カードの裏側……。
「会長!! あれは、一体、どういうことですか!?」
早朝。
寺に帰って来て早々。
俺は、靴を脱ぎ捨て、ズカズカと靴下のまま、寺の本堂でオンラインゲームを楽しむ会長へと、駆け寄る。
「いや、すまんな。楓くん。ワシもアレがアレほどとは思わなんだ」
ん? 知っていたのか? 会長?
なら、なぜ、レベル『1』な俺と夢葉、黒音ちゃんの三人を派遣させたのだ?
「ワシらの寺周辺で最も大きな力を持っていたアレな案件じゃったが、世に言うところのアレな階級で言うと『E』ランク程度。ワシとて、お悩み相談くらいで済むと想うとったよ? なのに、あーんな姿になって、あーんなコトを仕掛けてくるとは? 想いもよらなんだよ?」
ドコから、俺たちのコトを視ていたんだ? 会長!
会長が、お気に入りのオンラインゲームの手を止めて、大袈裟に手を広げて呆れたような仕草で、俺に言う。
いや、呆れているのは、俺の方だ。
会長の霊力の底が知れない。
「もしも、アレにアノまま取り憑かれて、取り殺されでもしたら、どーしてくれるんですか!?」
俺は、これからの生命の危機を感じて、会長に怯まずに問い詰める。
「すまぬ。楓くん。しかし、ワシの作った『幽霊名刺』役に立ったじゃろ? アレしきのアレなモノならば、即座に一網打尽! 喜んで喰いよるよ?」
喰う? 一体、何のことだ?
「喰うって、どういうことですか? 会長?」
「いやなに。アノ『幽霊名刺』は、魂を喰う『美食家』なのじゃ。生みの親のワシより霊力が格下のアレなモノならば即座に喰いよるて!」
なんてこった。
喰ったのか? アレを。
エゲツナイ。
「しかし、会長。会長の霊力すら上回るアレなモノが相手なら、どうしたら良いんですか?」
「むー……」と、しばらく考えたようなフリをして、俺の問いかけに答えようとする会長。
「それはじゃな。その『幽霊名刺』に書かれとる住所……つまりは、この寺じゃな? この寺の住所を唱えながら『幽霊名刺』を天にかざせば『霊道』が開く。あの世とこの世を結ぶのが本来の『霊道』じゃが、強制的に術者とこの寺とを結ぶ。つまり、生命の危機に晒された時は『幽霊名刺』を手に持ち、この寺の住所を叫ぶのじゃ!」
「叫ぶのじゃ!」って。
おいおい。気楽だな?
社員の俺が、生命の危機に晒されたと言うのに。
実験も実証も保証もされていないと言うのに。
甚だ疑わしい。
「とは言え『術式』に才の無いモノが、いくら叫んでも駄目じゃ。そこでじゃ、黒音ちゃん?」
「はい?」
俺のすぐ後ろに並んで「たゆん」と、くっついていた黒音ちゃんが、唐突に会長に話を振られ、気の抜けた生返事をする。
「黒音ちゃんには『転移能力』があるじゃろ? 黒音ちゃんが、この寺の住所を叫べば、『幽霊名刺』が黒音ちゃんの霊力を喰って、全員が生還できる!!」
「えー? 霊力? 喰われるのヤだー」
未だに『幽霊名刺』を今ひとつ信じきれていない疑心暗鬼な俺だが、目を血走らせながらも訴えかけるようにして、ワガママを言う黒音ちゃんに無言の圧をかける俺。
「わ、分かってるよ? 楓くん。私が楓くんのこと見捨てるワケないじゃん? それに私の本体は、楓くんの身体の中に存在しているワケだしさ」
おー! そうだ!!
俺と黒音ちゃんは、一蓮托生の身。
自ずと、そうなるよね?
ならば、もう、何も想いとどまることは無い。
アレ? めっちゃ俺、『幽霊名刺』信じてる?
いや。
俺は、黒音ちゃんを信じているのだ。
魂の結びつきの強さというモノを、生まれて初めて肌で感じる。
「いいな……」
羨ましそうな目を横に向ける夢葉が、俺と黒音ちゃんを見ている。
夢葉の胸が、「たゆん……」と揺れる。




