのようだ……。


 私の裸と(カエデ)の裸が、水面に映る──


 闇の中の青白い輝き。

 ユラユラと揺らめくような視線を(カエデ)が私に、私が(カエデ)に向ける。


 結ばれるようにして、私と(カエデ)の指も手もあわさり……重なりあう。


 まるで、肉体を再び得たかのような柔らかな温かさ。

 体温のぬくもりや、心臓の鼓動さえも感じる……。

 (カエデ)の……。

 私の……。



川岸(かわぎし)……(カエデ)



(かのう)……夢葉(ユメハ)



 お互いが、お互いの『名前』を呼びあう。


 吸い寄せられるように──


 私の口唇(くちびる)(カエデ)口唇(くちびる)が、重なりあって……何か、私と(カエデ)が、ヘソの緒でもつながっているかのように、ナニカが、着実に私と(カエデ)身体(カラダ)の中に流れあう。

 

 裸の私と裸の(カエデ)……重なりあう。


 宇宙になる──


 どこまでも、溶けあって……それは、どこまでも、どこまでも──


 眠りから醒めないように深く混沌として、まるで、眠りに落ちてゆく(カエデ)の深い意識の泉へと、私の意識が身体(カラダ)ごと沈み込んでゆくようだった。


 

 私は、眠りについた──


 

 黒音(クロネ)の声も聴こえない……。

 (カエデ)の声……も。


 

 「たゆん──」と揺れる私の胸の中に、まるで私自身が落ちてゆくかのようだった。













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