魂(タマシイ)の契約……2。
「ん? んー……」
虚ろだった楓の意識が、目を覚まそうとウッスラ瞼を開きかけている。
(夢葉……!!)
黒音の声が、私の頭の中に鳴り響くとほぼ同時に。
黒音になった私は、楓の口唇を奪うようにして、無我夢中で黒音の自分の口唇を楓の口唇へと押し当てた。
(ブーン……)
何か感じたことの無いような振動音が、黒音になった私の口唇を伝って聴こえた。
楓に触れた時のような、いつもの振動音とは少し違った。
次の瞬間、まるで私が、楓の口の中に吸い込まれるような視点に切り替わり、後ろの方で黒音の声が聴こえた気がした。
(いってらっしゃい……。夢葉。)
黒音の声が空に響いたような気がして顔を上げると、なぜか私は、南国の砂浜のような場所で倒れていた。
太陽の輝く光の向こうに誰かがいる……。
身体についた砂を落としながら立ち上がると、なぜか私は、白のビキニ姿になっていた。
(夢葉……)
風にのって黒音の声が聴こえた気がして、後ろを振り返ると、黒音が黒いビキニ姿で砂浜に立っている。
「フ……」と、黒音が笑ったように見えた瞬間、砂時計の砂がサラサラと落ちるようにして、黒音が消えた。
太陽の光が降り注ぐ真夏の砂浜に風が吹いた。
なぜか私の視界から、風にのって飛んでゆく麦わら帽子が見えた。
追いかけなきゃって想う。
太陽の輝く光の向こうに誰かがいる……。
パサリ──
「あ、夢葉! こんなところにいたのかー! 探したよ?」
楓だ。
楓が、目の前に落ちた麦わら帽子を拾い上げながら言う。
「これ? 夢葉の麦わら帽子? 可愛いね」
「う、うん。あ、ありがと……」
私のじゃないけれど。
たぶん、この世界の中じゃそうなっているんだと想う。
これは、楓が今みている夢の中の世界なんだろうか……。
私が白いビキニ姿で、「たゆん」と楓に近寄ると、楓が目のやり場に困って、視線を空へと向けた。
「きょ、今日は、いつにも増して凄いね……」
「キョロキョロ」と、さらに挙動不審に目を泳がせる楓。
何を言うのか、いつにも増してデリカシーの無い楓。
ここは、楓の夢の中だからなのか、いつもより余計に楓の気持ちが、私に伝わる。
なんか、えっちな感じもするけど……良いじゃないか。私。楓が、そう想うなら。
「シたい……の? 楓?」
私より背の高い楓に、私が上目遣いで言うと──
黙ったまま「コクッ」と、うなずき、私の目を真剣に見つめる楓。
この砂浜の夏のような暑さもあってか、どうにかなってしまいそうに私は、錯覚する。
そんな……。
楓……。
みつめられると──
私は、無意識の内に目を閉じていた。
楓に口唇を差し出すようにして──
(夢葉……!!)
どこからか黒音の声が聴こえた瞬間、楓の口唇と私の口唇が重なり合って、「ハッ!」とする。
悪魔的儀式と魂の契約──
私は私の魂と想われるナニカを身体の奥から絞り出して、楓の口唇のさらに奥へと流し込む。
それは、私本来の私の魂……。
楓の夢の中にいる魂の楓と私が口吻シて、私は、さらに楓の魂の奥深くへと入り込み結びつき……私は、楓と、ひとつになった。
楓の魂の中で、私の魂が、「たゆん──」と、揺れた……。




